認知症とともによりよく生きる未来を目指す「認知症未来共創ハブ」の、認知症になっても笑顔で共に過ごせる環境づくりへの取り組みなどをご紹介します。
お話を伺ったのは
堀田聰子さん
Satoko Hotta
「認知症未来共創ハブ」代表。東京大学社会科学研究所特任准教授、ユトレヒト大学訪問教授などを経て、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授、医学部・ウェルビーイングリサーチセンター兼担。日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2015リーダー部門入賞
日々の笑顔につながる環境づくりを目指す
「自分や身のまわりの人が認知症になったことで、うずくまっている人たちがおられます。でも、認知症になっても笑顔で過ごす人たちも増えてきて、“共生=共に生きること”への希望になっています」と語るのは、認知症未来共創ハブ代表の堀田聰子さん。
将来は誰でもなる可能性があることを理解し、社会全体で認知症に対する考えを改め、受け入れる仕組みを構築する時が来ているのです。
そこで「安心して認知症になれる地域・社会」をみんなの力で実現するために、このハブを立ち上げたという堀田聰子さん。
「認知症の症状が進むと、以前は普通にできたことが難しくなることがあります。でも、周囲の助けやテクノロジーの力も使って、時に失敗しながらも楽しみを続けている人もいます。一方で、本人がまだやれることを家族や介護者が奪ってしまうこともあります」
失敗を叱ったり、一人で外出させない、財布を持たせない、料理をさせない…など、できることを周囲が取り上げてしまうのはよくあることです。
「家族や介護者はよかれと思って行なっていることですが、これが重なると、いろいろなことをあきらめて口を閉ざし、内にこもってしまいます。
例えば、一人の外出は心配かもしれませんが、“信頼する”ことも大切です。認知症になっても、できるだけ自分のことは自分で行い、家族や仲間とともに、地域や職場で役割を持って生活できる環境が重要です」
「認知症未来共創ハブ」では、当事者の思いや体験と知恵を中心に、医療や介護福祉の関係者、自治体、企業、デザイナーや研究者などが協働して、困りごとの解決と暮らしを豊かにする活動に取り組んでいます。HPではコロナ禍でも孤立しないための情報の紹介も。
そのほか、認知症の人の社会参加や就労をすすめる基盤の構築や、当事者と家族や支援者が出会い、支え合う仕組みを各地で試行するなど、「認知症とともによりよく生きる未来」をつくることを目指して展開しています。
サイトでは認知症の人が体験する世界を「認知症世界の歩き方」と名づけて、スケッチと旅行記の形で楽しくわかりやすく紹介する連載や、認知症のある人、一人一人の声を蓄積した「当事者ナレッジライブラリー」も。「認知症未来共創ハブ」のホームページはコチラから。
取材・原文/山村浩子