早期発見・早期治療を目的として職場や自治体が実施するがん検診。そのメリットやデメリットを消化器専門医の大竹真一郎先生にお伺いしました。
お話を伺ったのは
大竹真一郎さん
Shinichiro Otake
おおたけ消化器内科クリニック院長、消化器専門医。高校中退から医師を目指すという異例の経歴を持つ。歯に衣着せぬ発言で、テレビやメディアでも活躍。著書多数
市区町村の「5大がん検診」は受けて損はない
日本人の死亡原因の第1位はがん。しかし早い段階で治療すれば、完治する可能性が高い病気でもあります。職場や自治体が実施するがん検診は、その早期発見・早期治療を目的に、がんの疑いのある人をふるい分ける検査です。一般的に行われているのが、下に記した5つ。
胃がん検診
- ●問診、バリウムによる胃部X線検査や内視鏡(胃カメラ、ファイバースコープ)による検査など。
- ●対象者は50歳以上。
※当分の間、胃部X線検査は40歳以上に対し実施可 - ●受診間隔は2年に1回。
※当分の間、胃部X線検査は年1回実施可
大腸がん検診
- ●問診、便潜血反応検査(検便)など。
- ●対象者は40歳以上。
- ●受診間隔は年1回。
肺がん検診
- ●問診、胸部X線検査や喀痰(かくたん)検査など。
- ●対象者は40歳以上(喀痰検査は50歳以上、喫煙者)
- ●受診間隔は年1回。
乳がん検診
- ●問診、マンモグラフィ検査など
※視診、触診は推奨しない - ●対象者は40歳以上。
- ●受診間隔は2年に1回。
子宮(頸)がん検診
- ●問診、視診、子宮頸部の細胞診、内診など。
- ●対象者は20歳以上。
- ●受診間隔は2年に1回。
「これらは、がん検診として数少ないエビデンス(科学的根拠)のあるもの。逆に言うと、これ以外の検診の有用性は不明です。どんな検査も同じですが、受けることによるメリットと同時にデメリット(次項目参照)もあります。市区町村のがん検診はこれらを考慮して、受ける年齢や頻度の目安も設けられています。費用も無料、もしくはごく安く抑えられているので、受けて損はないと思います」(大竹真一郎先生)
がんの早期発見メリットとデメリット
検診には必ずメリットとデメリットがあります。メリットは病気の「早期発見・早期治療」ができることですが、一方で検査による「体への負担」というデメリットも。
「例えば腹部や胸部レントゲンやマンモグラフィなどは、少なからずX線による被曝をします。また、検査を受けても100%発見できるわけではありません。逆に疑いが発生したことで、無用な追加検査や治療を受けることになるかもしれません。それでも今受ける価値があるかどうか、自分で考えて決めることが大切です」
メリット
- ●早期発見・早期治療ができる
- ●安心が得られる
デメリット
- ●体への負担
- ●不要な追加検査や治療を受けることも
- ●100%見つかるわけではない
腫瘍マーカーで発見できるのは前立腺がんだけ
「がんができると、がん細胞が作り出す特有の体内物質が出現します。これを腫瘍マーカーといい、血液や尿で調べられるので、がん患者の経過観察に利用されています」
肺がんや肝臓がんなどの早期発見ができると検診に応用するケースもありますが、「残念ながら、今までの研究によると、前立腺がん以外の腫瘍マーカー測定によるメリットはありません」。
イラスト/小迎裕美子 取材・原文/山村浩子