大腸がんをはじめ、腸の病気が急増中。
前回に続き、大腸劣化が進むことが原因と思われる代表的な気になる「腸の病気」をご紹介します。
思い当たる症状はありませんか?
前回ご紹介した、過敏性腸症候群や潰瘍性大腸炎などのほかに、大腸の腸壁にへこみができる”大腸憩室症”や、便意があるのに排便がしにくくなる”直腸腟壁弛緩症”などの病気も。いずれも慢性的な便秘などで腸壁が弱っていることがおもな原因だといいます。たかが便秘、と放っておくのはやっぱり危険!!
「また、腸壁にアレルギー性の炎症を起こす”好酸球性消化管疾患”といった、難病指定されている疾患も増えている傾向が。思い当たる症状がある場合は一度、消化器内科を受診されることをおすすめします」(正岡先生)
病気-4
大腸憩室症
大腸壁に飛び出るようにできる大腸ポリープとは反対に、袋状のへこみ(憩室・けいし つ)ができるのが「大腸憩室症」。開口部は5mmから大きなものでは10mmを超えることもあり、通常は無症状なので、大腸内視鏡検査などで偶然に発見されることがほとんどです。しかし、憩室部から出血する「大腸憩室出血」や、憩室内に細菌が感染する「大腸憩室炎」などの合併症が起こると、血便、腹痛、発熱、嘔吐などの症状が。先天的な場合もありますが、原因の多くは便秘などで腸管内の圧が高まること。弱った腸壁がその圧に耐えられず、憩室が形成されます。
以前は大腸の右側にできることが多かったのですが、最近は食生活の欧米化の影響か、欧米同様に左側にできることが増えています。1カ所にとどまらず、あちこちにたくさんできることも。合併症を伴わない場合は、便秘の解消を心がけること。合併症が起きた場合には、内視鏡や血管造影を用いた止血術、抗炎症薬などの治療が行われます。
大腸憩室症は腸壁に外へ向かってへこみができる症状。
ポ リープなどと逆の状態です
病気-5
直腸膣壁弛緩症
便意はあるのに、なかなか排便できない…そんなつらい症状になるのが「直腸腟壁弛緩症」。別名、レクトシールといい、直腸ヘルニアの一種です。直腸と腟の間の壁が弱くなることで、直腸壁が腟側に突き出てしまい、排便しにくくなる病気です。ひどくなると、腟に指を入れてふくらみを指で押さないと、うまく排便できないことも。出産をした女性や、40代~50代の女性に多く、患者の多くが便秘に悩んでいる人です。
検査方法は、指診や排便造影検査(バリウムを直腸に注入し、便を排泄する能力を調べる)。治療は、食事療法や便を軟らかくす る便秘薬などで便秘を解消して、まずは経過観察をします。それでも症状が改善されない場合は、直腸と腟壁の形を変える手術を行うことになります。
病気-6
好酸球性消化管疾患
食物などによるアレルギー反応で、好酸球という白血球の一種が消化管で炎症を起こし、その部分の正常な機能が阻害される病気です。国内での患者は、成人で数百人、小児で100人※ほどと推測されています。気管支喘息などアレルギー疾患を持っている人に多い傾向で、食物や花粉、カビなどのアレルゲンに反応すると考えられていますが、まだ完全には解明されていません。
おもな症状は腹痛、嘔吐、下痢、栄養障害など。原因となるアレルゲンがわかれば、それを除くことで治療します。しかし、原因の食材を食べてもすぐには症状が現れないので、完全に取り除くのは難しいのが現状です。その場合はステロイド剤や免疫抑制剤などの薬物療法が中心になります。
※難病情報センターホームページ(2020年2月現在)より
好酸球性消化管疾患の原因となるアレルゲンになる可能性のある食材は、牛乳などの乳製品や卵、小麦やそば、ピーナッツ、甲殻類など。多くは、一般的な食物アレルギーを起こしやすい食材です。
イラスト/ミック・イタヤ 取材・文/山村浩子