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虫歯のリスクは糖質だけじゃない。酸性の食べ物にも要注意!

子どもの頃から虫歯に悩まされている人は必読! そもそも虫歯がどうやってできるのか? 実はこんな飲食物や食習慣が虫歯の原因に! これ以上、虫歯をつくらないための秘訣を、歯科医で歯学博士、厚生労働省歯科医師臨床研修指導医を務める、照山裕子先生にお話を伺いました。

虫歯の原因はバイオフィルム!

虫歯ってどうやってできるか知っていますか? そのメカニズムは、私たちが小さい頃に教わった印象と少し違います。

 

「口の中に食べカスが残ると、そこから細菌が増殖します。その細菌同士が結びついて、バイオフィルムという形になり簡単に取れなくなります。以前は歯についたぬめりのことを歯垢(しこう)、もしくはプラークと呼んでいましたが、最近では、歯だけでなく歯茎の表面や舌の上など、さまざまな部位に発生するぬめりのことをバイオフィルムと呼んでいます。

 

これはいわば菌でできた繭(まゆ)のような、細菌のかたまりです。それが虫歯菌であるミュータンス菌が多ければ虫歯になり、歯周病菌が多ければ歯周病になります。

 

虫歯菌であるミュータンス菌は乳歯が生える頃から定着します。これらの菌たちは、おもに私たちが食べた糖をエサにして酸をつくり出し、それが歯のエナメル質を溶かして(脱灰)、歯に穴を開けます。これが虫歯(う蝕)です。

 

ミュータンス菌は酸素のある環境を好むので、歯の表面で増殖して歯を溶かします。特にエナメル質が弱い子どもの虫歯は、歯の上部から穴があきます。放置すると、その穴はどんどん大きくなり、象牙質、歯髄(歯の神経)へと侵食して、やがて歯を失うことになります」(照山裕子先生)

 

それではその段階を見ていきましょう。

 

CO(シーオー)

歯の表面からカルシウムなどが少し溶け始めた脱灰した状態。虫歯の前兆です。
治療法/高濃度フッ化物で再石灰化を促し、歯磨きなどを徹底して、経過観察になります。

C1

エナメル質が溶け始めて、灰色や薄茶色の穴や溝ができている状態です。まだ痛みはありません。
治療法/症状がある場合は詰め物をし、高濃度フッ化物で再石灰化を促し経過観察。

 

C2

穴が象牙質まで進んだ状態です。冷たいものや甘いものがしみたり、痛みを感じ始めます。
治療法/基本的には詰め物で対応しますが、場合によってはかぶせ物をすることも。

 

C3 Pul

歯髄まで到達し歯髄炎を起こし、強い痛みを感じます。
治療法/歯髄(歯の神経)を取り除き、土台を立てて補強して、かぶせ物をします。

 

C3 Per

根尖性歯周組織炎を起こして、強い痛みと、歯の根の先端付近が腫れることもあります。
治療法/感染した歯髄(歯の神経)を取り除き、土台を立てて補強して、かぶせ物をします。

 

C4

歯の上部のほとんどが虫歯により崩れ、歯根だけが残った状態。
治療法/歯が残せる場合はC3と同じ治療法になりますが、難しい場合は抜歯になります。

 

これが歯の上部から起こる虫歯の進行具合とその治療法ですが、大人の場合、少し違う問題が起きてくる…と照山先生。

 

「大人になるとエナメル質が成熟して硬くなるので、上部からよりも、歯と歯の間にできる隙間虫歯や歯と歯茎の間にできる根元虫歯、詰め物やかぶせ物の変形によりできた隙間から、汚れが中に入り込んでできる虫歯の再発(二次う蝕)など、歯磨きが行き届かない部分に虫歯が好発します」

 

 

隙間虫歯

歯の間の虫歯

 

歯と歯の間で、歯ブラシが届きにくい場所に虫歯ができます。

 

根元虫歯(根面う蝕)

歯と歯茎の間の虫歯

 

 

加齢や歯周病で歯茎が下がったところにできる虫歯です。すぐに象牙質に到達して、進行しやすいのが特徴です。

 

虫歯の再発(二次う蝕)

歯の上の虫歯

 

以前に治療した詰め物やかぶせ物の隙間から虫歯が起こります。特に保険診療内の素材は汚れがつきやすく、変形が起きやすいので要注意。早期に発見するためには、定期的な歯科でのチェックが大切です。

 

 

糖質だけでなく、酸性の食品や食べ方も工夫して!

では、虫歯にならないためには、毎日の歯磨きによるセルフケアに加えて、どんなことに気をつければいいのでしょうか?

 

「大切なのは、虫歯菌のエサになる糖質が口の中に長くとどまっている状態を避けることです。糖質が長くあると、それだけ酸がつくられる時間も長くなるからです。

 

糖質とは、甘い菓子やケーキだけではありません。果物でも、天然のはちみつでも、甘くないせんべい、白飯、パスタ、うどん、パンといった炭水化物、甘いジュースやドリンク類でも同じです。

 

甘い菓子類やドリンクはできるだけ避けることに加え、炭水化物は私たちの健康維持のための大切な栄養素ですが、隙間に詰まることのないよう、食後すぐにケアをしましょう。

 

特に気をつけたいのは、常に口の中に食べ物や飲み物があるようなダラダラ食いや飲酒、また寝る前の間食です」

 

また、それだけでなく「酢や柑橘系のものなどの酸にも注意が必要」だと、照山先生。

 

「最近、よく見かけるのは酸蝕歯(さんしょくし)です。酸性の食品や飲料を頻繁に摂取すると、その酸によってエナメル質が溶けてしまうものです。歯がしみる知覚過敏があったら要注意!」

 

 

 

データ/歯界展望:124.4.201-10より数値引用(栄養ドリンク、ビール、レトルト味噌汁、コーヒー、ペット緑茶、ミネラルウォーターは複数の商品で調査した数値)

 

「特に糖質入りの炭酸飲料は、ダブルでの危険因子なので避けたいところ。炭酸飲料やスポーツドリンク、甘いコーヒー、お酢や柑橘系の飲料をダラダラと飲む習慣がある人は注意が必要です。

 

酸に触れても、30分くらいすると唾液によって中和されます。問題は長時間ずっと口の中にある状態なので、それらを飲む場合は、エナメル質に触れないようにストローを使ったり、飲んだあと、すぐに水で口をゆすぐといいでしょう」

 

 

ハードタイプのチーズは虫歯予防になる!

「チーズ(特にハードタイプ)はシュガーレスガムと同様に、虫歯予防に効果があります。食後にゆっくりハードタイプのチーズをかじると、カルシウムやリンなどのミネラル成分が唾液中にとどまり、歯の再石灰化を促してくれます」

 

 

いかがでしたか? 知っているようで勘違いしていることも多い虫歯のお話。少しでも予防する生活習慣を身につけたいものです。

 

 

【教えていただいた方】

照山裕子
照山裕子さん
歯科医
公式サイトを見る
Instagram

歯学博士、厚生労働省歯科医師臨床研修指導医、東京医科歯科大学非常勤講師。口腔ケアに関心を持ってもらいたいと刊行した著書『歯科医が考案 毒出しうがい』(アスコム)がベストセラーに。近著に『新しい「歯」のトリセツ』(日経BP)がある。 照山裕子『新しい歯のトリセツ』 書影

 

 

イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子

 

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