正しい歯磨き方法 ○ or ×
Q:歯磨きは朝、昼、夜の1日3回行うのが必須である。
A:△ 夜に重点を置き、1日1回徹底的に汚れを落とすことが大切。
「歯磨きの目的は食べかすを取り除くことです。そのままにすると、約4~12時間で菌の巣窟であるバイオフィルム(菌の塊)が形成され、歯垢になります。時間とともにバイオフィルムの厚みが増し、やがて唾液中のミネラル成分と混ざり合って歯石になっていきます。こうなると自力では取り除けません。
バイオフィルムが病原性を持つ前に汚れを落とすことが重要なので、『毎食後の歯磨き』を提唱していた時代もあります。しかしながら、いい加減に漫然と1日3回磨いてもまったく意味がありません。1日に1回でもよいので、徹底的に汚れを落とすことが重要視されています。フロスや歯間ブラシを併用し、隅々まで丁寧に落とすこと。次の日に汚れを持ち越さない心がけです。
もちろん時間に余裕がある方は昼食後に磨いてもOKですが、昼はスキップしても、夜にしっかり磨けば挽回できる…という考えです。夜の歯磨きに重点を置いたメリハリケアが推奨されています」(照山裕子先生)
Q:歯磨きはシャカシャカとした音を立ててしっかり磨く!
A:× 正しい磨き方なら音はほとんどしないはずです。
「歯磨きは歯ブラシを歯と歯の間、歯と歯茎の間に軽く押し当てて、2~3㎜くらい小刻みに動かすのが基本です。持ち方は鉛筆を持つのと同じペンシルグリップで。力が入りすぎないようにして、1本ずつ磨くような気持ちで行います。
こうした正しい歯磨きをしている場合は、小刻みに動かす、コチョコチョと自分だけに聞こえる程度の小さな音です。シャカシャカと人にも聞こえるような大きな音がするのは力の入りすぎですし、目的とする場所が磨けていない可能性が高いです」
歯ブラシの当て方は場所に応じて変えましょう!
「歯磨きは歯の場所に応じて、歯ブラシの「つま先」や「かかと」など使う部分を工夫します。当てる角度を変えて、歯と歯の間、歯と歯茎の間、凹凸が強い部分や奥歯の裏側までしっかり磨きましょう」
歯と歯茎の間は45度の角度で!
「歯と歯茎の境目のところには、歯ブラシを45度に傾けて当て、毛先が歯周ポケットの内側に届くようにします」
奥歯はつま先を使って
「奥歯を磨くときは、歯ブラシのつま先(先端)部分を使って、歯の側面に沿って後ろ側まで回り込むようにして磨きます。口を閉じて磨くと歯の裏側まで届きやすくなります」
下前歯の裏側はかかとを使って
下前歯の裏側を磨くときは、かかと(グリップに近い)部分を使うと磨きやすいでしょう。
凸凹部分や歯の裏は縦にして
「八重歯など歯並びがそろっていない部分や、上の前歯の裏を磨くときは、歯ブラシを縦に持ち、歯ブラシの脇を使って歯の凹凸に沿わせるようにして磨きます」
Q:歯磨剤は使わないか少量のほうがいい。
A:× 機能成分は有効に使うべきです。
「以前は口の中が泡だらけになってしまい、磨けていないのに磨いた気分になるから歯磨剤はなくてもいいという考えがありました。しかし、最近の歯磨剤には、虫歯予防や歯周病予防に役立つフッ化物や殺菌成分といった成分をはじめ、疾病予防に役立つ効果が十分に含まれているので、賢く活用しましょう。量は一般的には1~2㎝くらいが目安ですが、製品によって異なるので用法・用量をよく守ってください」
Q:フロスや歯間ブラシは歯磨きの前に行う。
A:〇 前のほうが汚れがよく落ち、フッ化物も残りやすい。
「歯ブラシだけでは汚れは6~7割しか落とせないといわれています。それをサポートしてくれるのがデンタルフロスや歯間ブラシの併用です。最近では使用率も高くなっているようで、よく聞かれるのが、それらは歯磨きの前にするべきか? 後がいいのか? ということです。答えは前がベストです。
厳密には前でも後でも、使うことに意義があります。でもせっかく使うなら、前のほうがケアの効率がよいというデータが出ているのです」
歯学部の学生25人が、「フロス→歯ブラシ群」と「歯ブラシ→フロス群」に分けて実験を行いました。すると、フロスが先のほうが、歯間部と全体の歯垢が有意に減少し、歯磨剤に入っているフッ化物濃度が高かったという結果に。
データ/Periodontol.2018,jul:89(7):824-832
Q:歯磨き後はしっかりゆすいだほうがいい。
A:× フッ化物を残すなら、ゆすぎは1回!
「特に虫歯予防に役立つフッ化物配合の歯磨剤を使っている場合は、ゆすぎすぎてしまうと、その効果が薄れてしまいます。その場合はしっかりと1回ゆすぐのがいいでしょう。軽く1回ではなく、隅々の汚れが残らないようにしっかりゆすぐことが大切です。
最近の私のおすすめは、ダブルブラッシング法です。これは1回目の歯磨きでは、歯磨剤なしか好みの歯磨剤で隅々までしっかり磨き、数回ゆすぎます。2回目はフッ化物配合の歯磨剤を使用して、歯ブラシで歯全体にのばすように軽く磨き、30㎖くらいの少量の水で1回しっかりとゆすぎます。
歯ブラシでこそげ落とした汚れも完璧に吐き出し、なおかつ目的の部分にフッ化物をとどまらせることもできるので、パーフェクトなケアになります」
【教えていただいた方】
イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子