こんなにすごい! 腸内フローラ
話題の腸内フローラの最新知見を、前後編に分けてご紹介!
①腸内細菌が、体のいろいろなことがわかる個人データに!
健康状態を評価したり、病気の発症リスクなどを知る遺伝子検査。近い将来、それと同じように活用され、重要な個人データになる可能性があるのが、個人個人の腸内環境データです。
「腸内環境は一人一人異なり、すみついている腸内細菌の種類や量に差があります。それぞれの体質の違いにも、実は腸内環境がかかわっている可能性が出てきました。将来的には、遺伝子情報と同じように慎重に扱う必要のある個人データになるかもしれません」(福田さん)
健康な男女12人の腸内フローラのバランスを示す棒グラフ。
すべて日本人で居住地域も同じですが、体内にいる腸内細菌の組成はこんなにも異なります
②善玉菌、悪玉菌はもう古い⁉
注目すべきは自分に合った腸内フローラバランス
腸内環境改善のために「悪玉菌を減らして善玉菌を増やそう」と、善玉菌の摂取を意識してヨーグルトなどを食べている人も多いのでは。でも、腸内細菌を "善玉菌" と "悪玉菌" に大別する考え方が適切ではないケースもある、と福田さんはいいます。
「科学技術の進歩によって、個々の腸内細菌の特性がより詳しく見えてきました。その結果、善玉菌の中にも働きが悪いものがいたり、逆に悪玉菌や日和見菌といわれていた菌の中にも、体にいい働きをするものがいることがわかってきました。一概に善と悪の₂択では判別できなくなったのです。人により、すみついている腸内細菌は実にさまざま。大事なのは、その人に合った腸内フローラの "バランス" なのです」
③人気の糖質制限ダイエットは腸内環境の悪化を招く⁉
人気の糖質制限ダイエットは、腸内環境を悪化させるリスクがあると福田さんは指摘します。
「炭水化物は食物繊維と糖質に分けられます。食物繊維は大腸まで届き、腸内細菌のエサとして役立っています。炭水化物を制限すると、この腸内細菌のエサが不足して腸内細菌の増殖が妨げられ、腸内フローラのバランスがくずれてしまうため、便秘などの不調を招く可能性があるのです。また、プレボテラという腸内細菌は炭水化物を好む菌。過度な糖質制限をすると、このプレボテラ属が減少し、腸内フローラのバランスをくずしてしまうので、糖質制限をする際は注意が必要です」
米や野菜など、炭水化物を多くとる人に多い、プレボテラ属菌。
長寿研究などでも注目されている腸内細菌です。糖質制限をすることで、
この菌が減少してしまう可能性も
④抗生物質が腸内環境を大きく変えてしまうことも…
最近は、風邪を引いた程度でも抗生物質が処方されるため、耐性菌の問題が浮上しています。腸内環境の観点でも、抗生物質は慎重に使うべきだと福田さんはいいます。
「抗生物質を使用して病原菌を死滅させるという治療方法では、同時に腸内細菌も一緒に死んでしまうことに。結果として、腸内フローラのバランスがくずれ、思わぬ二次的な疾患につながってしまう可能性もあります。近年、アレルギー疾患が増えているのも、腸内フローラのバランスがくずれてしまうことに起因する可能性が指摘されています。もちろん、抗生物質は必要なときには使うべきですが、腸内フローラへの影響があることも考慮しておく必要があります」
次回は、出産やスキンシップが子どもの腸内フローラにも影響する!? など、「腸内フローラ最新知見(後編)」をご紹介します。
インフォグラフィック/ZOE イラスト/内藤しなこ 取材・原文/伊藤 学