脂肪燃焼効果や血糖値を下げる働きがある「アディポネクチン」
人間の体で働くホルモンには、100種類以上あるといわれていますが、その中で、ダイエットをサポートする“痩せホルモン”と呼ばれるものがあるそう。そのうちのふたつが、「アディポネクチン」と「インクレチン」。まずは「アディポネクチン」とは、どういうホルモンなのかを伺いました。
「アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌されるホルモンで、糖や脂肪の代謝に関与しています。脂肪燃焼効果や、血糖値を下げる効果があり、太りにくい体づくりをサポートしてくれます。また、血管を修復・拡張する働き、善玉コレステロール(HDL)を増やす働きもあります。これらの作用から、高血圧や糖尿病、脂質異常症、動脈硬化などの生活習慣病全般を予防・改善してくれるので、“長寿ホルモン”ともいわれています」
<アディポネクチンの働き>
・脂肪燃焼を促して太りにくい体に導く
・インスリンの働きを助け、血糖値を下げる
・血管修復・拡張作用
・善玉コレステロール(HDL)を増やす
アディポネクチンを増やすには、大豆製品をとるのが効果的
つまりアディポネクチンが増えると痩せやすくなるということ。では、増やす方法とは?
「まずアディポネクチンは、おもに内臓脂肪によって分泌されるので、内臓脂肪の量が極めて少ないと分泌できなくなってしまいます。また逆に、太りすぎていて内臓脂肪が多すぎても分泌が減ってしまいます。正常に分泌されるためには、太りすぎず、適度な量の内臓脂肪を保つことが大切です。
また、大豆タンパクに含まれる『β₋コングリシニン』という成分には、アディポネクチンを増やす作用があります。ですから、大豆製品をしっかりとるようにするのが効果的。特におすすめなのが『緑茶おからコーヒー』です。これは私が、なかなか痩せられないと悩む患者さんにもすすめているものです。
作り方は、緑茶とコーヒーを1:1で割り、そこに市販のおからパウダーをティースプーン1杯程度混ぜるだけ。緑茶のカテキンにも、コーヒーに含まれるクロロゲン酸にも脂肪燃焼効果があり、おからパウダーのβ₋コングリシニンとの組み合わせで、さらに効果がアップするのです。おからパウダーは、食物繊維が豊富で腹もちもいいうえ、筋肉の材料になる良質なタンパク質をとることもできます。1日3回、食前に飲むのがおすすめです」
食後の血糖値を下げ、食欲を抑える働きがある「インクレチン」
では、もうひとつの痩せホルモン「インクレチン」は、どのようなホルモンなのでしょうか?
「インクレチンは、食事をとることによって小腸などから分泌される消化管ホルモンです。インスリンと協調して、食後に高くなった血糖値を下げる働きがあるため、肥満治療薬にも使われています。インクレチンには、GLP-1と、GIPというふたつのホルモンがあり、このうちのGLP-1には、インスリンの分泌を促進する作用や、食欲を抑える作用があります。
GLP-1は、小腸に食べ物が届くと分泌され、脳や膵臓(すいぞう)、胃に合図を送ります。すると、脳は全身に満腹の指令を出し、胃の動きがゆっくりと休息モードになり、膵臓はインスリンを出して血中の糖を回収し始めます。つまり、GLP-1がしっかり分泌されると、食べすぎず、太りにくくなるのです」
<インクレチンの働き>
・食欲を抑える
・インスリンの分泌を促して血糖値を下げる
・胃の動きを遅くするので、少量でも満腹感を感じやすくなる
・グルカゴン(血糖値を上昇させるホルモン)の分泌を抑制する
インクレチンは、肉から食べる「ミートファースト」で増やせる
では、インクレチンを増やす方法とは?
「インクレチンは食物中の栄養素に反応して分泌されるのですが、食べる順番では、ご飯や野菜を先にとるより、肉や魚などを先にとるほうが、分泌量が増えることがわかっています。そこでおすすめなのは、肉から食べる『ミートファースト』です。
最初に肉をとることでインクレチンが増え、それによって膵臓からインスリンが分泌され、食後の血糖値の上昇が抑えられます。また、食欲抑制効果や満腹感も得られます。肉のタンパク質は腸内細菌と結びつくと短鎖脂肪酸になり、それによってもインクレチンが分泌されます。ダイエット中は肉を控えがちですが、野菜ばかりとっているとタンパク質が不足し、代謝が落ちて痩せにくくなったり、髪や肌の老化も進んでしまうので要注意。肉を積極的に取り入れることが大切です」
40代、50代からは無理な食事制限は禁物。ふたつの痩せホルモンをうまくコントロールして、健康的に太りにくい体をつくりましょう。
【教えていただいた方】
写真/Shutterstock 取材・文/和田美穂