【教えていただいた方】
池谷医院院長。1962年生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。1997年に、池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科・循環器科。現在も臨床現場に立つ。心臓、血管、血圧などの循環器系のエキスパート。
お肌の曲がり角は、血管の曲がり角!
血管の老化…「タバコも吸わないし、肥満でもないから、私は大丈夫!」と思っているあなた! 実は…そうとは限りません!
年齢とともに肌に弾力がなくなるように、血管の弾力も失われていきます。40歳を過ぎた頃から、ガクンと肌が衰えるように、血管の老化も加速する時期なのです。
なんとなくだるい、昔のように頑張れなくなった、そんなことが気になっているのなら、それは血管力の低下のサインかもしれません!
肩こり、冷え、むくみ…それはすべて血管力の低下が原因!?
「血管は“ものを言わぬ臓器”と呼ばれています。血管の老化をはじめ、ほとんどの血管の病気には自覚症状がありません。
血管は血液とともに、生命活動を維持するために必要な栄養や水、酸素を体中の各細胞に運ぶ役割を果たしています(=動脈の働き)。そして、各細胞で発生した老廃物や有害なものは、血液とともに回収されて、無害なものに代謝されたり、体外に排出されます(=静脈の働き)。血液の流れが滞ると、この働きが低下します。これが、さまざまな『ちょっと調子が悪い…なんとなく不調」につながっていくのです』(池谷敏郎先生)
こんな症状はありませんか?
肩こり、冷え、むくみ、肌あれ、髪の毛のパサつき、頭痛、胃腸が弱い、便秘、関節痛、朝すっきり起きられない、疲れが取れずに常にだるい…。
これはまさに血管力が低下して、血流が悪くなっているサインかも!?
あなたは大丈夫?
血管力の低下で最も怖いのが「突然死」!
こうしたサインを見逃していると、血管はどんどん老化していきます。その先にあるもの…それは「突然死」かも!? 日本人の死因の第2位が「心疾患(心筋梗塞など)」で、年間、約21万人が亡くなっています。第4位が「脳血管疾患(脳卒中など)」で、年間約11万人が亡くなっています。これらはいずれも血管の病気が主な原因です。
でも、「そんなのって高齢者の話でしょ?」と思ってしまいますが、「こうした血液病が増えてくるのが30代、40代なのです。特に女性は40代から女性ホルモンが低下してくるので、肌と同じように「血管」の潤いや弾力も急激に失われていきます。実は、女性ホルモンには血管の弾力を司る働きがあるのです。
女性ホルモンが元々少ない男性は、血管の老化が早い時期から進みますが、女性ホルモンが急激に減少する更年期頃から、女性もそれに追いついてきます。よって、女性も40代からの血管ケアが重要になってくるのです」。
あなたの「脳卒中リスク」は?
10年間で脳卒中を発症する確率 算定表
当てはまるものに〇をつけてください。すべての点数を足した数値が、あなたの「合計点数」となります。
年齢(歳):点数
40~44:0
45~49:5
50~54:6
55~59:12
60~64:16
65~69:19
性別
男性:6
女性:0
タバコを吸っている
男性の場合:4
女性の場合:8
肥満度(BMI)
25未満:0
25以上30未満:2
30以上:3
※BMIの算出法
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
標準体重=身長(m)×身長(m)×22
糖尿病
あり:7
※治療中、または空腹時血糖値126㎎/dL 以上
血圧(mmHg)
(降圧薬内服なしの場合)
120未満/80未満: 0
120~129/80~84:3
130~139/85~89:6
140~159/90~99:8
160~179/100~109:11
180以上/110以上:13
(降圧薬内服中の場合)
120未満/80未満:10
120~129/80~84:10
130~139/85~89:10
140~159/90~99: 11
160~179/100~109:11
180以上/110以上:15
※血圧:収縮期/拡張期(mmHg)
収縮期血圧と拡張期血圧のそれぞれで採点して、点数が高いほうを採用。
あなたは何点でしたか? 当てはまる点数が発症確率と血管年齢です。
出典/国立がん研究センターによる多目的コホート研究HPより
隠れ高血圧や高血糖にも要注意!
そのリスク要因の5大悪がこれ! 喫煙、高血圧、脂質代謝異常、高血糖、肥満。これらが1つ増えるごとに、血管事故を引き起こすリスクがおよそ3倍になります。
喫煙/言わずとも知れていますが、ニコチンが体内に入ると血管を著しく収縮させます。これにより、血圧と心拍数を上げ、高血圧や動脈硬化を促進。そして活性酸素が血管内皮細胞を傷つけます。
高血圧/血管の壁が、心臓から送り出された血液によって、強く押され続けている状態です。これが続くと、血管内皮細胞が傷つきます。最近は「血圧はやや高めでも問題なし」と言う人もいますが、高血圧は確実に10年、20年後に血管事故を起こすリスクが高まります。
脂質代謝異常/悪玉のLDLコレステロールや中性脂肪が多すぎたり、善玉のHDLコレステロールが少ない状態です。これは突然死の大きな原因である動脈硬化を促進します。
高血糖/血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度のこと。血液中に余った糖がタンパク質と結びつくと、「終末糖化産物=AGEs(エイジス)」という物質に変わります。これが「糖化」という現象で、細胞を老化させる大きな原因といわれています。
肥満/BMI値25以上は要注意!
肥満だと高血圧、脂質代謝異常、高血糖を招きやすく、結果、血管の老化を促進します。
BMI 18.5未満/低体重
18.5以上25未満/普通体重
25以上/肥満
さらに…、「これらがどれも当てはまらなくても、女性は『60歳以上』というだけで、リスク要因になります! 年齢を止めることはできませんが、せめて、それ以外の要因をつくらないことが最重要! それには40歳からの血管ケアが必須なのです」。
あなたの突然死リスクはいかがでしたか?
【池谷敏郎先生の著書】
「血管を鍛える」と超健康になる!(三笠書房) ¥649
イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子