小さな音も丁寧に発する癖をつけて!
発音しにくい単語を思い浮かべてみると、「車掌(しゃしょう)さん」「年中無休(ねんじゅうむきゅう)」など、小さな『ゃ、ゅ、ょ』がつく言葉が多いことに気づきます。あなたはいかがでしょうか?
「『しゃ、しゅ、しょ』というように、小さな『ゃ、ゅ、ょ』がつく音を拗音(ようおん)といいます。これは2文字で表しますが、1音として発音します。『お茶(おちゃ)』『無休(むきゅう)』『商店(しょうてん)』などがあります。
例えば、『き』と『や』を交互に言ってみてください。次第に早くしていくと『きゃ』に聞こえてきます。でも小さい『ゃ』はなくならず、『や』の音を担い、控えめに仕事をしているのがわかります。お茶(ちゃ)がそれに当たります。
一方で、小さな『っ』がつく言葉では、『夫(おっと)』『雑誌(ざっし)』『きっと』など、こちらもたくさんありますね。これを促音(そくおん)といいます。この場合は音がないのに、この小さな『っ』を1文字で表します。
日本語を習い始めたばかりの海外の人にとって難しい発音のようです。『買ってしまった』『渋谷に行ってきた』が『買てしまた』になったり、『渋谷に行てきた』になったりしますが、すぐに言えるようになります。
こうした拗音や促音などの特殊音節を、苦手と感じる人が多いようです。これらを上手に発音するためには、拗音の場合は、小さい『ゃ、ゅ、ょ』の一音一音を確かめるように読むことです。こうして丁寧に発音することを、『音を触るように読む』と表現します。
最初はゆっくりでよいので、丁寧に発音してみてください。これを重ねていくうちに、口や舌の動きがスムーズになり、上手に発音できるようになります。
促音は、次の音の準備はしつつも声には出さずに、そのあとの音に続けます。息を一瞬のみ込むように止めるのがポイント。詰まる音は声に出しませんが、1拍分の長さをとると、言葉がはっきりしてきます」(佐藤正文さん)
気になる人間関係、家計、健康のことを言葉にして発散!
早口言葉も昔から伝わる古典的なものだけでなく、今の時代や年代に即した新しいものが登場しています。この回では、佐藤さんのオリジナルから、40代、50代に「あるある」な内容のものを集めました。
【早口言葉】

ぺちゃくちゃ 喋って(しゃべって) めちゃくちゃ はしゃぐ 難易度★☆☆
ストレス発散は気心の知れた友人と「おしゃべり」するのに限る!? そんな情景を思い浮かべながら、楽しく言ってみましょう。
「これは、小さな『ゃ』が連発します。口を横や縦にしっかり動かして、『ゃ』の部分を触りながら発音してみてください」
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【早口言葉】
消耗品費(しょうもうひんひ)を 極力(きょくりょく)抑制(よくせい)しなさい 難易度★★☆
節約生活は今後の課題!? 冷蔵庫のドアに貼って、毎日これを言っていたら、無駄な買い物がなくなるかも!?
「『極力』も言いにくい言葉のひとつではないでしょうか? これも『ょ』を触りながら、最初はゆっくり、『きよ』『りよ』に近い感じで発音し、少しずつ早めていくと、舌の動きが把握しやすいかもしれません」
【早口言葉】
骨粗しょう症(こつそしょうしょう) 訴訟(そしょう)勝訴(しょうそ) 難易度★★★
40歳頃からの女性ホルモンの低下に伴い、骨が弱くなっていきます。骨粗しょう症は骨が弱くなっていく病気。それをくい止めるための努力を、この早口言葉を言いながら実践してみるのもいいかもしれません。
「『しょう』が2回続き、『そしょう』の次に『しょうそ』ときます。これを最初はゆっくり、単語ごとに区切って言ってみるといいでしょう」
【教えていただいた方】

1970年、桐朋学園大学演劇専攻科卒業。劇団 俳優座、安部公房スタジオを経て日本大学芸術学部非常勤講師、尚美学園大学客員教授。大手芸能プロダクションで演技レッスンを担当し、多数の俳優を育成。ほか、アマチュア劇団や朗読サー クルなどで、高齢者を含め約5000人を指導。トレーニングのひとつとして「早口言葉」を取り入れている。共著に『「早口ことば」で認知症予防』(ART NEXT)など。
協力/『「早口ことば」で認知症予防』(ART NEXT)

イラスト/midorichan 取材・文/山村浩子


