目の健康寿命を保つには、まずは生活習慣を見直して、全身の健康状態を良好に保つことがカギ。近年、発症率が上がっている加齢黄斑変性の予防対策について、眼科医の小沢洋子先生に聞きました。
病気を引き起こす原因は、
「酸化ストレス」の蓄積と
「慢性炎症」です。目も同じ!
更年期以降、目の病気は
他人事ではありません
「目の病気として気になる加齢黄斑変性の発症率は、50歳以上の約1%。網膜の血管が閉塞する網膜静脈閉塞症は40歳以上の約2%です。多くの人が他人事と思っていますが、同窓会に行くと、意外と目の病気の人がいるものですよ」と小沢洋子先生。
なかでも加齢黄斑変性は、酸化ストレスと慢性炎症が引き金となり、喫煙歴が加担しているとされます。
「実際には、喫煙がどのようなメカニズムで影響するのか、まだ解明されていませんが、タバコが体内で酸化ストレスと慢性炎症を継続させると考えられています」
小沢先生によれば、「加齢黄斑変性を発症した人は氷山の一角。氷山の下にいる予備軍の人たちにも、リスク因子を予防してほしいです」。
目は血管が多い部位。日々、物を見て、脳に情報伝達する働きをしているため、とてもエネルギー代謝が高い場所です。「目は情報を受け取ると、そこで一度整理し、目で整理した情報が脳に伝わると、さらに脳で整理して『見えた』となります。このすばらしい能力を長もちさせたいですね」
酸化ストレスとは?
私たちは酸素を取り込み、栄養素を代謝してエネルギーを作っています。その際に産生されるのが活性酸素種。私たちの体には活性酸素種を処理する抗酸化力が備わっていますが、加齢とともに処理能力が低下し、〝酸化ストレス″として蓄積。酸化ストレスが蓄積されると体内の自浄能力が落ちて、体や目の老化が進んだり、病気を引き起こす原因となると考えられています。
慢性炎症とは?
ヒトの体内では炎症性の細胞が分泌するサイトカインなどが周囲の細胞を攻撃することがあります。比較的弱い攻撃でも長年継続すると慢性炎症となります。加齢に伴い免疫システムの働きがアンバランスになったりすると、そうした攻撃を防御しきれず、攻撃された細胞は弱ってしまいます。それが目の黄斑部で起こると、目の病気を発症することがあります。
目の病気を引き起こす
危険因子を知っておこう
ハイリスクなのは喫煙歴とメタボ。また、デジタル機器のブルーライトを浴び続けると、黄斑部がダメージを受ける可能性があります。アウトドアで紫外線を浴びる経験が多かった人も要注意。近年の研究では、加齢黄斑変性の発症に関与する遺伝子変異があることも判明。
脂肪が多い食事を好む人、メタボの人は〝酸化ストレス〞と〝慢性炎症〞を招きやすいとされます。メタボリックシンドロームの診断基準の数値を適正にする努力を。また、外見が痩せていても内臓脂肪が多い人は注意が必要。〝酸化ストレス〞と〝慢性炎症〞は万病のもとです。加齢黄斑変性に限らず、全身に影響を及ぼします
次回は「抗酸化作用が高いルテインなどで、目を守ろう」をご紹介します。
イラスト/かくたりかこ 取材・原文/大石久恵