「亜鉛」には体の機能を整える多くの効果が!
国際オーソモレキュラー医学会会長の柳澤厚生先生によれば、免疫システムを適切に機能させるサポートとなる「注目の栄養素」が、ビタミンCとD、そして亜鉛だといいます。
「亜鉛は必須ミネラルのひとつで、ビタミンと同様に微量栄養素と呼ばれています。体内の酵素を活性化して代謝機能を促進したり、細胞間や細胞内部の情報伝達の役割も担っているため、亜鉛の果たす役割は実に多岐にわたります。
今回のテーマである免疫機能の正常化をはじめ、味覚、生殖機能、皮膚、髪、精神状態を健康に保つほか、病気予防だけでなく、アンチエイジングの効果も期待できることがわかっているんです」
亜鉛が不足すると味覚障害を起こすほか、皮膚の傷が治りにくくなったり肌荒れを起こしたり、食欲不振、精子の形成や卵子の発育にも影響を及ぼすなどさまざまな問題が。
しかし、厚生労働省が定める亜鉛の1日の推奨摂取量は成人男性10mg、成人女性8mgなのに対し、実際の摂取量は20歳以上では男女とも下回っています(国民健康・栄養調査報告 平成30年より)。ビタミンCやDと同様、私たち日本人は亜鉛も慢性的に不足しているのです。
「たっぷりのビタミンC+亜鉛」が
感染症の症状を早く軽減する!
亜鉛を多く含む食品は、牡蠣、ウナギ、しらす干し、牛肉、レバー、卵、納豆、海苔、アーモンド、カシューナッツ、キナコ、ごまなど。こうした食品を積極的に摂るほか、亜鉛を上手に摂取するポイントがあるといいます。
亜鉛は体内への吸収率が低いのですが、ビタミンCや動物性タンパク質といっしょに摂取することで吸収が促進されます。ビタミンCやクエン酸の豊富なレモンなどのフルーツや梅干しを一緒に食べるのがおすすめ。牡蠣にレモンを絞って食べるのは、亜鉛の吸収率を高めてくれる、とても理にかなった食べ方と言えます。
また、加工食品に多く含まれる食品添加物や化学調味料が亜鉛の吸収を妨げたり、アルコールを摂り過ぎると亜鉛の消費を増加させるといった点も注意したいもの。
さらに柳澤先生によれば、最新の知見ではビタミンCと亜鉛の組み合わせが免疫力アップにつながるという興味深い報告もあるのだとか!
「亜鉛は他の微量栄養素との協調作用が優れているので、単独で摂るよりも複数で取り入れると、相乗効果で免疫力や自然治癒力を効率よく高めてくれます。その参考になるのが、フランスのクリニックで行われた『高用量ビタミンC+亜鉛と風邪』に関する実験結果です。
フランスの2つのクリニックで、風邪で来院した患者のうち『ビタミンC 1g+亜鉛10mg』を5日間摂取した群と、プラセボ(偽薬)を与えた群とを比較しました。その結果、『たっぷりのビタミンC+亜鉛』群で、風邪に伴う症状の早期改善が有意に認められたのです(グラフ参照)。これは『高用量ビタミンC+亜鉛の風邪に対する効果』と題して論文発表されています」
「ビタミンC、D、亜鉛のほかに、セレンやマグネシウムなどのミネラルも必要であるという見解もありますが、まずはこの3つを摂取することで、新型コロナウイルスへの効果が多いに期待できると私は考えています」
ビタミンC、D、亜鉛…
免疫力アップのために摂るべき量は?
では、免疫力を強化するためには、この3種の栄養素をどれだけ摂ればいいのでしょうか?
成人、体重50~70kgの人の1日分の推奨量は下表のとおり。
「これらの栄養素は、もちろん食事から摂取するのが理想です。しかしながら、食事で摂取するとなると、1日の目安として、ビタミンCはレモン30個、パプリカ20個分。ビタミンD3は最初の1週間がサケの切り身4切れ。亜鉛は牡蠣のむき身2個。これを毎日食べるのは、ちょっと難しいですよね。
ですから、今の新型コロナウイルスに対応するためには、サプリメントで足りない分を摂取することをおすすめします。私がネットで調査し、3種類のサプリメントを国内大手2社の製品を組み合わせてみたところ、その費用は1日分で約94円程度(ビタミンC3gが約35円+ビタミンD2000IUが約20円+亜鉛約20mg39円)です」
ちなみに、柳澤先生によれば、現時点で国としては「これらの栄養素が新型コロナウイルスに有効であるとは確認されていない」という立場だとか。これからさらに多くの実験や知見を重ねていくことで、こうした栄養素の“実効性”が明らかになってくる段階なのでしょう。
でも、1日100円ほどの費用で、体本来の機能を整え、免疫力を強化できる可能性があるなら、試してみる価値は大いにありそうです!
柳澤厚生(やなぎさわあつお)さん
国際オーソモレキュラー医学会(カナダが本部)会長、点滴療法研究会会長。杏林大学保健学部救急救命学科教授、国際統合医療教育センター所長などを経て、2012年より現職。日本でいち早く高濃度ビタミンC点滴療法を導入した、点滴療法の第一人者。著書多数。
イラスト/しおたまこ 図版作成/ビーワークス 取材・文/山村浩子