「疲れた~」と思ったときには、気分転換が欠かせません。そんなとき、あなたはどんなことをしていますか? 何気なくやっていることでも、実はきちんとしたエビデンスのあるものがあります。趣味には好き嫌いもあるとは思いますが、誰にでも実践できそうな5つの方法を紹介します。
1 家族やペットとの触れ合いで癒しホルモン全開!
犬や猫をモフモフしたり遊んだり、家族とのハグやスキンシップなど、好きな相手と触れ合うことで気持ちが落ち着くことがあります。
「それは、相手への愛情や信頼関係を感じることで、オキシトシンが分泌されるからです。オキシトシンは癒しホルモンとも呼ばれ、幸福感を得たり、ストレスを低減する働きがあります。これは痛みの軽減や認知症の改善にも効果が認められています。
特に相手の背中にぴったり手のひらをつけて、ゆっくり円を描くようになでる『オキシトシンタッチ』での触れ合いならさらに効果大。
アドラー心理学では『他者貢献が幸せの鍵』と提唱しています。それによると、相手の役に立っていると感じることでもオキシトシンが分泌されます。つまり、なでられるほうも、なでるほうも幸せを感じられるのです」(工藤孝文先生)
一人暮らしの人は、自分の腕をなでたり、両腕を胸の前で交差させて、ギュッと自分を抱きしめる「一人ハグ」でも効果あり! もちろんペットを飼って触れ合ったり、それが難しい場合は、動物のぬいぐるみを抱きしめるだけでも効果があるそうです。
2 疲れが限界にきたらガールズトーク!
気心の知れた女友達との集まり。時間を忘れてしゃべり倒した、なんて経験がある人も少なくないでしょう。
「女性はおしゃべりがストレス解消の大きな手段になる、というのは本当です。それは女性の脳は人と話をして『共感』することで、その情報を日々の生活に役立てることが得意だからです」
確かに、自分の発言に「そうそう、それわかる!」「私もよくある~」と共感してもらえると、とても気持ちがよいもの。何気ない話をし続けるだけで、イライラや、うつうつとした気持ちが解消していくことはよくあります。
「ただし、相手が男性だと逆効果になることがあります。それは男性の脳は共感よりも『問題解決』を重視するようにできているからです。ですから、女性同士であってもあまり深刻にならず、軽く話を合わせて共感し合うことが重要です」
そのルールを破ると、場の空気が悪くなったり、ケンカに発展することもあるので注意が必要かも!?
3 音楽で幸せホルモンを味方につける
疲れた心身をリセットするには、没頭できる趣味を持つことが一番。なかでも好きな音楽を聴く、または歌う、楽器を演奏する、踊ることは、とても有効なのだそう。
「鶴見大学歯学部で行った研究では、平均年齢64歳の男女44人を対象に、カラオケで好きな曲を3曲歌ってもらい、その前後で唾液の量と、唾液に含まれるストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの量を調べました。
その結果、歌唱後には唾液は増え、コルチゾールが減っていました。これは歌唱前よりもリラックス状態にあることを表しています。しかも気分が明るくなっていました。これは歌うことが好きな人、嫌いな人に関係なく、ほぼ同じ結果になったのです。
また、吹奏楽器は息を吐くことによって呼吸筋が使われること、打楽器をたたくとそのリズム運動により、幸せホルモンであるセロトニンの分泌が促進されることがわかっています。
ゆったりとしたリズムに合わせて踊るフラダンスは有益な有酸素運動でもあり、副交感神経を優位にしてリラックス効果があります」
もちろん音楽を鑑賞するだけでもOK。趣味の中に音楽を取り入れることは、心身の疲れ解消にも役立ちそうです。
4 大泣きする「涙活(るいかつ)」はストレス解消度抜群
大笑いすることでストレス解消することは有名ですが、それと同じ、いやそれ以上に効果が高いのが大泣きすることだそう。
「こんな実験結果があります。お笑い芸人のネタを聞いて笑ったあとと、感動的な映画を観て泣いたあとのストレス解消度を比較したのです。それによると、泣いたあとのほうが、解消度が高かったというのです。
感情が揺さぶられて泣くと、自律神経がリラックス状態を示す副交感神経に切り替わり、コルチゾールが低下することがわかっています」
大人になるとなかなか人前で泣くのははばかられますが、本を読んだり映画を観たときには、思い切り涙を流すことをおすすめします。
5 いい気候の季節は森林でフィトンチッド浴!
ウォーキングなどの有酸素運動がストレス解消に有効であることは周知のとおりです。できたら、そこに自然の木々の力も借りてしまいましょう。
「森の中には木々が放出するフィトンチッドという、揮発性物質が放出されています。主な成分はテルペン類と呼ばれる有機化合物で、リラックス効果があります。この効果に着目して、森林セラピーという言葉も登場。木の香りに包まれると、疲労回復の早いことが確認されています。
また、森の中の風の音、小川のせせらぎ、鳥のさえずりは、心地よいと感じる「1/f ゆらぎ」をしています。こうした自然に囲まれることが、心身の安らぎや浄化に役立ちます」
いい気候の季節には、ぜひとも木に囲まれてみましょう。
【教えていただいた方】
イラスト/midorichan 取材・文/山村浩子