嚙む力、舌圧、唾液、飲み込む力の4つの低下に要注意!
オーラルフレイルという言葉を知っていますか? 英語でオーラルは「口」、フレイルは「虚弱」を意味します。つまり、口の機能が低下している状態のことをいいます。
「例えば、食事のときにむせることが多くなった、硬いものが食べにくくなった、滑舌が悪くなった…といったことから口の機能は低下していき、やがて自分の口から飲食ができなくなることがあります。オーラルフレイルを発症している人はそうでない人に比べて、健康寿命が短く、要介護になるリスクが高くなるという調査結果が報告されています」(照山裕子先生)
あなたは大丈夫? オーラルフレイルチェック!
日本歯科医師会が発表しているチェックリストです。思い当たるものの点数を合計してください。
合計の点数でチェック!
0~2点 オーラルフレイルの危険性は低い
3点 オーラルフレイルの危険性あり
4点 オーラルフレイルの危険性が高い
*出典/東京大学高齢社会総合研究機構・田中友規、飯島勝矢
オーラルフレイルは60代後半以降に顕著になりますが、実は早い人では40代後半頃から兆候が出てきます。つまり早めの予防が必要。特に気をつけたいのが4つの機能の低下だといいます。
「食べるという機能はよく餅つきにたとえられます。口の中は臼、歯は杵、嚙む力はつき手の筋力、餅を返す人は舌、打ち水は唾液になぞらえます。もちろん杵である歯が健康であることは欠かせませんが、ほかの力も加わらないと餅にはなりません。また、でき上がった餅を飲み込む力も必要です。
これらを考えると、嚙む力、舌圧、唾液量、飲み込む力の4つがそろっていることが、健康に食べるという機能を果たす条件になります」
① 嚙む力(咀嚼力/そしゃくりょく)
咀嚼は歯、あご、口のまわりの筋肉の連携プレーで行われます。その力が落ちる原因は、杵である歯が痛む、揺れる、あるいは欠損すること。それに付随して食べ物を嚙み砕く筋肉が弱ることが挙げられます。どれかひとつ欠けても、しっかり餅をつくことができません。
② 舌圧
舌は味覚を感じる器官でもありますが、嚙んだ食品をまとめて塊にし、飲み込むのにも欠かせません。巧みに餅を返す人がいるからこそ、まんべんなく餅をつくことができるのです。舌も筋肉なので、年齢とともにその力は低下します。
③ 唾液
唾液はおもに口のまわりにある3つの唾液腺から分泌されます。1日の平均の唾液量は1.5㎖ですが、年齢とともに減っていきます。唾液量が減ると、なめらかな餅になりません。また、スムーズに物を飲み込みにくくなります。唾液には消化を助ける働きに加え、自浄作用もあり、虫歯や歯周病の予防など口腔内の健康維持にもひと役買っています。
④ 飲み込む力(嚥下/えんげ)
食べ物や飲み物を食道に送る嚥下という作業には、喉まわりの筋肉が使われます。この筋肉が衰えると、食道にきちんと送れず、気管に入って誤嚥を起こしやすくなります。これが誤嚥性肺炎の大きな原因です。
オーラルフレイル予防には「高速ブクブクうがい」が効く
この4つの機能の低下を防ぐのに、どんなことをしたらいいのでしょうか?
「最も簡単で効果的なのが高速ブクブクうがいです。30㎖ほどの少量の水を口に含み、口の前、上、下、左右でブクブクとうがいをします。簡単なことのようですが、これにより口輪筋や舌筋など、口まわりの筋肉をまんべんなく効率よく鍛えることができます。最低7秒間に10回を目安に高速で行うのがポイントです。水の代わりに、目的に応じた洗口液を使ってもかまいません」
【入門編】
30㎖ほどの水を口に含み口を閉じます。どんな方向でもよいので、ブクブクと音が出るようにうがいしてください。できるだけ速く強く動かすことがポイントです。
【実践編】
①同量の水を口に含み、上の前歯に向かって水を強くぶつけるように、口をブクブクと素早く10回動かして、水を吐き出します。
②同じように水を含み、今度は下の前歯に向かって水を強くぶつけるようにして、口をブクブクと素早く10回動かして、水を吐き出します。
③ 含んだ水を左の奥歯に水を強くぶつけるように、口をブクブクと素早く10回動かして、水を吐き出します。最後に右の奥歯も同様に。
「これは、起床時、毎回の歯磨きのあとはもちろん、飲食後すぐに行うのがおすすめです。これを日々の習慣にするだけで、口の中がきれいになるだけでなく、オーラルフレイルの予防にも役立ちます」
【教えていただいた方】
イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子