あなたは"がん"にどんなイメージを持っていますか? かつては「不治の病」の代名詞でしたが、文字通り日進月歩する医療の力でがんを取り巻く状況は大きく変わってきました。2 人に1 人が罹患するといわれる時代、やみくもに恐れることなく、がん治療の本当の姿を知ることが大事です。
今回の質問に答えていただいた先生
勝俣範之さん
Noriyuki Katsumata
日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科部長。がん患者と向き合いながら正しいがん情報を配信。『医療否定本の嘘』(扶桑社)など著書も多数
清水 研さん
Ken Shimizu
国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科長。がん患者や家族の心に寄り添う。『もしも一年後、この世にいないとしたら。』(文響社)が話題に
本当?
自分だけは
がんになることはない
自分ががんになるとは具体的に想像できない人も多いでしょう。でも現実には毎年約86万人もが新たにがんに罹患し、国立がん研究センターの調査では「2人に1人はがんになる」という結果が出ています。一方で、2017年に内閣府が発表した「がん対策に関する世論調査」では、2人に1人ががんにかかると理解している人はわずか31.3%でした。
生涯でがんに罹患する確率
男性のほうががんの罹患率は高いものの、女性でも46%。約2人に1人は、一生のうちがんになる可能性があるということに。がんというと他人事、特別な病気と思いがちですが、実は身近な病気であることを理解しておくべきです
出典/がんに罹患する確率~累計罹患リスク(2013年データに基づく) 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
本当?
免疫力を上げれば、がんにかかりにくくなる
「今はちまたに免疫力関連の情報があふれていますが、免疫力を上げればがんに打ち勝てるといったエビデンスはありません。確かに、がんと免疫は関係性があることがわかっていますが、生活習慣を改善することでがんにならない免疫力の向上があるかどうかは、明らかになっていないのです」(勝俣範之先生)
本当?
食生活や生活習慣でがんは予防できる
「生活習慣の改善など、環境要因ががんの予防につながる可能性は30%程度とされています。最も起因するのは、タバコです。食生活などは実際にはそれほど大きな要因ではなく、〇〇を食べたら、ストレスを軽減したら、がんを予防できるといったエビデンスはありません。どんな人でも、どんな生活をしていても罹患する可能性はあります」(勝俣先生)
がんの原因
遺伝子要因 5〜10%
環境要因 30%
偶発的要因 60〜65%
がんの原因として、遺伝が5~10%。環境要因30%のうちでも具体的にわかっているのはタバコぐらいで、はっきりとはわかっていないのが現状です。圧倒的に多いのは偶発的な要因なのです
次回は「あなたは"がん"の本当の姿を知っていますか?(後編)」をご紹介します。
イラスト/緒方 環 取材・原文/伊藤まなび