「ロカボ食」どちらが結果に結びつく?
糖尿病の治療からスタートしたロカボ食とは。
食後の血糖値を上がりにくくすることで、痩せて締まった体になり、血糖値や血中脂質値、血圧値が改善することが、科学的にも証明されています。
※ロカボ食ってどうすること?
1食20g以上40g以下で糖質を摂取し、これで1日3食と、それとは別に嗜好品(おやつ)で1日糖質10gを摂取する食事法。緩やかな糖質制限です。
我慢するのではなく、工夫して糖質を上手にとり、楽しく食べようという考え方でもあります。
*主食に含まれる糖質量/白米ご飯半膳で糖質約28g、食パン8枚切り1枚で約20g、パスタ半皿で約34g、ラーメン麺半量で約28g、そば半量で約20g。
さて、ロカボ食を実践するとき、効果を上げるにはどちらを選ぶ?
Q1:サラダにかけるのは…マヨネーズ or ノンオイルドレッシング?
A:マヨネーズ
「従来のカロリー制限によるダイエット法では、敬遠しがちなマヨネーズ。実は主原料は卵と油なので、糖質を制限する観点から見たら、積極的に使いたい調味料です。今までの長年の癖で、油も控えたくなる人が多いのですが、それは逆効果。サラダだけでなく、さまざまな料理に活用することをおすすめしています。また、ノンオイルドレッシングなどは、味の物足りなさを補うために、糖質を使っているものもあります。使用時には必ず原材料をチェックする習慣をつけましょう!」(山田悟先生)
Q2:そばを食べるなら…とろろそば or 鴨南蛮そば?
A:鴨南蛮そば
「ヘルシーイメージが高いそばですが、実はざるそば1枚の糖質は約40gと、かなり高めです。さらにとろろも糖質が多いので、さらにオーバー。せめて、タンパク質や油が一緒にとれる鴨南蛮そばを選んで、血糖値の上昇を抑えましょう。そば屋のつまみでは、甘くないだし巻き卵やかしわはOK。天ぷらは衣が厚い場合は小麦粉が、カマボコはつなぎに糖質が使われていることもあるので注意が必要。そばつゆはかえしに砂糖やみりんが使われていることが多く、さらにそば湯にはそばの打ち粉の糖質がたっぷり溶け出しているので、できれば飲むのはやめましょう」
Q3:スイーツを食べるなら…和菓子 or ケーキ?
A:ケーキ
「砂糖を使っている点では、和菓子もケーキも同じです。しかし、どうせ食べるのなら、卵(タンパク質)や生クリーム、バターなどの乳製品(油脂)を使っているケーキのほうが、血糖値の上昇は緩やかです。油脂という点ではチョコレートもいいですね。
そして、こうした食材のおいしさで、合成甘味料の甘みを砂糖とさほど相違なく感じられるようにしてくれるかもしれません。合成甘味料を使いやすいという意味でもケーキのほうを選びたいところです。もちろん種類にもよりますが、和菓子によく使われる砂糖や小豆、餅(米)などは、高血糖食材ばかり。それも素材が味の良し悪しにかかわるので低糖質食材に代替するのが難しいのです。でも、世の中には低糖質の羊羹やどら焼きもあります。ぜひ、いろいろと探してみてください」
Q4:朝食にとるなら…ベーコンエッグ or フルーツスムージー?
A:ベーコンエッグ
「健康を気遣って、朝にフレッシュフルーツのスムージーを飲んでいる人も少なくないでしょう。しかし、ロカボの観点からは全然ヘルシーではありません。フルーツは太らないイメージですが、糖質はかなり多め。中にはスムージーにはちみつを加える人もいるので、これはかなりの糖質オーバーです。特に体が動き出す朝は、ただでも血糖値が上がる人がいます。そこに糖質の多いジュースでは、血糖値の急上昇を引き起こします。フルーツを食べるのなら、ジュースにせずそのまま、食後のデザートでとることをおすすめします。その場合は、主食を抜く、減らすといった調整を!」
Q5:食べる順番、重要なのは…ベジファースト or カーボラスト?
A:カーボラスト
「最初に野菜を食べるというベジファースト。これが習慣化している人も少なくないでしょう。食物繊維が豊富な野菜を先に食べるというのは“正解”です! しかし食物繊維以外にも、タンパク質や油脂も血糖値が上がりにくくなるので、タンパク質ファーストでもOK。野菜が最初である必要はありません。重要なのは、“糖質を最後に食べる”ということです。その場合も、糖質量1食20~40g以内を守って、おいしくいただきましょう」
Q6:食事回数は…1日2食 or 1日5食?
A:1日5食
「ロカボ食では糖質を1日70~130gにするようにします。それを2食で割るよりも、5食で割ったほうが、1食分の糖質量が控えられます。なので5食のほうが、血糖値が急上昇せず安定します。また、朝食を抜くと、昼食時の食後の血糖値が上がりやすくなります。逆に朝食のときタンパク質や脂質をとると、インクレチンというホルモンが分泌され、昼食以降に体に糖質が入ってきたらすぐ糖質を細胞に取り込めるように、インスリン(糖の代謝を調節して、血糖値を一定に保つ)の分泌を始めて準備をし、血糖値の上昇を緩やかにします。朝と昼を抜いて1日1食で糖質130gをとると、夕食後に食後高血糖が起こり、ロカボ効果はなくなります」
食事を抜けば抜くほど、血糖値は上がりやすくなる
*1日3食とると、血糖値が安定しています
Q7:次の定番メニューについて、糖質量という視点で気をつけるべき食材は何でしょう?
和食/肉じゃが 切り干し大根の煮物 筑前煮
洋食/ハンバーグ ポテトサラダ 海老グラタン
中国料理/麻婆豆腐 餃子 酢豚
A:
和食/
肉じゃが:じゃがいも、隠れ調味料(砂糖・みりん)
切り干し大根の煮物:隠れ調味料(みりん)
筑前煮:里いも、隠れ調味料(砂糖・みりん)
洋食/
ハンバーグ:つなぎの小麦粉、ケチャップ
ポテトサラダ:じゃがいも
海老グラタン:ベシャメルソースの小麦粉、マカロニ(小麦粉)
中国料理/
麻婆豆腐:とろみの片栗粉
餃子:餃子の皮や羽根のための小麦粉
酢豚:とろみの片栗粉、隠れ調味料(砂糖)、(人によってはパイナップル)
「野菜全般の糖質は少なめですが、じゃがいもや根菜類は多めなので摂取量に注意。和食の煮物には砂糖やみりんが、餃子の皮やグラタンのマカロニなどには小麦粉が、中国料理などのとろみづけには片栗粉が使われています。そんな調味料の“隠れ糖質”にも注意しながら、賢くロカボ食を楽しみましょう」
【教えていただいた方】
北里大学北里研究所病院 副院長・糖尿病センター長。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医。多くの糖尿病患者と向き合う中、カロリー制限中心の食事療法では、食べる喜びが損なわれている現実に直面。患者の生活の質が高められる糖質制限食に出合い、積極的に治療に取り入れている。著書多数。
取材・文/山村浩子