血管力アップのための2大柱である、運動と食事のポイントを説明してきました。それではそれ以外に血管力アップに大切なメソッドはあるのでしょうか?
怒りの感情はタバコ3本分のストレスが血管にかかる
「そのひとつがストレスです。ストレスは血管を収縮させて血圧を上昇させます。特に怒りやイライラ、嫉妬といったマイナスの感情は交感神経を強く刺激して、血圧を上げます。
怒りで興奮しているときは、タバコを3本同時に吸っているのと同じくらいのストレスが血管にかかるといわれています」
喫煙は血管を老化させる5大悪のひとつ。喫煙者であればダメージはさらにアップしますし、タバコが嫌いな人なら、ちょっとショックなお話ですよね。
「怒りがこみ上げてきたときは、腹式呼吸をして緊張をやわらげるといいでしょう。またなかなか怒りが収まらないときは、どんなことが起こったのか、なぜ自分は怒ったのか、などを書き留めます。すると意外とすっきりするし、後で読み返したりすると、その状態を客観的に見ることができて、事態を自分の中で消化しやすくなります。
また、『それは違うでしょ?』と思っても、意見を言って相手を変えようと思わないことです。『どうしてわかってくれないの?』ではなくて、『そういう考えもあるのか…』と、自分が変わるように心がけると、ストレスを上手に回避できるものです」
いい睡眠がいい血管をつくる
「睡眠は脳や体を休ませるだけでなく、新陳代謝を促して、体が受けたダメージを修復する時間でもあります。血管の修復も睡眠中に行われます。睡眠中は副交感神経が優位になり、リラックスした状態。心拍数も血圧も下がるので、血管にはよい環境です。
しかし睡眠が不足すると、交感神経が優位の時間が長くなることで、血圧が高くなります。必要な睡眠時間については個人差がありますが、基本的には、短すぎても、長すぎてもよくないというデータがあります。目安として、5時間未満または8時間以上の人は注意が必要です」
とはいえ、睡眠の時間だけが問題ではありません。重要なのはその“質”(=熟睡度)なのだと池谷先生。
「それを高めてくれるのが、必須アミノ酸であるトリプトファンです。
①体内にトリプトファンがある
↓
②幸せホルモンであるセロトニンに変わる
↓
③夜になると睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を促す
という流れをつくるトリプトファンは、体内で生成できないので、食事からとることが必要です。それを多く含む食材は、豆腐、蒸し大豆、バナナ、はちみつなど。消化&吸収を考えると、特に朝食でとるのがおすすめです」
豆腐や大豆をスープや味噌汁に入れたり、バナナやはちみつをヨーグルトやスムージーにプラスしてみてはどうでしょうか?
「私は最近では、どうしても翌朝までにやらなければならない仕事がある場合には、深夜までやって終わらせて寝るのではなく、仕事時間を逆算して、早く寝て、朝早起きをして行うようにしています。
睡眠時間が足りないなと思うときには、昼間に30分以内の仮眠をとっています。こうした工夫も大切ですね」
睡眠の“時間”だけにとらわれるのではなく、ぐっすり眠る=質のいい睡眠や、昼間のパフォーマンスを落とさないように工夫することも必要です。
池谷先生は血管ケアについて、よく血管を桜の木にたとえるそうです。それは…
「大動脈は“幹”、手足に至る中小の動脈は“枝葉”。そして枝分わかれして手足や脳、心臓、肺、腸、骨といった臓器に至る末梢の血管は“葉や花”です。中小の血管から末梢の血管は、自律神経によりコントロールされており、末端の臓器まで血液を正常に流すためには、悪しき生活習慣を正して動脈硬化を防ぐとともに、規則正しい生活で自律神経を正常に保つことが大切なのです。桜の木が、いつまでもきれいな花を咲かせるためには、幹や枝葉の健康が保たれていることが不可欠なのです」
各臓器にしっかりと役割を果たしてもらうためには、そこに栄養を届ける血管の健康があってこそ。「なんとなく不調」や生活習慣病、突然死も、血管の衰えや老化が大きな原因。今すぐにでも、血管が喜ぶ生活習慣を身につけたいものです。
【教えていただいた方】
池谷敏郎さん
池谷医院院長。1962年生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。1997年に、池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科・循環器科。現在も臨床現場に立つ。心臓、血管、血圧などの循環器系のエキスパート。
池谷医院院長。1962年生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。1997年に、池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科・循環器科。現在も臨床現場に立つ。心臓、血管、血圧などの循環器系のエキスパート。
『1日5分! 血管ケアだけで20歳若返る!』(青春出版社) ¥1100
イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子