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「あえて無理をする」でモチベーションは上げられる

私たちは「極力ストレスを受けたくない」と自分自身でブレーキをかけがち。ですが、あえて“無理をする”ことでモチベーションが上がる、と言うのは、ストレスと体の反応に詳しい伊藤裕先生。どのくらいの無理ならOK? 瞬時にストレスをモチベに転化させるには? 今日からすぐできるポイントをお聞きしました。

ストレスを感じると全身にエネルギーが満ちる

 

ストレスは受け止め方次第であり、ストレス耐性は自分で上げていくことができる、と伊藤裕先生。

今回はさらに、ストレスを利用してモチベーションを上げられる、という話です。

 

「ビジネスの現場では、まさにストレスをモチベーション=燃料にして結果を出している起業家や経営者たちが多くいます。
日々ストレスにさらされていると思っていると、つい『無理のない範囲で』と自分にブレーキをかけがちです。
でも、ある経営者にお会いしたとき、その方は『順当にいけばこのくらいはいけそうだ、という業績の1.5倍を目標として掲げるようにしている』と言っていました。

これは、ストレスによって起こる体内の反応を上手に利用してエネルギーに変えている例です。

 

ストレスを感じるとアドレナリンやノルアドレナリンといったストレスホルモンが放出され、これによって交感神経が刺激されます。
血圧や心拍が上がり、血液と栄養分が全身に素早く行き渡り、呼吸が速くなって酸素の供給も盛んになります。筋肉が収縮して力がみなぎり、瞳孔は開いてものがしっかりと見える。
要するに全身がエネルギッシュな状態になるわけです。
これによって注意力や集中力は高まり、スピーディーに最適な判断を下して仕事を推し進めていけるのですね。

 

もちろん、その状態をずっと続けていくのは心身の健康にかかわります。
大事なことは、リズムがあること。

ストレスがかかる状態があったとして、その後にストレスから解放されてリラックスできる時間がある。そのリズムが活力を生み出すのです」(伊藤裕先生)

 

記事が続きます

週末に好きなことで「無理をしてみる」

そうは言っても、仕事に家庭に毎日忙しい50代、なかなか目標を高く掲げて…というのは難しい人も多いかもしれません。

 

「モチベーションに変えられるのは、自分がやりたいと思えること、好きなことだからこそ。

例えば50代なら、今後の人生をずっと自分の足で歩けるようにと筋トレなど運動をしている人も多いのではないでしょうか? 私の周囲でもキックボクシングなどをやっている女性がいます。

休日にちょっと無理をすることがモチベUPになる

 

体を動かすというのはそれ自体がチャレンジになりますから、ストレスをかけるにはもってこい。そのとき、自分が今できている程度よりも高い目標を設定してみましょう。

 

高い、というのは、10回やったら5回成功するくらいのレベルです。10回のうち8~9回成功する、というのはストレスとしては緩すぎます。
1/2の確率で成功もある、けれど失敗もある、くらいのほうが『よし、次はやってやる』とモチベーションにつながりやすいといえます。

 

そして成功してワクワクや達成感を感じると、私たちの脳は『またあの快感を味わいたい!味わえるはず!』と期待します。それがまたモチベーションの原動力になって…というプラスのループが生まれます」

 

言葉の変換だけでもモチベーションは変わる

趣味など好きなことなら目標を高く掲げやすいですが、仕事ではどうでしょうか?

ストレスの大きさが先行してなかなか難しい場合も多いかもしれません。

 

「仕事のシーンでも、ストレスをモチベーションに変える簡単な方法があります。
それは言葉の変換です。

例えば明日までに企画書を出さないといけない、1週間後までにプレゼン資料をそろえないといけない、などやることが山積みだとします。

『時間がない、マズイ』『ギリギリすぎて終わるか不安』と思う状況でも、あえて『面白いことになってきた!』と言葉を置き換えてみるのです。

実は、ドキドキして不安を感じているときと、ワクワクして期待感が高まっているときの体や脳内の反応には、似通ったところがあります。

体や脳の反応が似ているのであれば、それを生かすも殺すも自分次第。
ネガティブな言葉をポジティブな言葉に変換することで、危機的な状況も成長のチャンスに変えられるというわけです。

 

記事が続きます

言ってみれば自己暗示で、古典的な方法と思う方もいるかもしれません。でも案外効果があるものです。

ストレスがかかりそうな事態に直面したら、『ヤバイ』→『面白い』に瞬時に変換するクセをつける。それだけでモチベーションは変わってくるはずですよ」

 

 

【教えていただいた方】

伊藤 裕
伊藤 裕さん
医学博士

慶應義塾大学名誉教授、同大学予防医療センター特任教授。専門は内分泌学、高血圧、糖尿病、抗加齢医学。1983年京都大学医学部卒業後、米国ハーバード大学、スタンフォード大学で博士研究員。京都大学医学部助教授を経て、慶應大学医学部にて教授、2023年より現職。著書やメディア等でホルモンの仕組みや体の働きなどをわかりやすく解説。著書多数。

 

イラスト/ツルモトマイ 取材・文/遊佐信子

 

伊藤裕先生の話題の著書はこちら

『なぜストレスフルな人がいつまでも若いのか』書影

 

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