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認知症は早く対処すれば、症状の進行を遅らせることができる!各段階の主な症状も解説

もしも家族が、自分が、認知症かもしれないとなったら、あなたはどうしますか? 年齢を重ねれば、誰でも発症する可能性のある認知症。病気のことを正しく知って、どのように寄り添っていったらいいのか? 認知症専門医、「メモリーケアクリニック湘南」院長の内門大丈先生に伺いました。

早い段階で気づいて対処すれば、進行を最小限にできる

「アルツハイマー型認知症(以下、認知症)は脳にアミロイドβやリン酸化タウなどのプラークがたまることで発症します。その症状は段階を経て進行していきます」(内門大丈先生)

認知症2回 イメージ1

 

最近の考えでは、まずはSCD(主観的認知機能低下)という症状から始まります。

 

「例えば、健常の人の場合でも年齢を重ねれば、誰でももの忘れをすることが増えていきます。しかし、日常生活には支障はありません。ところが、SCD(主観的認知機能低下)の場合は、もの忘れの自覚があり、まわりの人は気づいていないけれど、仕事や家事などに少し支障が出始めたことを自分では気づいているという状態です」

 

特に親や兄弟姉妹などに認知症の人がいると、もしや自分も?と不安になりますよね。

 

「次に進むとMCI(軽度認知障害)という段階になります。これはもの忘れの自覚があり、家族や周囲もうすうす気づき始めます。これには、もの忘れが多い健忘型と、それ以外の症状(思考力や判断力が低下して、物事の計画・遂行ができないなど)がある非健忘型があります。

 

認知症2回 サムネ

 

 

特に健忘型の場合は、そこからアルツハイマー型認知症に移行することが多く、非健忘型では前頭側頭型認知症やレビー小体型認知症に移行することがあります」

 

前頭側頭型認知症は前頭葉や側頭葉が萎縮するもので、50~60歳に好発し、攻撃的な性格になるのが特徴。

レビー小体型認知症はレビー小体というタンパク質が蓄積され、海馬や側頭葉が萎縮して、後頭葉の血流が低下します。60~70歳に好発し、幻覚などが特徴的です。

 

「しかしながら、生活習慣を改めるなどすると、SCDやMCIの段階なら健常に戻ることができます。この段階で早く対処することが大切なのです」

 

 

今の状況を把握することが第一!

その後は認知機能が低下することで、さまざまな症状が出始め、「認知症」と診断されると、軽度の認知症中等度重度と進行していきます。

 

各段階のおもな症状

軽度/本人よりも家族やまわりの人が異常に気づきます。言葉や名前を思い出せない、時間や場所がわからなくなる、最近のことが覚えられない、物事をやり通すことができない…などの症状が。

 

中等度/日常生活がうまく送れなくなります。例えば、計算ができず一人で買い物ができない、作り話をする、なんの目的で出かけたのか忘れる、季節に合った服を選べない…など。

 

重度/介護が必要になります。衣服の着脱が一人でできない、食事やトイレに介助が必要になる、会話が成立しない、身近な人の顔がわからなくなる…など。

 

「この状態になると、以前のように戻ることはできませんが、周囲の対応、状況を整えるなどで、進行を穏やかにすることはできます」

 

 

「旅行に行って困難なこと」を知るのもおすすめ

認知症の進行度を知っておくと、対処する方法もわかってきます。それには1泊2日の温泉旅行などに行くといい、と内門先生。いつもと違う場所に出向くと、そこでできることとできないことがわかってくると言います。

 

チェック項目

■出発前に自分の荷物が準備できる?

旅行の日程や行き方を正しく理解しているか?

季節や行く先に合わせた服を準備できるか?

用意したものをバッグに入れられるか?

 

■移動がスムーズにできる?

目的地を把握して、移動の方法や行程を理解しているか?

家からの歩行や乗り物への乗降が一人でできるか?

電車やバスなどの交通機関が利用できるか?

 

■宿での行動が普通にできる?

靴や衣服の着替えが自分でできるか?

湯を沸かして自分でお茶を入れられるか?

テレビやエアコンの操作ができるか?

トイレを正しく把握して利用できるか?

 

■入浴は一人でできる?

体や髪を一人で洗って、湯船につかることができるか?

自分で判断して、湯船から上がることができるか?

体を拭いて、衣服を着ることができるか?

 

■自分がいる今の環境を理解している?

自分の部屋の場所を覚えているか?

室内の位置関係を記憶しているか?

自分が今どこにいるのか理解しているか?

 

■食事や服薬を自分でできる?

食事の時間や場所を理解しているか?

一人でこぼさずに食べることができるか?

薬を自分で服用できるか?

食事や服薬したことを覚えているか?

 

■電話の相手がわかる?

電話での対応がスムーズにできるか?

電話の相手が誰なのかわかっているか?

電話で話した内容を覚えているか?

 

■ぐっすり眠れている?

スムーズに寝つけているか?

途中に何度も起きたり、早朝に起きたりしないか?

大きな寝言を言ったり、寝ぼけたりしないか?

 

■買い物が一人でできる?

目的の物を買えるか?

適切に支払うことができるか?

現金の場合、金額に合わせて小銭を使うことができるか?

 

■心地よく過ごしている?

不安になったり、パニックになったりしていないか?

小さなことで怒り出すことはないか?

一定の場所に落ち着いていられるか?

 

■不可解な言動はないか?

同じ話を繰り返していないか?

話のつじつまが合っているか?

妄想や幻覚についての話題はないか?

 

離れて住んでいる場合はもちろん、同居している場合でも、旅行先での様子を観察すると、できることとできないことが顕著にわかってきます。

 

「家族や自分の認知度の低下の具合を知るのは、ちょっと怖いと感じるかもしれませんが、まずは知ることから! そこから認知症との取り組みは始まります」

 

 

【教えていただいた方】

内門大丈
内門大丈さん
認知症専門医
公式サイトを見る

(うちかど ひろたけ) 医療法人社団 彰耀会理事長。「メモリーケアクリニック湘南」院長。 横浜市立大学医学部を卒業後、同大大学院博士課程(精神医学専攻)を修了。横浜での病院勤務、「湘南いなほクリニック」院長を経て、2022年より現職。認知症の人の在宅医療を推進し、認知症に関する啓発活動や地域コミュニティの活性化に取り組む。『家族で「軽度の認知症」の進行を少しでも遅らせる本』(大和出版)など著書多数。

 

イラスト/東 千夏 取材・文/山村浩子

 

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