今まで正常血圧だった人も、更年期に入ると徐々にリスクが高まるという高血圧。血圧が高いと、私たちの体にどんな影響を及ぼすのでしょう? まずは、その“正体”と向き合うことから!
お話を伺ったのは
市原淳弘さん
Atsuhiro Ichihara
東京女子医科大学 高血圧・内分泌内科教授。日本内分泌学会内分泌代謝科専門医。日本高血圧学会理事。高血圧治療の第一人者として、日々患者に向き合う。著書に『食べ方、座り方、眠り方で下がる! 血圧リセット術』(世界文化社)など
「サイレントキラー」から自分の身を守るのは“今”!
高血圧は別名“サイレントキラー(静かな殺人者)”。「高血圧の具体的症状が現れたときは、すでに体内で5~10年ほど前から異変が始まっていたことが多いのです。気づかぬまま病気が進行していることから、こう呼ばれるようになりました」(市原淳弘先生)
日本の脳心血管病による死亡者は年間約10万人、その最大の原因が高血圧です。高血圧が怖いのは、脳や心臓以外にも、さまざまな病気や不調を引き起こすこと。
高血圧の状態を長年放置していると、強い圧力がかかり続けるために血管内皮が傷ついて硬くなります。加えて、加齢や運動不足、肥満、ストレスなどによっても、さらに血管の壁が厚く硬くなります。
こうして動脈硬化を起こした血管には余分な脂肪物質がたまって血液が停滞しやすく、固まった「血栓」は脳卒中や心筋梗塞などを招くことに…。体内で最初にこうした変化が起きるのは、なんと20代~30代! 高血圧を起因とする症状は時間をかけて進行し、20~30年後に現れるのです。
日本女性は“世界一長寿”といわれていますが、市原淳弘先生はこれにも警鐘を鳴らします。
「この平均寿命には、長年寝たきりの方も含まれているので、喜んでばかりもいられません。病気を防ぎ、少しでも健康寿命を延ばすには、自分が望む未来から10年、20年さかのぼった今の40代、50代からケアを始めることがとても大切なのです」
この言葉で覚えておこう! 高血圧のリスク
「血圧? 高いけど、今のところ大丈夫」。これが最大のNGワード!「なんだかだるい…」「疲れが取れない」と感じたら、それは血圧が高い証しかもしれません。
高血圧は、知らず知らずのうちに全身の血管にダメージを与え、その影響はからだのあらゆるところに及びます。それを知る指標となるのが「このしめじどくきのこ」という言葉。
自覚症状がほとんどない高血圧が、将来、体のどの部位に影響を及ぼし、将来どんな病気のリスクとなるかを表しています。医師から「高血圧」と診断されたら、この言葉を思い出して!
- こ……骨
- の……脳
- し……心臓
- め……目
- じ……腎臓
- ど……動脈硬化
- く……くも膜下出血
- き……急性心筋梗塞
- の……脳梗塞
- こ……骨粗しょう症
[参考文献]
『食べ方、座り方、眠り方で下がる! 血圧リセット術』(市原淳弘著/世界文化社)、『「治せる高血圧」を見逃すな!』(市原淳弘著/学研プラス)、『高血圧 最高の治し方大全』(市原淳弘共著/文響社)
イラスト/寺田久美 取材・原文/安齋喜美子