日本人の腸内細菌叢は大きく5パターン!
「健康な人と疾病を持つ人1803名の便検体を用いて、日本人の腸内細菌叢を特徴づけるパターン(エンテロタイプ)を解析したところ、大きく5種類に分類されました。
健康な人に多いのは下記のB型とE型で、日本人の7割がこのタイプ。栄養バランスがよく、脂肪を吸収するヤセ菌や炎症を抑える酪酸産生菌が多いのが特徴。A型とD型は高タンパク&高脂質食の傾向で、C型は炭水化物に偏りがち。この3型の人は将来、疾患のリスクが上がるので、食生活の改善が必要です」
日本人の腸内細菌叢5つのタイプ
A タンパク質・脂肪タイプ
肥満の人に多いルミノコッカス属が多いタイプ。心疾患、高血圧、糖尿病のリスクが高い
B バランス食タイプ
善玉菌を好む日和見菌バクテロイデス属や、炎症を抑える酪酸を作る菌が多い健康型
C アンバランス食タイプ
バクテロイデス属が多いが、炎症に関係する菌が少ない。炎症性腸疾患になりやすい傾向
D タンパク質・脂肪・糖タイプ
ビフィドバクテリウム属(ビフィズス菌)が多いが、それ以外はA型に類似。肝疾患に注意
E ヘルシー食タイプ
食物繊維の摂取と関係あるプレボテラ属が多い農村型。病気リスクが低い健康タイプ
この結果から、食事の傾向で腸内細菌叢が変わることがわかります。病気のリスクの参考に!
日本人の腸内細菌は独特!
早稲田大学と東京大学の共同研究グループにより、日本を含めた、欧米、中国など12カ国861人の腸内細菌叢のメタゲノム解析が行われました。その結果、国ごとに特徴的な細菌叢が形成されており、なかでも日本人は独特であることがわかりました。
「食物繊維を発酵させる善玉菌(ビフィズス菌など)が多く、この発酵反応で酢酸を生成する細菌の遺伝子を持つ人が多かったのです。酢酸生成により善玉菌優勢な腸内環境になります。
また、炭水化物やアミノ酸代謝の機能が豊富で、海藻を分解する酵素遺伝子を日本人の約90%が持っています。これは日本人が世界でも有数の長寿国であることや、肥満率が低いことと関係していると考えられています。
また不思議なことに、日本人と中国人では遺伝的には似ているのに、腸内細菌叢はまったく違い、中国人はアメリカ人と似ていることがわかりました。日本人とやや似ていたのがオーストリア人でした。日本人の特徴的な腸内細菌は、独特な発酵食品が関係しているという研究もあります」
食事の多様性が腸内細菌を育む!
毎日食べる食事内容によって、腸内細菌のバランスは変わります。
「最近、食事の多様性の指標を設けて128人を対象に行った実験で、食品摂取の多様性スコア(DVS)が高いほど、有益な細菌が多く、病原性のある細菌が少ないことがわかりました」。
日常的にバラエティに富んだ食事、多くの食材、和洋中さまざまな料理を食べることが、腸を育てるためには大事だといえます。
日本消化器免疫学会理事、日本抗加齢医学会理事。酪酸産生菌と健康長寿の関係を研究。著書に『すごい腸とざんねんな脳』(総合法令出版)など多数
イラスト/SHOKO TAKAHASHI 内藤しなこ 構成・原文/山村浩子