食べたものは“消化・吸収・代謝”という過程を経て、最終的に不要物が便となって排出されます。その仕組みにかかわる臓器の働きについてご紹介します。
食べ物の行方…
消化チームの働きとは?
消化器は抜群なチームワークで働く
「食べたものは、そのままでは体に活用することはできません。いくつかの臓器のみごとな連携プレーにより、吸収しやすく分解され(=消化)、体に取り込まれ(=吸収)、活用できる物質に変えて(=代謝)います」(澤田幸男先生)
まず食べたものは口や胃で粥状に「消化」され、さらに十二指腸で消化酵素の働きなどで吸収しやすく分解されます。おもに栄養を「吸収」するのは小腸。その残りの栄養と水分を吸収するのが大腸です。
「代謝」で大きな役割を果たすのが肝臓で、エネルギーの生成、タンパク質の分解・生成、解毒の働きも担います。
各臓器の働き
複数の消化器の巧みな働きで、食べ物を吸収しやすい栄養素へと変えていきます。
●口腔
口に入ってきた食べ物は、歯で細かく嚙み砕かれます。それに伴い、分泌された唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素により、より小さな物質である多糖類などに分解され、飲み込まれます。
●胃
食道を通って胃に到達した食べ物は、まず胃壁から分泌される強力な胃酸で殺菌されます。そして胃の筋肉の蠕動(ぜんどう)運動により攪拌(かくはん)され、ドロドロの粥状に。小腸で栄養を吸収しやすくする準備をします。
●肝臓
脂肪分の消化に必要な胆汁の合成をして、十二指腸に送ります。また、栄養素をたくわえてブドウ糖はグリコーゲンへなど、形を変化させ必要なところに送り出し、有害物質の解毒の役割も果たします。
●膵臓(すいぞう)
食べ物が十二指腸に入ると、膵液を分泌。胃液で酸性になっている食べ物を中和し、含まれる消化酵素により、糖質、タンパク質、脂肪を分解。また、インスリンなどのホルモンを分泌する機能も。
●十二指腸
胃で粥状になった食べ物は、強い酸性のままです。ここで、膵臓で作られる膵液で中和され、酵素の働きでより小さな物質に分解。また肝臓で作られる胆汁により、脂肪分が分解されます。
●小腸
十二指腸から届いた食べ物は、さらに多くの酵素によって小さな分子に分解され、栄養のほとんどはここで吸収されます。また外部からの細菌やウイルスなどから体を守る免疫システムもあります。
●大腸
小腸で吸収されなかった残りの栄養素と水分が吸収されます。そのとき消化を手伝うのは腸内細菌。そして、不要なものや害になるもの、細菌の死骸などを、便という形にしていきます。
●肛門
不要なものを便として排出します。肛門には、自律神経の働きで自然に締まる筋と、自分の意思で締めることができる筋の、2種類の筋肉があり、この連携作業により、スムーズな排便が可能に。
お話を伺ったのは
澤田幸男さん
Yukio Sawada
1957年生まれ。「澤田肝臓・消化器内科クリニック」院長。医学博士。専門は消化器内科。アダムスキー式腸活法を提唱する『腸がすべて』(東洋経済新報社)の監修を担当。神矢丈児氏との共著『腸が寿命を決める』(集英社新書)も
イラスト/内藤しなこ 構成・原文/山村浩子