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楽しい「発声トレーニング」で飲み込む力を鍛えよう!

声を出すときに使う筋肉と、飲み込むときに使う筋肉はほぼ同じ。食べた物が気管に入ってしまう誤嚥を予防するには、声を出して喉を鍛えるのも効果的です。喉筋トレと同じ効果が期待できる発声トレーニングを、耳鼻咽喉科専門医の西山耕一郎先生に教えていただきました。

「しゃべる」「笑う」も喉の老化を防いでいる?

 

喉が老化する原因は加齢だけでなく、喉を使わないことも原因のひとつ。「しゃべる」「笑う」など、人とコミュニケーションをとる機会が減るのも、喉の老化を招きます。実はコロナ明けの一時期、耳鼻咽喉科専門医の西山耕一郎先生のクリニックでは、「最近むせやすくなった」と喉の違和感を訴えて受診する人たちが増えたのだそうです。

 

「コロナ禍に人とコミュニケーションをとる機会が減ったのも、喉を衰えさせた一因ではないでしょうか。日常的に会話しているかどうかは健康寿命にもかかわります。性のほうが長生きなのは、おしゃべりすることが好きで、喉が若い人が多いからかもしれませんね。生涯にわたって“食べる楽しみ”を維持するためにも、嚥下機能を衰えさせないことが大事です」

また、「最近、声がかすれるようになった」「声が出にくい」という場合も、嚥下機能(=飲み込む力)が衰えて、誤嚥しやすくなっている可能性があります。発声と嚥下はほぼ同じ器官を使っていて、息を吸うときには声帯が開き、発声する時は声帯が閉じて振動します。つまり、発声することによって、喉の筋肉が鍛えられるのです。「声が出ない人の治療をしたら、嚥下機能が回復した」というケースも珍しいことではないのだそう。

 

もしも、喉の老化が始まっていたとしても、老化をくい止めることは可能です。喉筋トレーニングや呼吸筋トレーニングとともに、発声トレーニングを行いましょう。

「特に『歌う』のは効果的。喉仏を上下させる飲み込み筋(喉頭拳上筋群)を鍛えることができるうえ、肺活量もアップします。カラオケを楽しんだり、自宅のお風呂につかりながら歌うのも発声トレーニングになりますよ」

 

声を出すのが楽しい♪ドクターおすすめの「発声トレーニング」

 

高い声、低い声を繰り返す「喉仏スクワット」

 

喉仏スクワットは、高音と低音を交互に発声することによって、喉仏を上下に動かすトレーニング。もともとは演劇部などで行われる発声練習をアレンジしたものです。喉仏は高い声を出すと持ち上がり、低い声を出すと下がります。つまり、高音と低音を交互に繰り返し出すことによって、喉仏の周囲筋(喉頭拳上筋群)を鍛えることができるのです。

 

ア(高)→エ(高)→イ(高)→ウ(低)→エ(高)→オ(低)→ア(高)→オ(低)と発声練習します。その際、「ア・エ・イ」は高い声で、「ウ・オ」は低い声で発声します。

誤嚥を防ぐ喉仏スクワット

思い切り低い声を出したあとに、高い声を出すと、喉仏の持ち上がるのがわかるはず。喉仏に手の指を当てて、足腰のスクワットのイメージで、上下運動を感じながら発声練習をしてみましょう。

 

「1分間音読」で、喉と肺の機能をアップ

 

喉仏スクワットの応用編として、文章を音読するのもよい方法です。トレーニング効果を高めるには、はっきりとした大きな声で、抑揚をつけながら音読するのがポイント。

 

滑舌よく発声することで、舌の筋肉や表情筋の筋力アップにも効果があり、顔のたるみケアにもなります。声に出して音読することで、息を吐き出す力を鍛えることができますし、1日1分間音読するだけで「口すぼめ呼吸」と同じ効果が期待できます。新聞のコラムや好きな本の一節、お気に入りの歌の歌詞などを音読するのもよい方法です。

 

「ハイトーン・カラオケ」で喉仏の位置をアップ

 

カラオケは飲み込む力をキープするのに、手軽で有効なトレーニング法です。楽しく歌っているうちに、喉仏を上下させる飲み込み筋が鍛えられ、呼吸機能も強化されるからです。特に高い声を出して歌うと、嚥下機能のカギを握る喉仏がグーッと持ち上がるので、できるだけキーの高いハイトーンな曲にチャレンジしてみましょう。

<高い声を出すのにおすすめの曲はこれ>

 

初級者向け

『少年時代』(井上陽水)
『春よ、こい』(松任谷由実)
『世界に一つだけの花』(SMAP)
『津軽海峡・冬景色』(石川さゆり)

 

中級者向け

『愛のメモリー』(松崎しげる)
『Automatic』(宇多田ヒカル)
『たしかなこと』(小田和正)
『CAN YOU CELEBRATE?』(安室奈美恵)

 

上級者向け

『大都会』(クリスタルキング)
『もののけ姫』(米良美一)
『Forever Love』(X JAPAN)
『さくら』(森山直太朗)

 

【教えていただいた方】

西山耕一郎
西山耕一郎さん
西山耳鼻咽喉科医院院長
公式サイトを見る

医学博士、東海大学医学部客員教授、藤田医科大学医学部客員教授。耳鼻咽喉科頭頸部外科専門医、日本嚥下医学会嚥下相談医、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士。現在は複数の施設で嚥下外来と手術を行うかたわら、教鞭をとりながら、学会発表や医師向けセミナーを行う。著書に『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』(飛鳥新社)、『のどを鍛えて肺炎を防ぐ』(大洋図書)、『誤嚥性肺炎に負けない1回5秒ののどトレ』(宝島社)など多数。

 

イラスト/カツヤマケイコ 取材・文/大石久恵

 

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