あなたの磨き方、大丈夫? 間違いあるある10チェック
「歯周病は予防も改善も、丁寧なセルフケアの積み重ねにいちばん反応してくれるもの。コツは難しくありません。力を抜く・当て方を整える・いつも同じ順番で。この3つに気をつけて。
まずは、ご自身の“いつもの磨き方”を客観視するところから始めましょう」
こう教えてくれるのは、一般歯科から口腔外科にも詳しい歯科医師、塚原妹美先生。
毎日きちんと磨いているつもりでも、気づかないうちに間違った習慣が身についていることもありそう。以下のチェックで、思い当たる項目があれば要注意です。
【歯磨きのよくある間違いトップ10 】
【1】力を入れてゴシゴシ
(歯や歯ぐきを傷つける)
【2】歯と歯ぐきの境目を磨いていない
(ここから歯周病は始まる)
【3】奥歯の裏側をサボりがち
(汚れが残りやすい)
【4】毎回同じ順番で磨いていない
(磨き残しの一番の原因)
【5】歯間ブラシを無理やり差し込む
(歯ぐきを傷つけたり下げてしまう)
【6】デンタルフロスをただ通している
(歯面に沿わせるのが正解)
【7】インプラントは磨かなくても大丈夫と思っている
(炎症は起こる)
【8】電動ブラシを強く押し当てたり動かしている
(軽く当てるだけでOK)
【9】歯ブラシを好みだけで選んでいる
(細かいところが磨けていない)
【10】ホワイトニング歯磨き粉を使い続けている
(実は歯や歯ぐきを傷めるリスクも)
「間違いあるある」に気づいたら、次は正しい歯磨き術をおさらいします。
しっかり磨くほどきれい? 実は逆効果な「オーバーブラッシング」
音が出るほど力をこめた「ゴシゴシ磨き」は、歯ぐきが下がったり、歯がしみる(知覚過敏)の原因になります。
「“強く=きれいに磨ける”ではありません。このオーバーブラッシングには注意が必要。特に歯周病予備軍の人、歯周病になってしまった人は、極力力を入れずに歯ブラシを動かす『毛先磨き』が推奨されています。
毛先磨きは、歯に直角に歯ブラシを当て、その名のとおり毛先だけで磨く方法。バス法・スクラビング法といった従来の磨く技術とは別に『毛先が当たっていれば、軽い力でもプラークは落とせる』という考え方です。
毛先だけで大丈夫なの? と思うかもしれませんが、慣れれば本当にツルツルに磨けるんです。歯ぐきを下げないために、40代以降の歯磨きは、この方法をおすすめします」

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毛先が広がらない程度のごく弱い圧で十分
まず、力が入らないようにするには、歯ブラシはペンと同じ持ち方に。歯に直角に当て、毛先だけが歯に触れている状態で小刻みに動かします。音があまりしないくらいが、力がちょうどいいサインです。
ブラシの使い方次第で、磨き残し激減!
上の前歯など長い歯は、ブラシを縦に使ってOK。届きにくい奥歯の裏などは、ブラシの先端や根元を使い分けて。月に一度は染め出し液で「盲点」を見える化するのが理想的です。
歯磨きは「ひと筆書き」でムラなく・サボらず!
歯磨きは無意識に行っていることも多いもの。すると、どうしても自分の得意エリアに偏り、苦手な場所は手抜きになりがち。
「できれば、ひと筆書きのようにブラシを離さずにスムーズに磨けるルートを決めて。いつも同じ順番で磨くのが楽だと思います。歯医者さんで『ここが残りやすいですね』と言われた部位からスタートするのも効果的ですよ」
右利きの人のひと筆書き例は…
右上の表 → 左上の表 → 左上の裏 → 右上の裏 → 右下の裏 → 左下の裏 → 左下の表 → 右下の表 。 最後に上下左右の噛み合わせ面をそれぞれ磨きます。

フロスや歯間ブラシで、届かない場所を攻略!
歯と歯の隙間は、歯ブラシだけではどうしても届かない場所。歯の隙間が狭ければデンタルフロス、広ければ歯間ブラシを使うのが基本です。
「初めて使う人は、まずは1日1回でよいので歯ブラシにプラスしてみて。夜のルーティンにするのもいいですね。
デンタルフロスや歯間ブラシは、歯ブラシの前に行うほうが歯間の汚れが取れやすく、歯磨き粉の有効成分も行き渡りやすくなるという意見もあります。
でも、それでは気持ちが悪い、続かないという人は続けやすさを優先して。歯ブラシで汚れを落としたあと、細かいところの汚れをフロスや歯間ブラシで取る、という順番でよいと思いますね」
何より、1日1回習慣として定着させることが、磨き残しをなくす近道です。ただし、サイズが合っていないものや無理に挿入することは歯ぐきを傷めてしまうので気をつけて。

歯周病を防ぐ!大人のセルフケア5カ条
〈1〉タイミング
食後すぐ。柑橘類や炭酸など酸性の食べ物を多くとった場合は、まず水ですすいで中和してから磨きます。
〈2〉回数
1日2回以上。就寝前は必須。起床時は細菌数がいちばん多いため、飲食する前にうがいだけでもすることが重要。
〈3〉時間
目安は3分以上。ただし長ければいいわけでなく質が決め手。毛先の当たり方と磨く順番の徹底を優先。
〈4〉丁寧ケア
1日1回でいいので“じっくり回”を。夜が理想です。
〈5〉インプラントまわり
天然の歯と同じようにケアを。インプラント周囲炎は静かに進んでしまいます。
「道具を増やすより基本を確実に。ぜひ、かかりつけの歯医者さんを見つけて、自分に合うやり方を歯科衛生士と一緒に組み立ててみてください。
歯磨きは作業ではなく『習慣設計』だと思います。力を抜く・当て方を整える・いつも同じ順番で——この3つがそろうと、歯ぐきは必ず応えてくれます。
ツルツルの心地よさを合図に、今日から優しく続けていきましょう」
【教えていただいた方】

歯学博士(再生医療)。医療法人社団宏礼会 塚原デンタルクリニック勤務。医療法人社団宏礼会 行徳TM歯科院長。歯科衛生士学校で講師を務めたり、新聞でコラムを担当するなど、歯科医院へ行くことの重要性を訴える歯科医師。 塚原デンタルクリニック 行徳TM歯科
イラスト/内藤しなこ 取材・文/蓮見則子


