大腸がんについて知っておきたいことQ&A
Q. 大腸ポリープって何ですか? いずれがんになるものですか?
A. 5㎜を超えたポリープは発見したその場で切除します
大腸ポリープは、大腸の壁の粘膜層にできたものの総称。いくつか種類があります。大腸壁の粘膜にできたポリープは、徐々に大きくなっていきます。なかでも、「腺腫性ポリープ」と「鋸歯状(きょしじょう)腺腫性ポリープ」は、増大したりがん化したりする可能性があります。
●大腸にできるポリープの種類はいろいろ
「腺腫性ポリープ」と「鋸歯状腺腫性ポリープ」は腫瘍性ポリープとして治療(切除)します。切除の目安は、腺腫性ポリープが5㎜以上、鋸歯状腺腫性ポリープなら10~20㎜以上です。これらは良性のポリープですが、下図のように、大きくなるとがん化するリスクが高まります。
●良性のポリープががん化するリスク
どのポリープががん化していくかは、大腸内視鏡検査で見てもわからないので、5㎜を超えたポリープがあれば、検査時にその場で切除したり、後日切除をすすめられたりします。
Q. 大腸がんはどこに、どうできて、どう進行する?
A. 粘膜内にとどまっていれば早期。この段階で見つけたい
大腸の粘膜から発生したがんは、進行するとともに、大腸壁の粘膜層、さらに筋層と、深部に進展していきます。一般的には粘膜や粘膜下層にとどまるがんを「早期大腸がん」、それより深い筋層に達していると「進行大腸がん」といいます。腫瘍が粘膜下層より深く広がっている場合は、リンパ管や血管を介してリンパ節や大腸以外の離れた臓器(肝臓、肺、腹膜など)に転移することがあります。
大腸がんの広がり、進行度はステージ(病期)で表されます。下は大腸がんのステージを簡潔にまとめたもの。ステージは壁深達度(へきしんたつど)(T因子)、リンパ節転移(N因子)、遠隔転移(M因子)の3つの因子を組み合わせて決定されます。壁深達度は内視鏡検査やCT、MRI検査で判定され、リンパ節転移や遠隔転移はCT、MRI、超音波検査、PET検査で判定されます。大腸でがんができやすい部位は、直腸が29%と最も多く、次にS状結腸26%と続きます。
進行度を表す5段階ステージ(病期)
●ステージ0
がんが大腸粘膜内にとどまるもの
●ステージⅠ
がんが筋肉の層までにとどまるもの
●ステージⅡ
がんが筋肉の層を越えて浸潤する
●ステージⅢ
がんの深さにかかわらず、リンパ節への転移を認めるもの
●ステージⅣ
がんの深さやリンパ節転移にかかわらず、他臓器への転移を認めるもの
大腸がんのステージは0からⅣまでの5段階で表記されます。ステージは、がんの壁深達度、リンパ節転移、遠隔転移の3つの因子を組み合わせて決定されます
Q. 大腸がんはどのように治療するの?
A. 早期なら内視鏡治療ができ、すべて取り切ることが可能です!
がんが粘膜下層の浅い部分にとどまっているステージ0~Ⅰの場合は、内視鏡治療が可能です。一方、粘膜下層の深くに達したり、リンパ節転移がある場合は外科手術が必要に。ステージⅢ~Ⅳのリンパ節やほかの臓器への転移がある場合は外科手術、もしくは抗がん剤治療が選択肢に。大腸がんは、手術で取り切れれば命を落とさなくてすむがんです。近年は抗がん剤治療も進歩し、最初はすべて取り切る手術が困難でも、抗がん剤でがんを小さくして取り切れるケースも増えています。
●大腸がんの治療法はステージによって変わる
Q. ストーマ(人工肛門)ってどんなもの? どんな場合に、つけるの?
A. がんの下縁が肛門に近い場合、内視鏡治療ができない直腸がんにつけます
人工肛門とは、手術でお腹の壁から腸管の一部を出し、開いて固定したものです。自分の意思で排泄コントロールができないので、専用の袋を取りつけて排泄物を受け止め、たまったらトイレに流します。人工肛門が必要なのは、直腸がんの中でもがんの下縁が肛門近くにできたがんで、手術が必要と判断された場合です。
東邦大学医学部卒業。昭和大学藤が丘病院消化器内科、がん研有明病院内視鏡診療部医長を経て現職。日本消化器病学会専門医、指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、指導医ほか
イラスト/カツヤマケイコ 構成・原文/増田美加