がんの基礎知識はわかっても、メディアや口コミで飛び交う情報がいろいろだからこそ、やはりぬぐえない不安や迷いも…。多くの人が持つ疑問について専門医が答えます。
今回の質問に答えていただいた先生
勝俣範之さん
Noriyuki Katsumata
日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科部長。がん患者と向き合いながら正しいがん情報を配信。『医療否定本の嘘』(扶桑社)など著書も多数
清水 研さん
Ken Shimizu
国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科長。がん患者や家族の心に寄り添う。『もしも一年後、この世にいないとしたら。』(文響社)が話題に
検査はいつ、どのタイミングで
したらいいですか?
がんに有効な検診は決まっています。
「5大がん検診」を受けましょう。
「がん検診には対策型(集団型)と任意型(人間ドック型)があり、自治体で行われる対策型のがん検診は、検診により早期に発見でき、死亡率の減少が認められた5大がん(胃・肺・大腸・乳房・子宮頸部)が対象です。それ以外のがん検診では死亡率の減少は認められていません」(勝俣先生)。国が定めた対象年齢、受診間隔は以下を参考に。ちなみに、がん検診は自覚症状のない人が受診するもの。症状がある人は早急に医療機関で受診を。
やっておくべき5大がん検診
血液1滴や線虫で
早期のがんがわかるという検査は
受けるべき?
まだ実用化には時間がかかりそう。
また、早期発見にはデメリットも。
「実際にはまだ研究段階で、自治体で実施される5大がん検診のように、検診を受けることで死亡率がどれだけ低下するかなどのデータは出ていません。自由診療で検診を行うところもあるようですが、研究段階の検診を受けるのはデメリットが大きいと思います。患者さんは超早期であっても"がん"と言われれば治療したくなるのが心情ですが、治療が必ずしも必要ではない場合もあり、不必要な治療を受けることになりかねません。早期発見の仕組みだけが進むのは危険と考えています」(勝俣先生)
免疫療法は
効くのですか?
間違った免疫療法には
注意が必要です。
2018年にノーベル賞を受賞した「オプジーボ」は、免疫にブレーキがかかるのを防ぐ「免疫チェックポイント阻害剤」という新しいタイプのがん治療薬。2015年から肺がんや悪性黒色腫などで標準治療として使われています。ところが、オプジーボの話題とともに、怪しい"免疫療法"が広まっていると勝俣先生は指摘します。「オプジーボに入る"免疫"という言葉を利用して"免疫療法"と謳ったもので、自分の免疫細胞を培養して体内に戻し、免疫力を向上させてがんをたたくという触れ込みです。いかにもという感じですが、効果は証明されていません。しかも自由診療で高額です。免疫療法以外にも、健康保険が使えない自由診療のがん治療は科学的根拠のないものが多いので注意が必要です」(勝俣先生)
次回も引き続きがん専門医にがんの不安・疑問について伺います。
イラスト/緒方 環 取材・原文/伊藤まなび