「私が迷わず治療に進めたのは、医師との信頼関係を築けたから」と話す漫画家の内田春菊さん。今回は抗がん剤治療を終えた後に行なった肛門部の手術、そしてストーマを装着した生活について伺いました。
内田春菊さん
Shungicu Uchida
1959年生まれ。漫画家、小説家、女優などマルチに活躍。漫画『南くんの恋人』や小説『ファザーファッカー』など代表作多数。2018年には、大腸がんからストーマ造設にいたった経緯を『がんまんが~私たちは大病している~』(ぶんか社)にまとめた
ストーマには戸惑いもありましたが、
通常の生活を送るのに問題はなく
おしゃれも楽しんでいます。
抗がん剤治療を終え、16年4月に、がんがある肛門部の手術を行うことに。でも、患部切除とともにストーマをつけると説明を受けていたにもかかわらず、そうは言ってももしかしたらつけなくてもすむのでは…という思いが拭えなかったといいます。
「医師からは、大きく切除しないと再発する可能性が出てしまうこと、再発すると座れなくなったり、子宮や仙骨にまでがんが広がって大きく取ることになってしまうと言われました。でも、そうして徹底的に脅されたことで、肛門を失うことに覚悟ができました。また、子どもたちが、人工肛門になっても“母ちゃんが変わってしまうわけじゃない”と言ってくれたのも大きかった。これは大きな励みになりましたね」
がんのできた場所が肛門部だったため、患部とリンパ節を大きく筒状に切除し、同時にストーマを作る手術も行われました。
「術後、シャワーを浴びられるようになって、お尻に触れて驚きました。お尻の割れ目ごと縫い合わせたので、お尻の山がひとつになって。お尻がなくなってしまったの(笑)。これは落ち込みましたね。ストーマに関しても、術後しばらくは『そうか、そうなってしまったか』という思いが続きました」
術後からは、ストーマを装着した生活が始まります。悩んでいても、ともに生きる選択しかありません。
「でも、装着する前は、とてつもなく面倒で、今までの生活が送れなくなってしまうものと思っていたんですが、実際に使用を始めると、装具もとても進化しています。排泄のための袋からにおいも漏れませんし、とても衛生的。袋は1日1回取り替えるだけです。よく『そうは言っても排泄物が見えるのでしょ?』とか聞かれますが、見えないタイプの袋も出ています。『なんだ、生理用品と変わらない感覚だね』と子どもから言われて、確かにと思いますね」
入浴もできるし、タイトなドレスや好きな着物を着ても目立たず、イタリアまでの長時間のフライトも問題なかったそう。
「私が迷わず治療に進めたのは、医師と信頼関係を築けたことが大きかったと思っています。専門家にきちんと話を聞くことは、不安解消の大きな力になると思いますね」
今回のがんに関することを漫画に
大腸がんの診断からストーマを装着した生活まで、内田さんのがんにまつわるすべてを描いた『がんまんが~私たちは大病している~』『すとまんが~がんまんが人工肛門編~』『私たちは繁殖している 18』(ぶんか社)
ライブではタイトなドレスも!
内田さんが続けているシャンソンのライブ。がんを罹患する前と同じようにタイトでセクシーなドレスで登場。「ストーマをしていても目立ちません。お尻の山がひとつになったから、後ろ姿は自信がないかな(笑)」
次回からはがん治療の本当の姿についてご紹介します。
撮影/塩谷哲平(t.cube) ヘア&メイク/田代ゆかり(Happs) 取材・原文/伊藤まなび