【教えていただいた方】
東京女子医科大学卒業。医療法人 淳信会 ホリスティキュア メディカルクリニック院長。米国コロラド州NTI認定栄養コンサルタント。米国PHYTOMEDIC LABS認定栄養&酵素セラピスト。産業医。 2014年、米国ベストドクターズ社日本支部から「医師が自分自身や家族が病気になった場合受診したいベストの医師」として、Best Doctors in Japanに選出される。
♦食べ物は「消化・吸収」されて初めて「栄養」になる
私たちの体は「命の生産工場」です。
その工場を潤滑に稼働させるために必要なことはいろいろありますが、そのひとつが「消化・吸収」です。
私たちは毎日食事をしていますが、ここで大切なのが、食物はきちんと消化・吸収されて初めて「栄養」になるということです。
(イメージphoto/Nate Johnston on Unsplash)
どんなに栄養のあるものをとったとしても、それがきちんと分解・吸収され、必要な場所に運ばれなければ、無駄になってしまいます。
食べ物はまず、口の中で嚙み砕かれ、唾液に含まれる「アミラーゼ」と呼ばれる炭水化物を分解する消化酵素と混ざり合います。
きちんと食べ物を消化する第一歩は、「早食いをせず、食べ物をよく嚙むこと」から始まります。
次に、食べ物は食道を通って胃に運ばれ、「ペプシン」と呼ばれる酵素で、タンパク質が分解されます。
ペプシンは、酸性の環境でしか働けないため、胃液は強い酸性です。胃酸の濃度や酸性度が弱まるとタンパク質がうまく消化できなくなってしまいます。
これが、肉などを多く食べたときの胃もたれの原因。加齢に伴って胃酸の分泌が少なくなってくるからです。
こうした症状を改善する方法として、レモン水(浄水、またはミネラルウォーター150~200mlに対し、レモン4分の1個程度の搾り汁を加える)を、食事のときに飲むのがおすすめです。
胃酸の分泌を促し、ペプシンを働かせ、タンパク質の消化・吸収を高めます。
♦必要なミネラルを吸収し、有害ミネラルを排出するカギは腸!
良好な消化・吸収を行うために重要なのが腸内環境。腸内には約1000種類、およそ100兆個の腸内細菌が存在します。
腸内環境を健全に保つためには、腸内細菌の総数が多いこと、種類が多いこと、なかでも腸によい働きをする善玉菌を増やすことが大切です。
腸内環境を整える方法としては大きく分けてふたつの方法があります。
ひとつはプロバイオティクス。
体によい作用をもたらす微生物を摂取する方法です。
例えば、LB81乳酸菌、乳酸菌シロタ株、R-1乳酸菌、LG21乳酸菌、ガゼリ菌SP株、ラブレ菌など。
ヨーグルトや漬物のパッケージには、これらの菌を含むことが表示されたものがあるので、チェックしてみましょう。
またもうひとつの方法がプレバイオティクス。
腸内の善玉菌のエサとなって、その数を増やしてくれるものを摂取するという方法です。
水溶性食物繊維、オリゴ糖、レジスタントスターチなどを含む食べ物をとるとよいでしょう。
<水溶性食物繊維を含む食品>
大麦、もずく・めかぶなどの海藻類、オクラ、なめこ、玉ねぎ、グリーンアスパラガス、柑橘類など
<オリゴ糖を含む食品>
てんさい、玉ねぎ、にんにく、ごぼう、バナナ、はちみつ、大豆・大豆製品など
<レジスタントスターチを含む食品>
冷えた炭水化物(おにぎり、ポテトサラダ、かぼちゃサラダ、枝豆)、未精製穀物(玄米、ライ麦、そば)など
腸内環境を整えると、体に必要なミネラルをきちんと吸収できるようになり、さらには、有害なミネラルもデトックスしやすくなります。
アルコールの飲みすぎや揚げ物の食べすぎ、過食、早食いは消化・吸収の負担となり腸内環境を乱す原因となります。
また野菜不足も食物繊維不足につながるので気をつけましょう。
♦サプリメントを有効に活用しましょう
ミネラルを摂取するのにいちばんよい方法は、やはり食物から摂取することです。
なぜなら、食事からであればほとんどの場合、「過剰摂取で健康を害する」ということにはならないからです。
とはいっても、食事だけでは推奨量がとれない場合もあります。そのようなときは、おおいにサプリメントの力を借りましょう。
そこで、サプリメントを飲むときに最も気をつけなくてはならないのが、自己判断であれもこれもと多種類のサプリメントをとらないようにすること。
ミネラルはお互いの機能をサポートし合って働くため、サプリメントを作るメーカーは、1粒にいろいろなミネラルを複数組み合わせて、働きをよくしていることが多いものです。
しかし、いろいろなサプリメントからよさそうだと思うものを、自己判断で何種類も組み合わせて飲んでしまうと、結果的に重複して摂取するミネラルも出てきて、思わぬミネラルを過剰摂取しているということが起こります。そしてそれが、逆に体調をくずす原因になることもあります。
できれば、栄養療法を行っている医療機関で、自分に合ったサプリメントを選んでもらうことをおすすめします。
また、自分で選ぶ場合は、サプリメントに記載されている成分と量をチェックすることが大切です。
また、サプリメントを選ぶ際には、「有機ミネラル」を選ぶとよいでしょう。
「有機ミネラル」はおもに、野菜、果物、海藻、穀物、肉、魚、卵など、食品に含まれており、アミノ酸とくっついているミネラル。
人間にとってよい働きをするミネラルで、吸収されやすいというのが特徴です。一方、「無機ミネラル」は、食べ物以外に含まれている金属。体内に入ってもあまり吸収されません。
例えば、亜鉛の項目でただ「亜鉛」とだけ書かれているものは無機ミネラル。
「亜鉛含有酵母」「牡蠣エキス」などと書かれているものが有機ミネラルです。
有機ミネラルのサプリメントは無機ミネラルを使ったものより値段は高めになりますが、無機ミネラルが吸収されにくいことを考えれば、吸収のよい有機ミネラルのほうが逆に経済的です。
♦いろいろな食材でバランスよくミネラル摂取
最後に、何度も繰り返して申し上げてきたことになりますが、体内のミネラルは、お互いの働きをサポートし合って、チームで働く栄養素です。
どれかひとつだけを大量にとったからといって、不調を改善できるというものではありません。あくまでも「バランスよく」が大切です。
そして、体内のミネラルバランスを整えるために大切なのは何といっても日々の食生活。
食の偏りをなくし、さまざまな食品を多種類食べるようにしましょう。
「肉だけで野菜を食べない」あるいは「植物性食品だけ」「糖質過多」「極度な糖質制限」といった、偏った食事は避けたほうがよいでしょう。
また、インスタント食品など手軽に食べられるものばかりを食べていると、ミネラル不足に陥りやすくなります。
砂糖のとりすぎにも注意。
砂糖は体内で分解・吸収されるときにミネラルを多く消費します。
特に甘い飲み物は、知らず知らずのうちに砂糖をたくさんとってしまいますので避けるようにしましょう。
飲み物は、ミネラルが豊富に含まれている天然水や海洋深層水がおすすめです。
忙しくてなかなか料理をする時間がないという方も多いことでしょう。でも、そんなに頑張って「料理を作ろう!」としなくても大丈夫です。「毎日サラダを作ろう」とするのはちょっと大変、ということであれば、トマトを1日1個、切って食べる、キュウリの丸かじりなどまずはできるところからスタートしてみましょう!
まずは毎日の自分の生活の中で、無理なくできることから始めてみること。
その積み重ねがミネラルバランスの整った、健康的で生き生きとした体づくりにつながります。
取材・文/瀬戸由美子