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「四十肩・五十肩」の悪化を防ぐ対処法。セルフケアは段階に合わせて正しく!

肩が激しく痛み、腕が上がらない「四十肩・五十肩」。本当につらいですよね。「放っておいて治ることもありますが、正しい知識のもとで、痛みを最小限にしながら治療すること、そして再発させない生活習慣を身につけることが大切です」と、整形外科医でピラティスのインストラクターでもある武田淳也先生。そのポイントについて伺いました。

「正式名称は肩関節周囲炎で、40代、50代に頻発するため四十肩・五十肩といわれ、名称が違うだけで同じ病気です。実際には30代中頃から70代の幅広い年齢層で、男女問わず起こります。

 

よく肩こりがひどくなった状態のことを、四十肩・五十肩だと思っている人も多いようですが、実は、そのふたつは微妙に違います。肩こりは筋肉疲労ですが、四十肩・五十肩は肩関節とその周囲の炎症です。

 

両肩同時に起こることは少なく、たいがい片方の肩に発症します。しかし、右肩に発症したら、しばらくして左肩も…と、時期をずらして両肩に発症することがあります」(武田淳也先生)

 

けん玉の受け皿よりも小さく浅い肩関節

 

「実は、四十肩・五十肩の原因ははっきりわかっていないんです」と前置きをしながら、その原因と思われることを説明してくれました。

 

「肩関節は股関節などと同じ球関節で、上腕骨の先が球状(上腕骨頭)になっていて、受け皿になる関節窩にはまっている状態です。しかしながら、その受け皿の深さがとても浅いのです。けん玉の受け皿よりも浅いくらいで、とても不安定な形でついています。そして、この腕の動きを支えているのが、そのまわりの筋肉や筋肉同士をつなぐ腱板(けんばん/肩関節を安定させている4つの腱)、関節液が入った関節包(関節を包んでいる膜)などで、これらが複雑かつ微妙に助け合うことで、腕の動きを実現しています。

 

肩の解剖図

正常な関節

 

四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)

 

加齢によりこうした組織が変性したり、悪い姿勢や筋肉の過度の緊張、血行の悪さなどににより、関節内に炎症を起こすことが四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)の原因と考えられています。

 

このような状態になると、薬、注射、マッサージ、ストレッチでも、肩関節だけにアプローチをしても根本的な解決にはなりません」

 

病院での治療はまずは痛みをやわらげること

 

よく病院に行ってもなにもしてくれない…と嘆く人がいます。

「確かに、痛みのひどい炎症期には痛みを抑えることしかできません。症状やその人の意向を伺って、内服薬(抗炎症・鎮静剤)や湿布薬、塗り薬の処方、場合によっては筋弛緩薬の注射などを行います。

 

すぐに治そうとして、自己流のマッサージやストレッチをしたり、整体院に行ったりするのは逆効果になりかねません。激痛のある炎症期は、とにかく安静が第一です!」

 

まずは整形外科専門医を受診して、問診をはじめ、状況に応じてレントゲン、エコーやMRIなどの画像検査を行い、その痛みがどこからきているものなのかを診断をしてもらうことが大切。

 

「実はここがとても重要で、診断を下せるのは医師だけです! 診断を誤れば、痛みが軽減するどころか、悪化させかねません」

 

腱板断裂

 

「中には、肩関節内の関節包や腱板が切れた腱板断裂という、違う病気のこともあります。この場合は痛みが長引くこともあれば、痛みがないケースもあります。しかし放っておいても治癒することはないので、早い段階で適切な治療が必要です」

 

こうしたほかの病気を見逃さないためにも、整形外科専門医の受診は必須です!

 

 

炎症期→拘縮期→回復期で違う基本の対処法

 

「一般的に激しい痛みが出る『炎症期』があり、その後、痛みが収まって関節がかたくなってくる『拘縮期』があり、回復していく『回復期』があります。その症状によって、行うセルフケアなどが変わってきます。

 

とはいえ、人により症状の出方や痛みの程度はそれぞれで、この流れに沿わない場合もあります。また、数カ月で回復する人もいれば、1年、2年と長引く人もいるのが現状です」

 

少しでも痛みをやわらげながら、早く治癒させるためには、正しい知識のもと、正しい対応をすることです。その典型的な3期の主な症状と、それに応じたセルフケアの方法を紹介しましょう。

 

炎症期

「強い痛みがあり、両手を上げることができない、中にはまったく腕が動かせない場合も。夜間寝るとき、横になると痛みが強まり、眠れないという人も少なくありません。この段階ではとにかく安静です。

 

整形外科で行うことは、内服薬や外用薬の処方、症状や本人の希望に応じて、消炎鎮痛剤やヒアルロン酸の注射、電気療法などを組み合わせることもあります。自分で行うこととしては、痛みを感じる姿勢や行動を控えることです」

四十肩・五十肩 寝姿

肩が痛むときは、抱き枕などを使い、痛むほうの肩を上にして寝るのがおすすめ。

 

拘縮期

「強い炎症が収まり痛みがやわらいでくると、今度は腕が上がらない、背中側に腕が回らないなど、肩関節がかたくなって可動域が制限されるようになります。このあたりからはリハビリテーションをしていきます。まだ直接腕を動かすのではなく、少しずつ胸や骨盤まわりなどの筋肉を動かしていきます。整形外科クリニックが併設している理学療法施設などでのリハビリテーションに加えて、家でも無理のない範囲で行いましょう。

 

また、拘縮期が長引くと関節の中の組織が張りついて、いわゆる癒着するといった頑固な拘縮状態になることがあります。そのようなときは、サイレント・マニュレーション(徒手的授動術)という、以前は入院しないとできなかった治療法が、最近では私のクリニックのように、外来でも行えるところが増えています」

 

回復期

「痛みが改善したら、それからは積極的に腕や体を動かしていきます。『痛みがなくなったからもういいや…』とか『痛みの記憶で動かすのが怖い…』と、体を動かさないでいると、また同じ腕を、もしくは反対の腕にぶり返す原因になるので注意が必要です」

 

 

回復期におすすめ! 骨盤と胸椎の柔軟性を高めるストレッチ

 

腰や骨盤を安定させるのと同時に、胸椎の柔軟性を引き出し、丸まった猫背の不良姿勢を改善しながら肩甲骨の動きを回復させ、四十肩・五十肩の再発を予防します。

 

第3回の「肩こり解消の背中を丸めて反らすストレッチ」もプラスすると、さらに効果的です。

四十肩 解消ストレッチ01

① あお向けになり、膝を立てて、両膝・両足の間にこぶしひとつ分のスペースをあけます。手のひらを下にして床に置き、息を吸って準備します。

 

四十肩 解消ストレッチ02

② 息を吐きながら、体を少し左にひねって背骨の左側を意識します。背骨を下のほうから順番に床からゆっくりと離していきます。

 

 

③ 肩甲骨のあたりまで上体を上げたら、ここで息を吸いながら、空中で左に傾けた上体を元に戻し、胸から膝が真っすぐになるようにします。

 

四十肩 解消ストレッチ03

④ 続いて、体を少し右にひねり、息を吐きながら、ゆっくり背骨の右側を上のほうから順番に床につけていき、①の姿勢に戻ります。
同様に逆側の動き(体を右にひねる→空中でひねりを戻す→左にひねる→元に戻す)も行います。これを左右数回行います。

 

生活の中でこの動きに注意!

四十肩・五十肩 日常の動作で気をつけること 

猫背&カメ首(首が前に出た姿勢)のまま、腕を上げないこと。猫背&カメ首で肩甲骨が左右に広がった状態では、腕の可動域が制限されます。それなのに、無理に動かすと肩関節に過剰な負担がかかります。これを繰り返すことで、四十肩・五十肩の痛みの引き金になることもあります。

 

背すじと首を伸ばして、体をニュートラルポジションにしてから動くように心がけましょう。

 

 

【教えていただいた方】

武田淳也
武田淳也さん
医師、米国国家認定ピラティス教師
公式サイトを見る
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「整形外科 スポーツ・栄養クリニック」(福岡、東京・代官山)理事長。日本で初めて医療にピラティスを取り入れ、独自の「カラダ取説」プログラムの普及に尽力

 

イラスト/内藤しなこ かくたりかこ 構成・文/山村浩子

 

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