さて前回、富士登山の計画を無事に立てることができましたね。
①ツアーか個人手配か決める
②(個人の場合)ルートを選ぶ
③(個人の場合)山小屋の予約をする ※一泊二日の場合
④富士山までの交通手段を検討する ※到着時間と体を慣らす時間を考えて
⑤(個人の場合)だいたいの行動予定(タイムスケジュール)を決める
⑥ 行動予定にあわせた荷物の準備
① 〜⑤までが無事に決まったら、次は⑥持ち物についてです。
富士登山:何を準備すればいい?(基本編)
まずは最重要アイテムから。
1.靴&靴下
まずは靴です。トレッキングシューズでも可ですが、これだけは必ず山歩きを想定した登山靴を準備しましょう。
できる限り防水仕様のものがおすすめです。
スニーカーなどはソールが弱くて疲れますし、悪くすると途中でダメになってしまうこともあるので、靴だけはしっかり足を守ってくれるものが必要です。
靴を決めたら、ぜひ一緒にソックスも専用のものを。町歩き用の薄いものだと、靴擦れしちゃうかもしれません。しっかりしたもので足を守りましょう。
2.ザック
富士山には自然の水もコンビニもありません。山小屋では飲むだけでなく歯磨きや顔を洗う水だって有料です。つまりある程度必要なものは自分が持っていかなければいけません。
それを持ち歩くためのザックが必要です。
普段使っているリュックなどでもいいのですが、普通のリュックだと重心の位置などが考えられていないので、重くなりがちな登山荷物を運ぶにはちょっと疲れてしまうかもしれません。
登山用のものがやっぱりおすすめです。
雨用カバーがついているとより安心ですね。最低でもチェストベルトがあると、リュックが揺れにくくかなり楽ですよ。
3.レインウェア
山の天気は変わりやすいです。標高の高いところで降られる雨はだいたい平地の豪雨的なイメージを持っていれば間違いありません。
そんな時、雨の装備がなければびしょ濡れです。
さらに、標高が100m上がるにつれて気温は0.6℃下がります。つまり五合目が20℃だったなら、頂上は約10℃しかないことになります。そんな中でびしょ濡れのままだったら・・・想像にかたくありませんよね。
ビニールのペラペラのものよりしっかりしたアウトドアブランドのものの方が、防寒着にもなるので一石二鳥です。
コート型やポンチョなどではなく、最低でも上下セパレートのものを準備しましょう。
4.ヘッドライト
山小屋は消灯も早いです。そして、ほぼトイレは外にあります。室内でも、トイレに行くときも、そしてご来光を目指して明け方暗いうちに登るにも、ライトは必要です。
手に持つハンドタイプでもいいのですが、ずっと照らしていては腕が疲れてしまいます。山では両手が空くヘッドライト(頭につけるタイプ)がおすすめです。登山が趣味の人だとヘッデンなんて呼ぶ人もいます。
ヘッドライトの明るさは、通常「ルーメン(lm)」という単位であらわされています。富士山であれば200ルーメンもあれば十分だと思います。
以上のアイテムはまずは揃えたいグッズなのですが、実はレンタルサービスもあります。五合目で借りて五合目に戻ってから返す、というレンタルショップまであったりします。
ツアーなどでもオプションで申し込めたりするので、買う前に確認してみるといいですね。
富士登山:何を準備すればいい?(持ち物編)
5.水や飲み物
各山小屋でペットボトルの水やドリンクを購入できますが、山の上なので高価です。自分が飲む分最低1~2リットルくらいは持っていきたいものです。
ただし、荷物が重くなるとその分疲れも倍増するので、有料の飲み物も上手に使って軽量化するのもいいですね。
ちなみに捨てる場所がないので、ペットボトルに限らずゴミは全部持ち帰らなければいけません。(山小屋で購入と引き換えに受け取ってくれるケースもあります。)お湯も基本は有料と思っておきましょう。
6.補給食とおやつ
山小屋に泊まるなら食事は出ますが、あくまで必要最小限です。登山はエネルギーを使いますし、好きなおやつがあれば頑張れますよね。ここぞとばかりにダイエットは忘れましょう。
コンビニもない富士山には、買えるとしてもおやつの種類がありません、売っている場所も限りがありますので持参しましょう。ただし、溶けやすいチョコや崩れやすいクッキーなどは、ザックの中でぐちゃぐちゃになってしまうことがあります。私のおすすめはカステラやどら焼きです。栄養価もエネルギーも高くて補給食としても優秀。
塩飴などもあるとたくさん汗をかいても安心です。
後述しますが、高山病などになると胃が固形物を受け付けられなくなることも。いわゆるエネルギージェルなどあるとより安心でしょう。
7.その他
あると便利なものがモバイルバッテリーです。山小屋ではコンセントが使えないケースも多いので、カメラや携帯の充電用に持っていると安心です。また、タオルなどもないので一枚入れておくと重宝します。
ちなみに意外と携帯の電波はありますので、ついついの使い過ぎに注意です。
山小屋はいわゆる雑魚寝です。隣の人のいびきで眠れなかったということもあるので、耳栓などあるとよいでしょう。また、汗拭きシートなどあれば、汗をかいて登ってきた後でもすっきりして眠れますよ。ウェットティッシュなどもあると、手が洗えない時に重宝します。
また貴重品は常に身につけておきたいものです。ウェストバッグやサコッシュなどあると便利です。あ、御朱印目当ての方は御朱印帳も忘れずに。
富士登山:何を準備すればいい?(ウェア編)
1.基本のウェアは「濡れない」「焼けない」で
基本的に動きやすければOKですが、大事なポイントは2つ「冷えないこと」と「日焼け対策」です。
レインウェアを持っていけば、大丈夫と思いますか?
実はそれより怖いのが汗冷えです。いくらゆっくり歩いても、登り続けると汗をかきます。汗で濡れたままの服を着ていると、体温が奪われてしまいますし、富士山のような気温の低いところでは低体温症という症状になってしまうこともあります。
山小屋につくまでは着替えもできませんから、速乾性の素材のものや高機能タイプの下着などで対応しましょう。
そういう意味では、ジーンズや綿素材のスエットパンツなどは乾きにくく、汗をかくと重くなるので避けましょう。動きにくいですしね。汗も乾きやすくストレッチのきいたスポーツウェアなどが、個人的にはおすすめです。
逆に、とても天気の良い日などは、強い日差しを防御するすべも必要です。
高度のある場所には「森林限界」というものがあります。一定の高さ以上だと、環境条件が悪いため樹木が育たないという現象なのですが、富士山がある本州中部では五合目付近ですでにその限界がきているため、基本的に日蔭がありません。燦燦と照り付ける日差しの中登り続けるわけですので、日焼け止めだけでなく、帽子やアームカバー、サングラスなどで疲労を軽減しましょう。
2.ご来光を見るなら防寒対策も必要
富士山の頂上でご来光を待つなら、防寒対策も大事です。日が昇る前の頂上は、天気にもよりますが、夏でもマイナスになることがほとんどです。風も強く体感温度は想像以上に低いと思っておく方がよいでしょう。
山小屋も開いていませんから、室内で待つわけにもいきません。コンパクトなダウンジャケットや手袋、フリースなどでしっかり防寒してくださいね。
登るとき、下るとき、ここに注意しよう
さてこれで、富士登山の準備は完了です。あとはひたすら自分の足で登って下るだけ。
とはいえ、注意点もあります。
まず、自分のペースで歩きましょう。前の人について行こうとしてつい頑張るとへばってしまうのも早いです。特に登りは空気もどんどん薄くなっていきます。小さな歩幅でゆっくりゆっくり、無理せずに登りましょう。休憩もたっぷりと。
幅が大きいと、それだけ足を使うので早く疲れてしまいます。特に登りは、小さく小さくゆっくりゆっくり上ってください。
ゆっくりをおすすめするのは、高山病の予防もあります。急激に高度を上げると、酸素の薄さに体が追いつけず、高山病の危険が高まります。高山病になると、吐き気や頭痛、貧血だったり食事が食べられないなどの症状が出ます。高度を下げればケロッと治ることも多いのですが、タクシーもない富士山です。下山も自分の足で降りなければなりません。
特に超初心であれば、高度に慣れていない自覚を持ってとにかくゆっくりを心がけましょう。脱水なども高山病の原因になりますから、水分もまめにとってくださいね。
(なお、高山病は山に慣れている人でもなるので、なったからといって落ち込む必要はないですよ。)
最後に、たぶんみなさんが心配なトイレ事情についても書いておきますね。
今ではほとんどの山小屋のトイレがバイオトイレになり、ペーパーもついた普通のトイレスタイルですから、超初心者でも安心です。ルートにもよりますが、2~3時間に1つはありますし、そういう意味では他の山を登るより安心かもしれません。
ただし!すべてのトイレは当然有料です。小銭はしっかり準備しましょう。(人がいてお札で対応してくれるところもありますが、急いでいる時はあせるので(笑))
こうやってまとめてみると、普通の旅行と違って、少し大変そうに感じるかもしれません。でも、思ったより普通に行けそうな気もしませんか。
もちろん楽ではないですが、それを超えて登り切った時の満足感や嬉しさはまた格別です。3700mから見下ろす雲海やご来光の美しさも素晴らしいですし、なにより「あの富士山に登った!」と思う満足感はなかなかのものです(笑)
個人的な話で恐縮ですが、私は関西出身なので時々帰省するのですが、新幹線から富士山が見えると、毎回「あそこにいたんだよなあ~」という不思議な気分になります。
ぜひチャンスがあれば、一度は自分の足で”日本の最高峰”に登ってみてください。一生の思い出になると思います。