カサブタ=早く治っている、は大間違い!
こんにちは。斎藤糧三です。
「機能性医学」を専門に、日本機能性医学研究所の所長を務め、表参道のクリニックで診療しています。
子どもの頃、すり傷にオキシドールをかけて「ひぃ〜」と叫びながら泡がブクブクしているところに、フーフー息を吹きかけて…。そんな儀式をした記憶、ありませんか?
「泡」が治してくれていると思っていたけれど、実は細菌だけでなく健康な細胞にもダメージを与えてしまい、かえって治りを遅くすることがあるのです。

そして昔は「カサブタを作れば治る」とも言われていましたが、これまた大きな誤解。乾燥すると、傷の修復に必要な細胞の働きが鈍くなり、治りが遅くなってしまうんです。
カサブタは「治っているサイン」ではなく、「治りにくくなっているサイン」。
今では「乾かさない」ケアが正解とされています。
「消毒して乾かす」は古すぎる!「湿潤療法」が今の常識
傷ができたときにいちばん大切なのは、「乾かさない」「刺激しない」こと。
近年主流になっているのが、「湿潤療法」と呼ばれるケア方法です。
日本では2000年代に入ってから医師の間で広まり始め、今では医療の現場でも多く採用され、皮膚科や形成外科、美容医療では標準的に行われています。

一般にも知られるようになったのは、2004年に市販のハイドロコロイド絆創膏(キズパワーパッド)が登場した頃からでしょうか。
「えっ!? オキシドールもマキロンもダメなの?」「消毒しないってどういうこと!?」と、当時はびっくりした人も多かったはず。
まさに「気づけば、昭和の常識が変わっていた!」時代でした。
湿潤療法のポイントはシンプル。小さなすり傷や切り傷なら、次のステップでケアしてみましょう。
━━★ 家庭での湿潤療法のやり方 ★━━
1)まず、水道水で優しく洗い流す。
汚れを落とすだけでOK。石鹸や消毒薬は使わないで。
2)出血していれば、清潔なガーゼなどで軽く押さえて止血。
強くこすらないのがコツです。
3)ワセリンや湿潤タイプの絆創膏(キズパワーパッドなど)を使って保護。
乾かさず傷が湿った状態を保つことで、きれいに早く治りやすくなります。

やけどは、とことん冷やす! ガーゼは使わないで
やけどの場合はとにかく「すぐに」「できるだけ長く」冷やすのが鉄則です。皮膚の炎症を抑えるだけでなく、細胞のダメージを最小限に抑える効果もあります。
冷やしている間は痛いですが(凍傷にはなっていない証拠)、痛みがなくなるまでしっかり冷やしてください。
冷やしたあとは、やけどした部分が乾かないように保護しましょう。こちらも湿潤タイプの絆創膏を使って。もしやけどが広めだったり、ジュクジュクして貼りにくい場合は、ワセリンを塗って台所用ラップで覆う応急処置もおすすめです。
なお、やけどにガーゼを当てるのはNG!
傷口にくっついて、はがすときに皮膚をさらに傷つけてしまう恐れがあります。
日焼けも軽度のやけどなので、熱がこもったままにしないようにしましょう。
■まとめ■ 令和の常識はこれ!
昭和の常識:消毒して乾かし、カサブタを作って治す!
↓
令和の常識:水で洗って湿潤環境を保ち、早くきれいに治す!
カサブタ=治っているのではなく、カサブタ=治りにくくなっているかも?
「傷には消毒とガーゼ」という昭和の記憶、今こそアップデートのときです!
【教えていただいた方】

1973年生まれ。日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008年「日本機能性医学研究所」を設立(2009年に法人化)。2017年、スーパーフードとしての牧草牛(グラスフェッドビーフ)の普及を目指し、日本初の牧草牛専門精肉店「Saito Farm」をオープン。2022年、機能性医学と再生医療を融合させた治療拠点として「斎藤クリニック」を開設。著書に『サーファーに花粉症はいない』(小学館)、『糖質制限+肉食でケトン体回路を回し健康的に痩せる!ケトジェニックダイエット』(講談社)、『病気を遠ざける! 1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』(講談社+α新書)ほか多数。斎藤クリニック、Saito Farm
イラスト/小迎裕美子 取材・文・画像制作/蓮見則子


