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睡眠時間は細切れでもトータルで考えればOK!(疲れ知らずの睡眠術)

なかなか寝つけない。寝ても途中で目が覚めてしまう。十分な睡眠時間が確保できない。寝ているのに疲れが取れない。そんな悩みはありませんか?疲労を解消するためには睡眠は不可欠。いかに良質の睡眠を確保するかにかかっています。そのためには、どんなことを実践したらいいのでしょうか? 内科医で疲労に詳しい工藤孝文先生に伺いました。

「睡眠中は心拍や呼吸が穏やかになり、体温や血圧が下がります。これにより、日中に活動して疲れた体や脳は休息モードに入ります。睡眠の働きはそれだけではありません。傷ついた細胞を修復したり、記憶や情報、感情の整理、免疫力を高めるなど、体や脳、心のメンテナンスをしています」(工藤孝文先生)

 

これらすべてが滞りなく行われると、翌日に疲労が残らず、シャキッと爽やかな朝を迎えられるのです。そのためには、少なくとも次の6つのことを実践したいと工藤先生。その方法とは?

 

1.疲れない体のためには、毎日同じ時間に起きるのが第一歩! 

快適な睡眠を得るためには、寝る前だけでなく、朝からの行動が重要です。

 

「私たちの体には、朝起きて、昼に活動し、夜寝るという時計遺伝子が備わっています。これを体内時計、またはサーカディアンリズムといいます。1日およそ24.5時間に設定されているため、地球の自転の24時間に対して、毎日30分ほどずれが生じます。これを調整してくれるのが、朝の太陽光です。

 

朝起きたらカーテンを開けて、窓越しでもいいので朝の光を浴びます。すると目の網膜が光を感じることでセロトニンが活性化します。夜になると、このセロトニンを材料に睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンを分泌します。このように、夜の快眠を得るためには、朝にしっかりとセロトニンをつくっておくことが重要。そのためには朝の太陽光が必要なのです。

 

また、休日に寝だめをしようと朝寝坊をする人もいますが、いつも通りの時間に起床することが大切です。いつもよりも長く寝たい場合は、寝る時間を早めるほうがいいでしょう」

 

大切なのは、夜寝る時間でなく、朝起きる時間を一定にすること! 夜更かしの朝寝坊が習慣化すると体内時計がどんどん乱れて、疲労が蓄積していきます。やがて肥満や生活習慣病、うつ、免疫力の低下やがんの発症リスクも高まります。

 

2.昼寝を活用してトータルで睡眠時間を確保する 

仕事が忙しい、自分磨きのための勉強、家族の世話や介護などで、十分な睡眠時間が確保できないという人も少なくないでしょう。

 

「人間には1日7時間の睡眠が必要といわれています。年齢や季節などで多少異なりますが、少なくとも6時間は寝たいものです。

 

それだけの時間が確保できない人は、昼休みや通勤時間などに少しずつ仮眠をとって、トータルで6~7時間を目指しましょう。特に、昼12時~15時の間に20分ほどの仮眠をとると、脳や体の疲労回復にとても有効です。

 

ただし、1回の仮眠は15~20分にとどめ、夕方以降は夜の睡眠に影響が出るので避けます。眠らなくても、目をつぶるだけでも効果はあります。

 

一方、8時間以上の睡眠、休日の寝だめは逆に疲労感を生むこともあるので避けてください」

 

3 パジャマにこだわる!素材はシルクがベスト 

 

ベッドルームにいるパジャマを着た女性のイラスト

部屋着や運動着などで寝ている人はいませんか? 実は、何を着て寝るかで、睡眠の質が大きく変わるのだと工藤先生。

 

「パジャマと部屋着や運動着とでは目的が違います。パジャマには肌触りがよくて、汗の吸湿性や放出性がいい素材、体を締めつけない着心地のいいデザインであることが必要です。これらを考えると、私がすすめているのはシルクのパジャマです。

 

季節や個人差はありますが、人は寝ているときに約1ℓの汗をかくといわれています。シルクは汗の吸湿性と放出性が高く、夏は涼しく、冬は暖かいという特性があります。

 

ナイロンなどの通気性の悪い素材だと、ベッド内の温度や湿度を快適に保てないため、自律神経が乱れて睡眠の質を下げ、疲労回復を妨げます。

 

シルクのほかによいと思うのがガーゼ素材。これも肌触りがよく、汗を吸い、熱がこもりにくいので、特に夏におすすめです。

 

ちなみに冷え症で靴下を履いて寝る人がいますが、足の先から熱の放出ができず、よい睡眠を妨げる可能性があります。冷える場合は足先があいたレッグウォーマーがいいでしょう」

 

4.入浴は寝る1~2時間前にぬるめの湯が鉄則 

「人の体は寝る前に体の深部体温を下げることで、眠気を誘い眠る準備をします。眠くなると手足の先が温かくなるのは、手足の皮膚表面の血管を開いて熱を放出させているからです。

 

深部体温の下がり幅が大きいほど脳の温度が下がり、入眠しやすくなります。そのためには、寝る1~2時間前にお風呂に入って体を温めておくことをおすすめします。

 

湯の温度は季節にもよりますが38℃前後が目安。温度が高すぎると交感神経が活発になるので逆効果。長風呂も体温が上がりすぎる可能性があるので避けたいもの。

 

湯船につかるのは、ぬるめの湯に10分を目安にしてください」

 

5.快眠を妨げるいびきは横向き寝で解決 

 

ベッドで寝ている女性のイラスト

40歳を過ぎた頃からいびきをかくようになったという人は少なくありません。それは喉の筋肉の老化や疲れが一因です。いびきは熟睡を妨げ、気道がふさがれて呼吸が一瞬止まる睡眠時無呼吸症候群の原因にも。

 

「いびきは吸い込んだ空気が鼻や喉を振動させる音です。特にあお向けで寝ていると、舌が緩んで気道を圧迫するので、いびきをかきやすくなります。その解決策として、気道を確保しやすい横向き寝がおすすめです。

 

向きは右向きがいいでしょう。胃は体の右側に曲がっているので、食べたものが腸に向かって移動しやすくなり、消化活動にも役立ちます」

 

6.途中で目が覚めても時計を確認しない 

睡眠障害には、なかなか寝つけない、途中で目覚めてしまうなどさまざまなケースがあります。

 

「質のよい睡眠を確保するためには、寝る2時間前から蛍光灯などの青系の明るい光を避け、暖色の間接照明にします。明かりの強さを調整できるとベストです。就寝中は足元を照らすフットライト程度にして、真っ暗にするのがおすすめです。

 

また寝つきが悪いときや途中で目覚めてしまっても、時間を確認するのはNG! 『あ~、1時間たったのにまだ眠れない』『今からだと3時間しか眠れない』など、焦るだけです。睡眠に焦りや不安、イライラすることは禁物。時計を見ることでそうした感情が増幅するので、時計は見ないことです。

 

眠れないときは腹式呼吸をして副交感神経を刺激するのがいいでしょう。

鼻からゆっくり4秒かけて息を吸います。そして7秒息を止めて、口からゆっくり8秒かけて息を吐きます。これを3回ほど繰り返すと、心が落ち着いてくると思います」

 

良質な睡眠を味方につけることが、疲れない体になる第一歩! 今日から試してみてください。

 

 

【教えていただいた方】

工藤孝文
工藤孝文さん
内科医・糖尿病内科・統合医療医・漢方医
Twitter

福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。帰国後は大学病院などを経て、現在は福岡県みやま市にある自身のクリニックにて地域医療に注力。専門は糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病、漢方治療、ダイエット治療など多岐にわたり、テレビ・ラジオなどのメディアで医療の最新情報を発信。著書に『「毎日疲れない」にいいこと 超大全』(宝島社)など多数。 工藤孝文先生 著書  

イラスト/midorichan 取材・文/山村浩子

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