脳卒中と思われる症状の場合は頭を動かさない!
突然倒れて、救急車で運ばれる病気として、真っ先に頭に浮かぶのが脳卒中ではないでしょうか?
脳卒中は脳の血管が詰まる脳梗塞、血管が破れる脳出血、そして脳の血管の出血がくも膜の内側にたまるくも膜下出血など、脳血管障害の総称です。
脳卒中については第4回参照。
「特に、脳卒中が疑われる場合は、発症後の処置の仕方で、その後の病状が大きく変わります。突然倒れた場合はもちろん、急な頭の強い痛み、体の片側が動かせないもしくは痺れる、片方の目が見えにくい、視野が欠ける、言葉がうまく出てこないといった症状が現れたら急を要することがあります。まず『#7119』(急な病気やケガの際に救急車を呼ぶべきか相談する窓口)に電話して相談し、必要であれば救急要請を行います。
まずは安全な場所に移動させ、衣服を緩め、嘔吐で気道を塞がないように横向きに寝かせます。そこで注意したいのが、頭をできるだけ動かさないことです。意識があっても自分で立って歩かせないで、家の場合は布団や毛布にのせて静かに動かして、救急車を待ちます。
突然の胸の痛みや苦しさを訴える場合は、心臓病の発作も考えられます。楽な姿勢でしばらく安静にさせます。数秒~数分で治まる場合は、できるだけ早い段階で医療機関を受診します。
10分以上痛みが続く場合、背中や腕、あご、みぞおちなども痛む、呼吸困難、チアノーゼ(酸素不足などで唇が紫になる)、嘔吐などの症状がいくつかみられたら、すぐに救急車を呼びます。
脳卒中も心臓の病気でも、名前を呼んでも意識や脈がない場合には、心臓マッサージ(胸骨圧迫)を行います。慣れていないと、なかなか難しいものですが、基本を覚えておきましょう」(鈩裕和先生)
【心臓マッサージの方法】

1 硬い床などにあお向けに寝かせます。
2 左右の乳頭を結ぶ真ん中あたりに両手を重ねて当て、ひじを伸ばして腕を体に対して垂直に伸ばします。
3 手根の部分で、胸が4~5cmほど沈む強さで、1分間に100回の速さで絶え間なく圧迫します。心臓が動き出すまで続けます。
「AEDがある場合は、AEDで電気ショックを行います。AEDの電気ショックはすべての不整脈に有効というわけではなく、電気ショックが有効な不整脈のみを検知して作動します。ですから、作動しないからといって故障しているわけではないことを知っておきましょう。
電極パッドを胸に貼り、オートショックAEDならボタンを押すと、自動で電気ショックを行うので、患者さんの体から離れて待機します。
一連の操作手順は、電源をオンにすると音声で説明してくれます。手順が違うと作動しないので、落ち着いてその指示に従ってください。」
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脳卒中の治療は時間との闘い!
「特に脳梗塞は血管が詰まってから、時間が経つごとに脳組織が壊死するので、発症から6時間以内の適切な治療を受けられるかが鍵です。
脳梗塞の超急性期の治療は、救命を行うとともに、基礎疾患や年齢を考慮しながら、血栓を溶かして血流を再開させる治療を行うこともあります。
脳出血の場合は、血圧を下げ、脳浮腫を抑え、血腫を除去する処置がとられます。くも膜下出血の場合は、脳血管が再び破裂するのを防止し、痙攣(けいれん)や水頭症に対する処置などが行われます。
心筋梗塞の場合は、カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術)などで、速やかに血流を再開させる処置がとられる場合もあります。ほかに、薬剤で血栓を溶かす血栓溶解療法や、詰まった冠動脈を迂回するバイパスを作る冠動脈バイパス術が選択されることもあります」
いずれもできるだけ早いタイミングでの治療が求められます。
【教えていただいた方】

医療法人社団つくしんぼ会理事長。平成9年に、外来診療から訪問医療介護、在宅看取りまで連携したサービスを提供できる専門機関「つくしんぼ会」を設立。職種間の垣根を越えて自由に議論できる環境作りに努め、治療介護計画を立案し実践する体制を構築。患者に寄り添う医療を実践する。著・監修書『身近な人の突然死・寝たきりを防ぐ心臓と脳の正しいケア』(自由国民社)など。

イラスト/小迎裕美子 取材・文/山村浩子


