2週間続く出血に要注意!
「更年期に入ると、それまでは定期的に排卵して2種類の女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の分泌の波を作って、月経を起こしていた卵巣の機能が低下していきます。そしてやがて月経が完全に停止した状態を『閉経』といいます」(小川真里子先生)
閉経に向かう数年前から月経に変化が起こります。
例えば、「月経がきたと思ったらすぐに終わった」「周期が短くなった」「逆に周期が長くあくようになった」「経血量が少なくなった」「大量に出血する」「ダラダラと出血が続く」など、これは人それぞれに違います。
「『しばらく月経がこなかったのでもう閉経だと思っていたら、半年ぶりにきた』ということもあります。注意したいのは、これが更年期による月経異常なのかどうかです。なかにはそれが不正出血で子宮がんだったというケースがあるので注意が必要です」
確かに閉経に伴う月経異常のパターンはいろいろあり、人によって違うと聞くので、久々にあった出血が月経の名残なのか、不正出血の類いなのかは自己判断が難しいところ。
「実際にあった患者さんでは、ちょろちょろといった出血が続くので、最初は閉経に向かう月経不順の影響だと思っていたようです。しかし、それが数カ月も続いたので、さすがにおかしいと思って来院されました。結果は子宮体がんでした。
ひとつの目安は2週間以上出血が続くようなら、婦人科に相談してください。確かに、閉経に伴う場合も出血が10日くらい続くことはあるのですが、2週間※1を超えたら検査を受けることをおすすめします」
※1:この日数にガイドラインはなく、小川先生が日々診察をしていて感じる経験値です。
「子宮体がんを好発する年代は40代後半~60代。罹患しやすい人は、肥満、出産経験がない、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん/PCOS)※2の既往、がん家族歴があるなどが挙げられます」
※2:卵巣に多数の卵胞が育つが、排卵しにくいため月経不順を起こす疾患。
「不正出血=子宮体がんのイメージですが、子宮頸がんでも起こります。子宮頸がんは若い人だけでなく、50代~70代の人も罹患するので油断は禁物です。子宮頸がんの場合はセックスのあとに出血することが多いのですが、出血がみられる状態では進行がんになっている可能性が高いので早めの受診が重要です」
子宮内膜増殖症は子宮体がんに移行することも!
「不正出血が起こる病気にはほかに、子宮筋腫や子宮内膜増殖症などがあります。
子宮筋腫は子宮壁(筋層)の中に良性の腫瘍が発生するもので、女性ホルモンの作用で大きくなります。ですから、女性ホルモンの分泌が減少する閉経後になると小さくなります。
子宮内膜増殖症は子宮の内膜が過剰に増殖して厚くなる病気です。女性ホルモンには子宮内膜を増殖させる卵胞ホルモン(エストロゲン)と、排卵後に黄体から分泌される、子宮内膜の増殖を抑制する黄体ホルモン(プロゲステロン)があります。このふたつの働きにより、適正な内膜の厚さを維持しています。
ところが、エストロゲンが過剰になると、内膜が増殖し続けてしまいます。その原因は、肥満、月経不順、閉経前後の卵巣機能の低下、HRT(ホルモン補充療法)の際にエストロゲン製剤を単独で長期投与したケースなどが考えられます。
検査は経腟超音波検査と子宮内膜の病理検査で行います。治療は細胞異型(細胞や核の大きさが正常な細胞と異なる)がない場合は経過観察になり、約80%は自然に退縮します。不正出血が続くようであれば適正なホルモン療法を行うことも。
細胞異型がある場合は手術や薬物療法などで治療を行います。これを放っておくと、約30%の割合で子宮体がんに移行するといわれているので、きちんと治療することが重要です」
このように「これって大丈夫?」と思ったら、すぐに気軽に相談できる婦人科の主治医を持っていると安心です。
例えば、出血が2週間続き、そこから婦人科を探し始め、予約を試みた結果、数週間先になったとしたら…、もしも大きな病気だった場合、治療がどんどん先延ばしになり病状が進行してしまうかもしれません。
更年期世代になったら、頼りになるのは婦人科の主治医です!
【教えていただいた方】
福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター 特任教授。日本産科婦人科学会・日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医・指導医。専門は更年期医療学、女性心身医学、女性ヘルスケア。相談やカウンセリングを中心としたケアサポートとともに、最新のテクノロジーや視点を取り入れて、更年期を取り巻く環境や文化を積極的にアップデート。
イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子