小さい文字や細かい作業に最適なメガネ型ルーペ(拡大鏡)は、老眼鏡の代わりになる? 老眼用コンタクトレンズってあるの? といった素朴な疑問に、医学博士の平松類先生がお答えします。
Q ルーペで老眼鏡の代用はできる?
A ルーペはぼやけたまま拡大するだけです
「老眼鏡は近くを見るためのピントを合わせる、目の調整機能を補助するもの。一方、メガネ型ルーペ(拡大鏡)は単に拡大するだけです。手芸や精密品などを取り扱う際には役立ちますが、用途に合わせた倍率を選ぶことが重要です。
また、目が疲れやすいという難点があります。短時間の使用なら問題ありませんが、基本的には老眼鏡を使う、もしくは併用することをおすすめします」(平松類先生)
Q 老眼鏡をかけると度数が進むって本当?
A 度数が進むのは老眼鏡のせいではありません
「例えば、老眼度数1の軽い頃に老眼鏡をかけはじめたら、その後、2、3と変えなければならないので、進んだことが実感しやすく目立ちます。
一方で老眼鏡をかけずに我慢していて、いよいよ見えなくなって3で老眼鏡デビューすれば、それ以上進みません」(平松類先生)。
つまり、度数が進みきってからかければ、それ以上進まないだけです。
●年齢と度数の目安
老眼の度数の進み具合は、個人差が大きいのですが、だいたいの目安にしてください。
- ◆40~48歳……+1.00
- ◆45~53歳……+1.50
- ◆50~58歳……+2.00
- ◆55~63歳……+2.50
- ◆60歳以上……+3.00
Q コンタクトレンズにも老眼用はあるの?
A 遠近両用コンタクトがありますが、デメリットもあります
「老眼用のコンタクトには細かく種類がありますが、大きく分けると2種。ひとつは『遠近両用』で、近くも遠くも見えますが、鮮明度は通常のコンタクトよりも落ちます。
また、『モノフォーカル』は“左目は遠く、右目は近く”というように異なったレンズを入れることで、両目で見ると遠くも近くも見えるという仕組み。
ただし、いずれも脳がその見え方に慣れるまでに少し時間がかかるという難点があります」(平松類先生)
●遠近両用コンタクトの仕組み
1枚のレンズに遠用と近用の度数を配置。そのどちらを見るかは脳が判断します。網戸越しの景色の、網戸にピントを合わせると遠くがぼやけ、遠くを見ると網戸が見えにくいのと同じ原理
代表的な遠近両用のバイフォーカル(上イラスト左)は遠用と近用がはっきり分かれており、マルチフォーカル(上イラスト右)は中心から周辺部に徐々に度数が変化しています
●モノフォーカルの仕組み
左右の目で遠用と近用、別のレンズを挿入。両目で見ると脳が調整して、遠くも近くも見えるという仕組みです
答えてくれたのは
平松 類さん
Rui Hiramatsu
医師、医学博士。昭和大学兼任講師、二本松眼科病院副院長。目の健康YouTube「眼科医平松類チャンネル」は登録者数10万人超え。日々、無料で目の健康情報をアップしている
撮影/塩谷哲平 スタイリスト/程野祐子 構成・原文/山村浩子