もしかして認知症かも…。不安を抱えて過ごすよりも、早い段階で専門医に診断してもらう方が良いと、医師で群馬大学名誉教授の山口晴保先生。もしものときに慌てないために、病院で行われている認知症診断の4つのステップを紹介します。
教えてくれた人
山口晴保さん
Haruyasu Yamaguchi
医師、群馬大学名誉教授、認知症介護研究・研修東京センター長、日本認知症学会名誉会員。脳βアミロイド沈着機序をテーマに30年にわたり病理研究を続け、その後、臨床研究に転向。より実践的な認知症医療・ケアに取り組んでいる。著書多数
4ステップで診断します
「認知症と診断をするのは、特に若年性の場合は非常に難しいことです。例えばひどいもの忘れも、抗コリン剤(頻尿、季節性アレルギー、うつなどで処方)の服用で現れることもありますし、うつ症状などで運動量が低下したり、人とのコミュニケーションが減ったことが原因の場合もあります」(山口晴保先生)。
検査の流れは医療機関により異なりますが、問診や神経心理検査などで症状の程度を把握し、血液検査や頭部画像検査で内臓や脳の状態を調べ、総合的に判断します。
ステップ
生活上でどんな変化があったか、以前はできたのにできなくなったことは、それで困ったことは、などを問診で確認していきます。受診する際は、自覚または観察される症状や医師に聞きたいことを書き出していくといいでしょう。
ステップ
認知症の疑いを見分けるための、目安として行われます。日本で多いのが「長谷川式簡易知能評価スケール」と「ミニメンタルステート検査」。ほかに、より専門的なクリニックでは「リバーミード行動記憶検査」を行うところもあります。
日本で開発された検査方法で、最も活用されている検査です。年齢や今日の年月日、今いる場所など、口頭での9の質問(問題)に答えていきます。30点満点のうち、20点以下の場合は認知機能が低下している疑いがあると判断します
アメリカで開発されたもので、長谷川式と共通の質問もありますが、計算力や図形の描写など、11の質問に答えます。30点満点中、23点以下で認知症の疑い、27点以下だと軽度認知障害の疑いがあるとされます
全体では9項目の質問に答えますが、全部実施すると大変な検査になるので、一般的には物語の記憶検査のみを実施します。専門医で導入しているところが多く、記憶障害の程度を診断します。検査時間は30分ほどかかります
ステップ
内臓の病気でも、認知症のような症状が出る場合があります。ほかの病気が隠れていないか、鑑別診断の意味も含めて、血液検査、心電図検査、感染症検査、X線撮影などの身体検査を行い、服用薬剤をチェックします。
ステップ
それぞれの機器で得られた脳の画像をもとに、脳の萎縮度合いや脳血流の低下部位などを調べていきます。脳の状態を診て、治療可能なものであるかどうかや、認知症の原因になっている病気の診断をしていきます。
強力な磁場と電波を利用して、体内の臓器や血管の撮影をする検査。被ばくの心配がなく、脳の萎縮度など、CT検査より詳しい状態がわかります。慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症など、治療可能な認知症の発見にも役立ちます
X線を照射して、通過したX線量の差をコンピューターで処理することで、脳の内部を画像化します。脳全体や記憶を司る海馬の萎縮状態、脳梗塞や脳出血などの状態がわかります。慢性硬膜下血腫など、治療可能な認知症の発見にも
ごく微量の放射性物質を含む薬剤を投与して、脳の病変を画像化します。脳にどんな物質が蓄積しているかがわかり、認知症の原因疾患が明らかになります。しかし、保険適用ではありません
ごく微量の放射性物質を体内に投与して、脳の状態を画像化する検査。脳内の血流量が少なくなっている場所を特定して、認知症の原因になっている疾患を推察します。認知症各タイプの鑑別診断に使われます
取材・原文/山村浩子