少しずつ日常を取り戻しつつあるとはいえ、コロナ禍前よりもお出かけや運動量が少ないままではないでしょうか? 実は、このおこもり状態や運動不足が認知機能悪化の一因になるのではないか、とも言われています。
そこで今回は、自分のため、身近な家族のための認知症対策について、ブレインケアクリニック名誉院長の今野裕之先生に教えていただきました。
◆アルツハイマー病予備軍チェックリスト
認知症にはいくつか種類があります。その約6割を占めているのがアルツハイマー型認知症で、認知症を引き起こす原因疾患として知られています。
まずは、このアルツハイマー病の予備軍になっていないかを、下記の症状がないかどうかでチェックしてみましょう。
☑人や物の名前がすぐ出てこない
☑忘れ物が増えた
☑集中力が落ちた
☑「いつも同じことを聞く」と言われる
☑以前に比べて気力が落ちた
☑匂いや味がわからなくなってきた
◆画期的新治療「リコード法」で改善の可能性が!
思い当たるものが1つでもある人は、認知症予備軍の可能性があります。でも、早めのブレインケアをすることで改善できることもあるそう。
アルツハイマー型認知症は「アミロイドβ」という物質が、脳に蓄積し悪影響を及ぼすことで発症します。今までは「アミロイドβ」の蓄積を防ぐか除去する治療法がメインとなっていました。
ところが、アメリカのデール・ブレデセン医師により開発された治療法「リコード法」は、「アミロイドβ」が蓄積する原因がどこにあるかに焦点を当て、その根本原因を探って生活習慣の改善などからアプローチする方法です。つまり、原因物質を蓄積する前段階で手を打つ治療法。期待できそうですね。
◆今すぐできる5つの認知症予防習慣
それでは、リコード法に基づいた5つの認知症予防習慣についてみていきましょう。
【1】運動をしながら頭を使う「コグニサイズ」を週2~3回行う
運動は、脳の血流改善やアルツハイマー病の原因物質の沈着を減らすなど、認知症リスクを減らすことがわかっています。特に、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、記憶力を高める効果があると多くの研究で明らかにされています。1回当たり30分程度の運動を週2~3回行う習慣をつけましょう。さらに、運動をしながら同時に頭を使う「コグニサイズ」をすると、より効果的です。
コグニサイズは、頭で考えるコグニション(認知)課題とエクササイズ(運動)課題を同時に行うことで、脳と体の¥機能を効果的に向上させることを目指す運動法。例えば、引き算をしながら踏み台昇降をする、グループでしりとりをしながらウォーキングなどがこれに当たります。
【2】マインドフルネスなどのストレスケア法を身に付ける
ストレスを受けるとストレスホルモンが分泌され、全身の血管が収縮して血流が悪くなり、神経細胞が活動するために必要な酸素や栄養が届かなくなってしまいます。特に記憶をつかさどる海馬という部分がストレスに弱く委縮しやすいため、ストレスは認知症リスクを高めると言われており、ストレスマネジメントが認知症予防に欠かせません。
今この瞬間に集中してありのままに受け入れる状態を目指し、瞑想で意識をコントロールする「マインドフルネス」など、自分に合ったストレスマネジメントをして、ストレスをためないようにしましょう。
【3】脳活をして脳の老化予防をする
脳のトレーニング、脳活をしていろいろ脳の部位を刺激して活性化するのが効果的。「日記を書く」「楽器を弾く」「絵を描く」「パズルをする」など、頭を使うことで興味のあることにチャレンジしていきましょう。
また、人との交流も脳を刺激するのでおすすめ。外出してお日様に当たることで、認知症の発症を抑制するとされるビタミンDの合成もできます。趣味のサークルに参加したり、ボランティアをやってみるなど、積極的な交流を。
【4】十分な睡眠を確保する
日本人は、世界の中でも睡眠時間が短いというデータがあります。短い睡眠は認知症リスクを高めると言われており、実験でも7~8時間睡眠をとる人と比較した場合、睡眠時間が1時間短いと脳にできるすき間が1年ごとに0.59%拡大し、認知機能は1年ごとに0.67%低下するという報告もあります(※1)。
睡眠時間は1日7時間を目安にし、足りない時は、夜の睡眠の妨げにならないように午後3時までに30分以内の昼寝で補いましょう。
【5】ケトフレックス12/3食事法を実践する
アルツハイマー病の原因物質「アミロイドβ」を減らす可能性が高い食事法として注目される「ケトフレックス12/3食事法」。以下の4つを基本にした食事法です。
●良質なたんぱく質と脂質をとる
脳はエネルギー源としてブドウ糖を使います。ところが、アルツハイマー病の脳ではブドウ糖をうまく使えず、脳が慢性的なエネルギー不足になっています。アルツハイマー病の脳で、糖の代わりに脳のエネルギー源とし使うことができるのがケトン体。そのため、体内にケトン体を作り出すことが大切です。
ケトン体を作り出すには、ナッツや卵、青魚などの良質なたんぱく質のほか、オリーブオイル、えごま油、亜麻仁油などの良質な脂質を積極的にとっていきましょう。
●野菜中心の食事を心がける
食物繊維をとることで血糖値の上がり方が穏やかになったり、野菜が持つ栄養素により脳の働きを悪くする炎症や、老化を促進する酸化の抑制が期待できます。野菜たっぷりのメニューを心がけましょう。
●夜ごはんは寝る3時間前までにとり、朝ごはんまで12時間空ける
食事をとらない時間をつくることで、細胞内をきれいにして老化を遅らせる「オートファジー」のメカニズムが働きます。また、空腹になると食事がない状態でも生命を維持できるよう体のメンテナンスが始まります。
●ケトフレックス12/3食事法の効果をアップさせる栄養成分を積極的にとる
また、この食事法の効果をよりアップさせるためにも、毎日の食事で積極的にとりたい認知症予防にぴったりの栄養成分があります。こちらもあわせてとっていきましょう。
・オメガ3脂肪酸
認知症の予防・改善に必要な慢性炎症を抑えるDHA、EPA、αリノレン酸などのオメガ3脂肪酸。まぐろ、さば、さんま、ぶり、いわしなどに含まれます。
・タンパク質
神経細胞や神経伝達物質の原料となるたんぱく質。肉や魚、卵、乳製品、大豆製品などから体重1㎏当たり1g以上を目安にとりましょう。
・プロポリス
体内の炎症を抑える、血糖値を下げる、インスリンの働きを改善する、認知症を改善する、といった効果が認められています。
とはいえ、毎食バランスよく脳にいい食材をとるのは難しい時もありますよね。そんな時は、サプリメントも上手に活用してみましょう。たとえばこちらは、認知症予防におすすめな成分がバランスよく含まれています。
認知機能の維持を助けるといわれるプロポリスエキスをはじめ、クルクミン、イチョウ葉由来フラボノイド配糖体、イチョウ葉由来テルペンラクトン、大豆由来ホスファチジルセリンと5つの有効成分を配合。年齢とともに低下する認知機能のうち、記憶力・注意力・集中力・判断力の維持をサポート。ノンアルツBee 90球入 ¥8,640(山田養蜂場)
認知症は、発症の約20年前から進行しているとも言われています。今のうちから毎日の生活で対策をしていきましょう!
(※1)5.Xie L, Xu Q, et al. Sleep Drives Metabolite Clearance from the Adult Brain. Science. 342(6156), 373-377 (2013)
教えてくれたのは
医療法人社団TLC医療会ブレインケアクリニック名誉院長
今野裕之先生
一般社団法人日本ブレインケア・認知症予防研究所所長。博士(医学)・精神保健指定医・精神科専門医・日本抗加齢医学専門医・認知症診療医。日本初のリコード法(アルツハイマー病の画期的治療プログラム)認定医。2016年ブレインケアクリニックを開院。認知症の予防や治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、患者ひとりひとりに合わせた診療に尽力している。著書も多数。
◆資料提供/山田養蜂場
構成・文/倉澤真由美