今さら聞けない 大腸&腸内フローラ
そもそも、なぜ大腸の健康が大切なの? 知っておきたい腸と腸内フローラの基礎知識のQ&Aです。
1 小腸と大腸、それぞれの役割は?
口から入った食べ物は食道や胃を通り小腸へ。胃で消化されてドロドロになった食べ物が消化酵素と混ざり合って分解され、腸管にある吸収上皮細胞が栄養素を吸収。吸収された栄養素は血流に乗って全身に運ばれます。大腸では、小腸からきた未消化物の水分を吸収し、腸内フローラが未消化物の代謝を行いながら、残留物を排泄へと進めます。
約6~7mある小腸では胃で消化された食べ物をさらに分解し、栄養分を吸収。
食物が小腸を通過する時間は3~5時間と比較的短め
大腸(イラストのピンクの管部分)の長さは約1.5m。大腸にすみついた腸内細菌は、小腸で栄養吸収が終わった未消化物をエサにして短鎖脂肪酸などの代謝物質を産生します。滞在時間はおよそ10~40時間
2 「腸内フローラ」ってどこにいるの?
胃や小腸、大腸などは普段「内臓」と呼ばれますが、口から肛門までは1本の管になっていて、外の環境とつながっている部分でもあります。腸内フローラは、おもに大腸の内側、"腸管腔" に存在し、大腸にはさまざまな種類の腸内細菌が無数に存在しています。その様子がまるでお花畑にも見えることから、腸内フローラ(腸内細菌叢<ちょうないさいきんそう>)とも呼ばれるように。ちなみに、大腸の中は無酸素のため、酸素がなくても生きることができる菌しかすみつけません。
3 どんな菌がどれくらいいるの?
排出された便に含まれる腸内細菌を調べてみると、便1g当たり約1000億個もの腸内細菌が存在します。腸管に存在する腸内細菌は、一人当たりのトータルの量を重さで換算すると最大で1~1.5㎏もあり、その総数は約40兆個。人の体を構成する細胞の数(およそ37兆個)よりもはるかに多い数の腸内細菌が、腸の中にすんでいるのです。
4 腸内細菌はもともとどこから やってきたの?
もとは、腸内細菌という名前の細菌?…ではなく、腸内細菌とは腸にすむ"微生物"です。地球が誕生して46億年、生命の源となるタンパク質や核酸などの素材が現れたのが約40億年前。そして約36億年前に、水中で微生物が誕生しました。人類の誕生は約300万年前ですから、微生物は人間よりも早く地球に存在していたことになります。海や土の中にすみつき、生物に寄生して生きてきた微生物の、そのごく一部が腸内細菌として私たちの腸内に存在しているのです。
アノマロカリスなどの生物が誕生したのはおよそ5億4200~4億8830万年前のカンブリア紀。腸内細菌のルーツとなる微生物は、それよりはるか以前、およそ36億年前に生まれました
5 どうやって体にすみつくの?
母親の体内にいる胎児は無菌状態なので、まだ腸内細菌はいません。赤ちゃんにとって最初の細菌との出会いは、分娩時。子宮から産道を通って出るときに、膣が肛門に近いこともあり、母親の膣内や腸内にいる細菌に接触し、それらが最初に腸内にすみつきます。助産師などとの接触や、母親が胸に抱いたときなど、人の皮膚にいる常在菌も赤ちゃんの腸内フローラ形成に影響します。その後、外界の多くの細菌に触れながら、人の腸内フローラはほぼ₃歳までにある程度決まるといわれています。
次回は、腸内細菌の種類や脳腸相関についてなど、「大腸&腸内フローラの基礎知識(後編)」をご紹介します。
イラスト/内藤しなこ 取材・原文/伊藤 学