油やタンパク質を減らさず、しっかり食べることがダイエット成功への道!
実に長年にわたり、太るのは高カロリー食が原因で、痩せるにはカロリー制限が必須…と言われてきただけに、にわかに信じがたいのですが…。
「健康的に痩せるためには、カロリーを気にすることはありません」と山田先生はきっぱり!
高カロリーでダイエットの大敵と思われていた筆頭が、「脂質」と「肉などのタンパク質」でしょう。しかし、その油をしっかりとることがダイエットの第一歩だったのです。
脂質摂取が増えるほど、血中の中性脂肪値が低下しやすいというエビデンスがあります。
出典/J Clin Lipichol 2009.3.19.32
「油は体の中のエネルギー源となります。そのほか、『細胞膜を構成して、細胞と血液とを隔離する』、『ホルモンとなって生体の特定の細胞に指令を届ける』、『胆汁酸を作って、脂質や脂溶性ビタミンの吸収を助ける』などの働きがあります。いずれも、人体には欠かすことができない、重要な役割です」
でも、油のとりすぎは、心臓病や脳卒中の原因になる動脈硬化を促進するのでは?
「スペインで行われた研究で、オリーブ油を1週間に1ℓ 摂取するように指示されたグループは、油を控えたグループよりも、心臓病も脳卒中の発生も30%減ったという結果が出ています。これはナッツ(クルミ15g+ヘーゼルナッツ7.5g+アーモンド7.5g)でも同様の結果でした」
しかし、さすがに動物性脂肪はNGなのでは?
「確かに、かつては一般的に、動物性脂肪(飽和脂肪酸)のとりすぎは動脈硬化を促進させると考えられてきました。しかし、飽和脂肪酸を減らしたことで、かえって心臓病や死亡率が上昇したという検証結果がオーストラリアやアメリカから報告されています。
一方で、飽和脂肪酸の摂取が増えると悪玉コレステロールが増えるという報告もありますが、同時に善玉コレステロールも増えるとされています。日本人でも飽和脂肪酸の摂取が多いほうが、脳卒中の発症が少なくなるというデータがあります」
油の種類は、オリーブ油、ごま油といった植物性油だけでなく、バターや肉の脂身などの動物性脂肪でも、魚の油脂でも基本的にどれでもOK。ただし、トランス脂肪酸は動脈硬化症を増やす可能性が示されていて、反証論文がありません。こちらは注意が必要です。また、傷んでしまった油脂が酸化して増える過酸化脂質も胸焼けにつながると考えられています。こちらも避けたいですね。
タンパク質をとって悪いことは何もない!
一方で、タンパク質はどうでしょうか? 糖質制限をして、その分、肉などのタンパク質をとりすぎると、腎臓に負担がかかる…という説があります。
「こちらも、2008年まではアメリカの糖尿病学会のガイドラインで、腎臓を保護するためには、タンパク質を制限するように指導されていました。しかし、2013年には、タンパク質の摂取量は腎臓機能に影響を与えないと発表されました」
日本人のタンパク質の摂取量は2000年くらいから減っていて、今では1950年代と同じ水準というデータも。タンパク質はしっかりとるのが正解です。
タンパク質や脂質、食物繊維を一緒にとると血糖値の上昇を抑えられる!
こんなデータがあります。4つの食事様式別に食後血糖値の推移を記したものです。
食後の血糖値が高かった順番に並べると、①→②→③→④。カロリーが高くなるほど、血糖値の上昇を防ぐという結果になりました。
白飯だけよりも、チャーハンや卵料理、野菜などのおかずと一緒に食べたほうが、血糖値の上昇が抑制できるわけです。
ただし、別な研究で、①ハンバーグとサラダ、②パンの食べ方の研究では、①→②で食べたほうが、②→①で食べるよりも血糖上昇を抑制できたのですが、①+②をサンドイッチにして食べた場合には、ほぼ②→①と同じレベルまで血糖が上昇していました。
そう考えると、脂質やタンパク質、食物繊維を糖質と同時に食べるというよりも糖質に先んじて食べておくことが重要なのかもしれませんね。
まとめ
① 脂質はしっかりとっても動脈硬化を促進しない(控えると動脈硬化を促進する可能性あり)
② タンパク質をとりすぎても悪いことは何もない(控えると将来の寝たきりの可能性が高まります)
③ 糖質に先んじて脂質やタンパク質、食物繊維をとると、食後血糖値の上昇を抑えられる
【教えて下さった方】
北里大学北里研究所病院 副院長・糖尿病センター長。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医。多くの糖尿病患者と向き合う中、カロリー制限中心の食事療法では、食べる喜びが損なわれている現実に直面。患者の生活の質が高められる糖質制限食に出合い、積極的に治療に取り入れている。著書多数。
取材・文/山村浩子