認知症は今や誰でもなる可能性のある病気です。しかし、最近の研究で、そのリスクの傾向が徐々に解明されてきました。認知症の発症を少しでも遅らせるために…今から私たちにもできることとは?
要点を整理して簡潔に話す習慣をつけると脳が活性化します
小林照子さん(86歳・美容研究家)
シャンと伸びた美しい姿勢と、しっかりした足取り。何より、今も現役で仕事をしている、その滑舌のいい聡明な話しぶりに驚かされます。とても御年86歳だとは信じられません。
「実は私もね、40代~50代くらいのときには、話している内容を急に忘れて言いよどんだり、固有名詞が出てこなくて、『あれ、あれ…』なんて言っていたことがあるんですよ」
まさに、40歳を過ぎた頃から、多くなるのが“度忘れ”!
「そんなときは、まわりが助け船を出してはだめなんです。昔、あるご高齢の元政治家にインタビューする機会があったのですが、その方が『あれ、あれ…』と言うと、奥さまが気を利かせてなんでもして差し上げちゃう。それではボケる一方ですよね。人に頼らず、自分で思い出す努力が必要です。そのときはすぐに思い出せなくても、ひょんなタイミングで思い出すもの。それがとても大事なんです」
なんと、小林照子さんは30年前のほうが話し方がヘタだったというのです。
「その後、映画を紹介する仕事に携わったのですが、その経験が“話を簡潔にまとめる”訓練になりました」
2~3時間ある映画の内容を、1~3分にまとめてわかりやすく説明する…その訓練が実生活に役立ったのです。
「例えば、お友だちと話をするときに、ただ思いついたままダラダラと話すのではなく、伝えたい情報の要点を整理して、簡潔に相手に伝えます。これをつねに考えて、頭で整理して話す癖をつけるのです。私はいつもキャッチーなフレーズを取り入れて話すように心がけています。
脳の活性化には“話すこと”がいちばんいいですね。頭で考えるだけでなく、声に出すと、それを自分の耳でもう一度聞くことになるので、記憶として定着しやすいのです。
特に将来やりたい“夢”は言葉にすることが大切ね。私は40代から言葉にしたことはすべて実現しています。人に聞かせた限りは裏切れないという心理も働きますし、まわりの人もサポートしてくれるのよ。ぜひ実践してみて!」
今いちばん熱心に取り組んでいるのが「アマテラス アカデミア」という私塾。25〜39歳の女性リーダーを育成する講義を行っています
小林照子さん
Teruko Kobayashi
1935年生まれ。美容研究家。大手化粧品会社に33年勤務後、56歳で「美・ファイン研究所」を設立。その後も<フロムハンド>メイクアップアカデミー、青山ビューティ学院高等部を開校。近年は女性リーダー育成のための「アマテラス アカデミア」を開講
撮影/玉置順子(t.cube) ヘア&メイク/松村映里(フロムハンド) 構成・原文/山村浩子