やみくもに恐れず、慌てないために、がんの"気になるあれこれ"を解消! 今回もがん専門医にさまざまな不安や疑問を伺いました。
今回の質問に答えていただいた先生
勝俣範之さん
Noriyuki Katsumata
日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科部長。がん患者と向き合いながら正しいがん情報を配信。『医療否定本の嘘』(扶桑社)など著書も多数
清水 研さん
Ken Shimizu
国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科長。がん患者や家族の心に寄り添う。『もしも一年後、この世にいないとしたら。』(文響社)が話題に
家族や身近な人ががんにかかったら、
どう接したらいいですか?
寄り添うことは大事ですが、
過剰なサポートは不必要な場合も。
「がんの人に『頑張って』と言ってはいけないとよくいわれますが、それもケースバイケースです」と清水先生。「本人が頑張ろうとしているなら、頑張って、応援しているよ、と声をかけていいと思います。ただそれ以前に、その方の気持ちにじっくり耳を傾けることのほうが大切です」。過剰に構えるより、これまでと変わらず"今まで通りに" 接することが一番だといいます。また、気の回しすぎも禁物。頼まれていないのに、病院の選択や治療をアドバイスするなどの行為は、患者にとって治療の妨げや心理的負担になることもあるので控えたいもの。
がんと告知されたらパニックで、
冷静に治療に向かえそうもありません。
パニックになるのは当たり前。
不安を書き出して頭を整理しましょう。
「誰もが最初は戸惑いますが、パニックで治療が進まないのも困りますね。情報を得ようとネットで検索をすることで、逆にネガティブなループに陥ることもあります。まずは、何が不安なのか、何を知りたいのかを書き出して"見える化"するといいでしょう。書き出すことで頭が整理され、ストレスへの対処(心理学でコーピングといいます)も可能となり、次への選択がしやすくなります」(清水先生)
親ががんだと、
やはりがんになりますか?
家族性の遺伝かどうかは
一概にはいえません。
「確かに遺伝性の腫瘍はあります。2013年に両乳房、次いで卵巣を予防的切除したアンジェリーナ・ジョリーさんは『遺伝性乳がん卵巣がん症候群』でした。親から子へ1/2の確率で受け継がれ、乳がん・卵巣がん全体の5~10%といわれるがんです。しかし、親族ががん=必ずがんになる遺伝子があるとはいいきれず、正確なところは遺伝子検査を受けないとわかりません。心配な方は、担当医に遺伝子検査を希望していると伝え、遺伝相談外来や遺伝子カウンセリングを紹介してもらいましょう。ただし、検査を受けるメリットとデメリットを併せて相談することが必要です」(勝俣先生)
次回はがん専門医にがんの治療内容や費用などについて伺います。
イラスト/緒方 環 取材・原文/伊藤まなび