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認知症と診断されたら、どうつき合う? 進行を遅らせる方法とは?

「認知症」と診断されることは本人にとっても、家族にとっても大きなショックです。そんなときは、どのように向き合ったらいいのでしょうか? 認知症専門医、「メモリーケアクリニック湘南」院長の内門大丈先生に伺いました。

認知症への偏見を取り去ることが第一!

(注)以下、特別な注意書きがない場合は認知症=アルツハイマー型認知症とします。

 

最近では認知症の前にSCD(主観的認知機能低下)やMCI(軽度認知障害)という段階があると考えられています。

 

SCD(主観的認知機能低下)とは自分ではもの忘れの自覚があるが、周囲は気づいていない状態。MCI(軽度認知障害)はもの忘れの自覚があり、周囲も気づき始めている状態です。

 

「認知症への社会的な関心が高くなるのに伴い、最近では『もしかして?』と初期の段階で医療機関を受診する人が増えてきました。すると、今はそんなに症状は出ていなくても、今後認知症に移行する可能性が高い…といった診断ができるようになりました。

 

軽い段階で病気が判明するのは、早期治療がしやすくなるのでいいことなのですが、認知症となると本人も周囲も受けるショックが大きいようです」(内門大丈先生)

 

そこには認知症に対する偏見があるのでは? と内門先生は言います。

 

「できていたことができなくなる、変なことを言う、家族の顔もわからなくなる…といった情報から、認知症という診断に対して強い拒絶感を示す人は少なくありません。それは、認知症に対する偏見があるからだと思うのです。偏見は恐怖や不安につながります。

 

大切なのは、まずはその偏見を取り除くことです。

 

人は高血圧です…と言われても、年のせいとしてそれほど拒絶感を感じません。冷静に受け止めて、生活習慣を改善したり薬を飲んだりするでしょう。認知症も脳内にアミロイドβが蓄積した状態なのだと認識して、高血圧と同じように考えて対処したらどうでしょうか?

認知症3回 イメージ1

年をとったら、肝臓、腎臓、心臓もそれなりに機能が低下します。認知症も脳という臓器の衰え、老化現象だと考え、そのうえでどうつき合っていくかを決めていくといいでしょう」

 

本人と家族で認知症プロジェクトを立ち上げる

「残念ながら、生きているものは必ずいずれは死を迎えます。理想は体と脳が同じように衰えていくことです。

 

現代の医学では、認知症を治すことはできませんが、SCDやMCIなら健常の状態に戻すことは可能です。認知症になったら元には戻りませんが、本人と周囲が健康的な生活習慣を身につけて、明るく前向きに生活をすることで、進行を穏やかにすることができます

 

認知症へのアプローチとしては、①リスク因子のない生活をして発症させない、②早期発見して早い段階で治療に取り組む、③できるだけ進行を遅らせる、ことです。

 

では、①~③を実践するには、どのように取り組んだらいいのでしょうか?

 

「当事者と家族がワンチームとなって、『認知症プロジェクト』に取り組むことです。認知症と診断されると、当然、本人は落ち込みます。そこで家族が過剰にがっかりしたり責めるような言動をとると、孤立していきます。すると、本人は忘れていることやできないことを、怒られると思って隠すようになります。

 

一方、家族間の関係が良好だと、自分ができないことや失敗したことを話せます。すると不安が共有できることで、自分一人で背負わずに気持ちがラクになります。まわりも症状を把握しやすくなるので、サポートするべきことが見えてきます。

 

認知症になった困ったお母さん(もしくは、お父さん)” をなんとかするのではなく、“困った症状の認知症”とどうつき合っていくか? と意識を変えてください」

 

 

ほかの身体機能を高めることで、脳の老化も補える!

「認知症は脳の病気ですが、身体的な健康と関連しています。例えば、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、慢性腎不全、睡眠時無呼吸症候群、歯周病があると認知症になりやすく、進行も早くなることがわかっています。これらをきちんと治療することは必須です。

 

また、筋力が低下するサルコペニアや心身が脆弱になるフレイルになると、認知機能が低下します。体はすべての臓器と連動しているので、ほかの臓器をはじめ身体機能を高めることで、認知機能も高まると考えてください」

 

また、アメリカではこんな研究結果があります。

 

「『人生の目的が多い人ほど認知機能が低下しにくい』というものです。目的を持つ人は持たない人に比べて、2.4倍アルツハイマー型認知症になりにくく、認知機能の低下が穏やかになることがわかりました。

 

大げさなものでなくていいのです。少し未来に実現できる程度の目標を立てることが、認知機能の低下を穏やかにするのに役立ちそうです。

 

認知症は治せない病気ではありますが、決して不幸になる病気ではありません認知症になっても、その人の気持ちや人生は今まで通り続いていきます。それを周囲が上手にサポートしていくことが大切になります」

 

 

【教えていただいた方】

内門大丈
内門大丈さん
認知症専門医
公式サイトを見る

(うちかど ひろたけ) 医療法人社団 彰耀会理事長。「メモリーケアクリニック湘南」院長。 横浜市立大学医学部を卒業後、同大大学院博士課程(精神医学専攻)を修了。横浜での病院勤務、「湘南いなほクリニック」院長を経て、2022年より現職。認知症の人の在宅医療を推進し、認知症に関する啓発活動や地域コミュニティの活性化に取り組む。『家族で「軽度の認知症」の進行を少しでも遅らせる本』(大和出版)など著書多数。

 

イラスト/東 千夏 取材・文/山村浩子

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