目、腎臓、骨と高血圧はさまざまな器官に影響を及ぼします。正常な血圧と比べ、どれくらいリスクがあるのか詳しく解説します。
お話を伺ったのは
市原淳弘さん
Atsuhiro Ichihara
東京女子医科大学 高血圧・内分泌内科教授。日本内分泌学会内分泌代謝科専門医。日本高血圧学会理事。高血圧治療の第一人者として、日々患者に向き合う。著書に『食べ方、座り方、眠り方で下がる! 血圧リセット術』(世界文化社)など
緑内障のリスク
10.5倍!
高血圧は目にも大きな影響を及ぼします。血管が硬くなるのに伴い、視力を司る網膜の毛細血管の血流が滞りがちに。これが進むと、視野が欠け、放置すると失明の危険もある緑内障のリスクが高まります。
腎不全のリスク
1.9倍!
腎臓には細い血管でできた「糸球体」が200万個ほどあり、ここで血液をろ過し、尿として排出します。動脈硬化で毛細血管の血流が悪くなると、腎臓の働きが低下。高血圧の人は腎不全になるリスクが正常血圧の人の1.9倍です。
375.8万円
医療費がかさむ
厚生労働省発表の「平成21年度国民医療費の概況」によると、高血圧や高血圧に起因する病気の治療費は、45~64歳でひとりあたり年間13.963円、65歳以上では47.394円。また、40歳男性の生涯医療費を比べると、正常血圧の人では1334.3万円なのに対して、高血圧の人は1710.1万円。その差は375.8万円に!
身長が
2㎝以上縮む
骨は血管から栄養を吸収するため、血管が硬くなると、栄養が行き渡らず骨がもろくなります。身長が去年より2㎝縮んだ、20代と比べて4㎝以上低くなったという人は要注意。4㎝以上低くなったら骨折リスクは20倍に!
骨粗しょう症のリスク
1.16倍!
高血圧になると血管からの栄養吸収力が落ちるために尿で排出されるカルシウムが増加。すると、骨からカルシウムが流れ出て骨粗しょう症になりやすく、3年以上高血圧が続くと、そのリスクは約1.16倍にも。
[参考文献]
『食べ方、座り方、眠り方で下がる! 血圧リセット術』(市原淳弘著/世界文化社)、『「治せる高血圧」を見逃すな!』(市原淳弘著/学研プラス)、『高血圧 最高の治し方大全』(市原淳弘共著/文響社)
イラスト/寺田久美 取材・原文/安齋喜美子