感染症の原因である細菌とウイルスはそもそもの性質が違います。その性質の違いや人体の特徴を応用したワクチンについて、呼吸器外科医の奥仲哲弥先生にお伺いしました。
奥仲哲弥さん
Tetsuya Okunaka
呼吸器外科医。医学博士。山王病院副院長・呼吸器センター長。国際医療福祉大学医学部呼吸器外科教授。専門は肺がん治療で、呼吸法や呼吸筋ストレッチなどの普及にも尽力。著書に『医者が教える 肺年齢が若返る呼吸術』(学研プラス)
感染症の原因である細菌とウイルスは性質が違う
そもそも、細菌とウイルスはどう違うのでしょうか? ともに目には見えない微生物ですが、大きさも性質も異なります。細菌はひとつの細胞からなる単細胞生物で、栄養源さえあれば、自ら増殖することができます。
一方、ウイルスは細菌の約50分の1とさらに小さく、細胞がなく、人などのほかの細胞に寄生しないと生きられません。
「細胞を持たないウイルスには、抗生剤は効きません。ウイルスに効く薬があるのは、現在のところインフルエンザ、エイズ、B型・C型肝炎など、ごく一部。
風邪やノロウイルスに効く治療薬はまだなく、すべて対症療法(症状緩和)が中心です。新型コロナウイルスの治療薬の開発にも、まだまだ時間が必要でしょう」
インフルエンザや肺炎予防にはワクチンを活用!
一度体内に入ってきた病原体の特徴を覚えて、再度侵入したらそれに的確に応戦する。こうした免疫の仕組みを獲得免疫といいます。
「これを応用したのがワクチンで、現在、肺炎予防にエビデンスがあるのが肺炎球菌ワクチンです。特に肺炎球菌による肺炎は重症化しやすいので、高齢者の定期接種が推奨されています」
この冬は、熱や咳が出た場合でも、インフルエンザか新型コロナウイルスの感染によるものか判別できず、医療現場で混乱する可能性があります。
「ですから特にこの冬は、インフルエンザの予防接種も含め、ワクチンで予防できるものは万全にしておくべきです。効くまでに2週間前後かかるので、早めの接種をおすすめします」
イラスト/Marcus Oakley(CWC TOKYO) 取材・原文/山村浩子