「バセドウ病」は目が出てしまうことでも知られているけれど、甲状腺の病気で目に症状が起きるのはなぜ? そんな眼症に悩まされたライターSの治療と手術の軌跡を4回に分けてお届けします。また、専門医にバセドウ病眼症について詳しく伺いました。
①バセドウ病が発覚
更年期と思い込んでいた不調。調べてみるとその原因は!
事の始まりは2015年。やたら汗をかいたり、疲れやすくなっていたのを「きっと更年期のせい」と決めつけていた49歳の夏に、学生時代の仲間と温泉旅行へ。その帰りの新幹線の中でのこと、友人の一人に「すぐに息切れしたり異常に喉が渇くのは、更年期というよりバセドウ病の症状と同じ。目も昔より出ているように見える」と言われました。看護師をしている彼女曰く、「バセドウ病になっているかどうかは血液検査ですぐわかる」ので、すぐ病院に行くようにと念を押されたのです。
どんな病気なのか、病名ぐらいしか知識がなかった私は「バセドウ病」について調べることに。手にした本に書かれていた症状は、「首元の腫れ」以外は私に当てはまるものばかりで愕然(がくぜん)としました。
数日後に内科で血液検査を受けたところ、結果は甲状腺ホルモンが過剰。友人が心配していたとおり、甲状腺機能亢進(こうしん)症であるバセドウ病と診断されたのです。
その日から処方された抗甲状腺薬「メルカゾール」の服用を開始すると、1カ月もたたないうちに、名刺を渡すときなどに恥ずかしかった手の震え、少し歩くだけで汗…などの症状が徐々に治まってきました。
ただ、病気のせいなのか薬の副作用なのか、シャンプー時にはいつも両手に抜けた毛がごっそり。また、医師からの「甲状腺ホルモン過剰でつねに全速力で走っていたような状態が改善されてくるので、食事に気をつけないと太りやすくなる」という忠告通りに、食べすぎた分だけ、体重やボディサイズが比例して…。
そしてもうひとつ、明らかに目つきが変わってきたのが気がかりに。ホルモンの数値は落ち着いてきたのに、目はますます出てきた感じがするのです。
●教えてくれた先生
鹿嶋友敬さん Tomoyuki Kashima
眼形成専門医師・医学博士。オキュロフェイシャルクリニック 東京院長。今までに日米通算で5,000件以上の眼窩・眼瞼疾患の手術を担当。海外の学会で年4回ほど講演を行い、つねに最先端の知見を追求している
◆バセドウ病の症状は更年期症状と似ている!?
女性ホルモンの低下による更年期症状と、甲状腺ホルモン過剰から発症するバセドウ病。その原因は違えども、多汗・疲れやすい・イライラ・のぼせなど、似ている症状は多くあります。大きく違うのは、更年期が閉経前後のMyAge/OurAge世代に訪れるのに対して、バセドウ病は年齢に関係なく発症します。
「自己免疫の異常から生じるバセドウ病は、なぜ発症するのか解明されていません。バセドウ病眼症の患者さんは30〜50代の女性が多いものの、2歳の女児や89歳の女性を治療した例もあります」(鹿嶋先生)
◆バセドウ病で目が出るのはどうして?
「バセドウ病患者の約半数がバセドウ病眼症を発症します。甲状腺に関係した抗体が目のまわりの脂肪や筋肉にもあるため、バセドウ病に伴って目に炎症が生じてしまうのです。炎症が起こると眼窩(がんか/眼球とそのまわりの組織が収まっているスペース)内の脂肪が増えて眼球突出が起きたり、筋肉が腫れて目を見開いたような眼瞼(がんけん)後退などを引き起こします。また、眼窩は45度ほど左右に開いた構造になっているので、眼球突出はその角度で目が出てきます。すると瞳孔間の距離が離れ、目の印象はかなり変化してしまいます」(鹿嶋先生)
◆バセドウ病眼症の目に起こること
次回は「眼症が進行」編をお届けします。
イラスト/中野久美子 原文/佐藤素美