Q1
ビタミンDサプリメントは、誰でもとったほうがいいのですか?
もちろんです。これまでお伝えしてきたように、ビタミンDが不足して起こる症状や病気は驚くほどたくさんあります。以前から言われてきた骨粗しょう症やくる病(骨軟化症)のほか、アレルギーや生活習慣病、がんに至るまで、ビタミンDとの関連が明らかになってきました。
ビタミンDは他のビタミンと違い、食べ物からはごくわずかしかとることができません。紫外線によって皮膚でつくられる特別なビタミンゆえ、紫外線を過剰にガードしている日本人は、圧倒的にビタミンD不足。サプリでとらないと、不足している人がとても多いビタミンのナンバーワンだと思います。
栄養に詳しい医師や管理栄養士に「自分自身がひとつだけサプリをとるとしたらどれですか?」という質問を投げかけたら、多くが「ビタミンD」と答えるでしょう。それほど必要な栄養素です。
ちなみにビタミンDをまとまった量とるときはビタミンAも一緒にとらないと、体がビタミンAが欠乏した状態になることがあります。
Q2
更年期の不調とビタミンD不足は関連がありますか?
おおいにあります! なぜならビタミンDは「幸せホルモン」とも呼ばれているセロトニンの代謝を調節することがわかっているからです。
セロトニンは脳内の神経伝達物質のひとつで、脳の興奮を抑え、心身をリラックスさせる効果があります。不足すれば、イライラや不安などのストレスを感じやすく、眠りの質が低下するのはもちろん、やる気や集中力の低下、気分の落ち込みなどにつながるほか、めまいや頭痛を引き起こすことも。
さらに、うつ状態になるリスクも高くなります。これらは更年期に起こる不調でもあるので、ビタミンD欠乏には十分注意する必要があると思います。
Q3
ビタミンDは、美容的にも何かよい効果がありますか?
肌にもとてもいい影響があると思います。特に、花粉症をはじめとするアレルギーのある方は、肌あれが改善することが少なくありません。
そもそもアレルギーは過剰な免疫反応ですが、ビタミンDが充足すると、免疫のブレーキが適度にきいて免疫反応が軽減します。その結果アレルギー性皮膚炎全般に改善効果が期待できます。
また、ご存じのようにビタミンDは骨の強度に影響します。つまり、顔の骨にも影響するということ。顔の骨が少なくなると顔の筋肉を支える力が弱まって、シワやたるみにつながるんですよ!
女性は女性ホルモンの分泌が低下するのに伴い、骨密度が低下してしまうことは明らかなので、若々しい肌を保つためにもビタミンDをとりましょう。
Q4
先生のクリニックの患者で、ビタミンDサプリによる「体感ベスト5」は?
1.アレルギー症状の軽減
これまでの説明にもありますが、これは特に顕著です。花粉症、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどがある方は、ほとんど症状が緩和します。
2. 風邪のかかりかけで治った
ビタミンDは、細菌やウイルスの感染から体を守る役目を果たす天然の抗生物資「抗菌ペプチド」の産生を調整していて、風邪を引いている人に濃厚接触しても感染しなかったり、症状がひどくなるのを防げたという話はよく聞きます。
3. お通じの改善
ビタミンDのサプリを飲み始めたら、便通がよくなったという報告も意外に多いんです。ビタミンDには、腸の悪玉菌を減らして、腸内フローラを整える役目があります。
4. 気持ちがポジティブに
前の質問にあったように、セロトニンが増えるからですね! 特に更年期の女性はセロトニンが増えると、さまざまな症状が緩和すると思います。
5. 腰痛の緩和
腰痛の中には初期の骨軟化症によるものがあります。ビタミンDを飲み始めたら、なぜか腰痛が軽くなったというのは、骨が強化されたからという正しい理由があるんです。
Q5
ビタミンDサプリをとることは、がん予防になるのですか?
ビタミンDは、がん細胞を体内で増やさないようにするメカニズムが解明されています。ビタミンDががんの予防になるのはもちろん、がんになった方がビタミンDサプリメントを摂取することで、再発や死亡リスクが軽減すると言えると思います。
例えば、2023年の報告。東京慈恵会医科大学の浦島充佳教授らのグループが、海外との国際共同研究で10万人のデータをメタ解析したところ、ビタミンDサプリメントの連日内服により、がんの種類に関係なくがん死亡率が12%減少していたことを明らかにしました。
Q6
ビタミンDは、新型コロナやインフルエンザの感染予防に効果があるって本当?
ビタミンDは、気道、呼吸器で抗菌ペプチドという天然抗生物質の分泌を調整しています。特にコロナ禍以降、インフルエンザや新型コロナ感染症のリスクを軽減するという論文が多く出てきました。
例えば、この連載で何度か登場するホリック博士の論文。
米国の19万人以上を対象に2020年3月〜6月に新型コロナ感染症のPCR検査結果について調べた大がかりな研究では、ビタミンD血中濃度との関係を解析したところ「ビタミンDの血中濃度が高いほど新型コロナ感染症に感染しにくい」ということが判明しました。
Q7
骨粗しょう症の薬に加えて、ビタミンDサプリを飲んでもいいですか?
日本で骨粗しょう症の薬として使われているビタミンDは「活性型ビタミンD」といいます。
処方薬の活性型ビタミンD製剤は、ダイレクトに腸管からのカルシウム吸収を高め、骨の石灰化を促進して骨密度を増加させる働きをします。治療として即効性がある分、飲み方に注意しないと血中濃度が上がりすぎて、高カルシウム血症になったり尿管結石ができることもあります。
一方、サプリメントのビタミンDは、ビタミンD3かD2で、「不活性型ビタミンD」「天然型ビタミンD」などと呼ばれます。
肝臓で活性化前のビタミンD(25OHビタミンD)に変換され、全身を巡り、適宜活性化されます。
薬とサプリを併用してもかまいませんが、念のために主治医に確認をとってからにしましょう。ふたつは相乗効果というより、役割が違う別のものとして、それぞれの最適量を摂取することが重要です。
Q8
ビタミンDを過剰に摂取すると、どんなことが起きるのですか?
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020年版」の耐容上限量100μg(4000IU)以内であれば、過剰症のリスクはありません。
ビタミンDの副作用としては、カルシウム吸収が過剰になることで動脈硬化や腎障害などが生じる可能性が考えられます。
250µg(10000IU)を1年間毎日摂取すると高カルシウム血症などの副作用が生じるという報告もありますが、ビタミンDが充足していない人が数日間摂取する分には問題ないと考えてかまいません。
もし、長期間にわたり250µg(10000IU)を摂取したい場合は、血中カルシウム濃度や副甲状腺ホルモン、もちろんビタミンD血中濃度もモニタリングしてもらいましょう。
【教えていただいた方】
1973年生まれ。日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008年「日本機能性医学研究所」を設立(2009年に法人化)。2017年、スーパーフードとしての牧草牛(グラスフェッドビーフ)の普及を目指し、日本初の牧草牛専門精肉店「Saito Farm」をオープン。2022年、機能性医学と再生医療を融合させた治療拠点として「斎藤クリニック」を開設。著書に『サーファーに花粉症はいない』(小学館)、『病気を遠ざける! 1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』(講談社+α新書)ほか多数。斎藤クリニック、Saito Farm
イラスト/内藤しなこ 取材・文・画像制作/蓮見則子