歯ブラシ選び、迷ったら「小さめヘッド&フラット植毛」
今どきの歯ブラシ売り場は、ギザギザや山切り、先細り…機能も見た目も本当にさまざま。何が正解か迷う人も多いはずです。
理想は歯科衛生士さんのアドバイスで、今の自分に合ったものを選ぶことですが、なかなか難しいもの。
「迷ったら目安はずばり『小さめ&フラット』。複雑な形ではなく昔ながらのシンプルな歯ブラシこそ、結局『全部の歯・全部の面』に届きやすいんですよ」
こう語るのは、「できるだけ歯ブラシ1本で100%近く磨けるように」を推奨する歯科医・塚原妹美先生。
歯ブラシのヘッドや持ち手はどれがいい?
「すでに歯ぐきが下がっている人は隙間も広くなっているので、フロスや歯間ブラシも必要です。でも、指導を受けて正しく使えていないと、歯ぐきへ余計な負担がかかり、必ずトラブルの原因になります。
まずは小さめでシンプルな歯ブラシ1本で磨くことに挑戦してみませんか。
100%磨けると、本当にツルツルです!
ヘッドは口が大きい人でも、小さめヘッドのほうが隅々までしっかり届きます。大人は子ども用だと小さすぎるのでNG。持ち手もクセのない真っすぐタイプが毎日続けやすく、おすすめです」

「先細り毛」に落とし穴あり!? 1本選ぶならベーシックな歯ブラシ
近年は、毛の先が細くなった歯ブラシを選ぶ人も少なくありません。使ってみると、歯間にグッと入って確かに気持ちがいいものです。
「でも、先細りブラシにはデメリットも! 歯間はしっかり磨けているのに、前歯の表面にだけプラーク(歯垢)が残っている患者さんが多いんです。
『どんな歯ブラシを使っていますか?』と聞くと、たいていはテーパード毛。テーパードは確かに歯間はきれいになりますが、歯の広い面をしっかり磨くのが苦手なんです。
2本使い分けるなら先細タイプもいいですが、1本派ならやはり特殊加工されていないものが一番ですね」
歯ブラシの交換は1カ月が勝負。広がったら即チェンジ
毛先が広がった歯ブラシは、新品の半分以下しか汚れを落とせない。そんなデータがあることを知っていますか。
「どんなにうまく磨いても、毛先が開いたら本来の力を発揮できません。
歯ブラシの交換の目安は1カ月〜1カ月半。
それを過ぎたら、必ず新しいものに。見た目に『まだイケる』と思っても、裏側から見て毛先が広がっていたら即交換です!」

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「泡立ち&研磨剤たっぷり」は卒業! 歯磨き粉の正しい選び方
たっぷり泡立ってゴシゴシ磨けると気持ちいい。いまだにそう思っている人は考えを改めて。歯磨き粉はあくまで補助役です。本当にきちんと磨けるのはテクニックあってこそ。
「歯周病が気になる人は、特に研磨剤入り・粒々入りの歯磨き粉は要注意。歯や歯ぐきを傷つけたり炎症やトラブルの原因になることも。
患者さんの歯ぐきや歯周ポケットを診ると、歯磨き粉の“ツブツブ”がそのまま残っている人もいます。自然と溶けてなくならないものもあるので注意してほしいですね」
また「ホワイトニング」や「ステイン汚れ除去」をうたう商品は魅力的ですが、研磨剤が多すぎるものは避けたいところ。
最近は研磨剤でステイン汚れを落とすのではなく、汚れを浮かせて落とす成分(ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム入りなど)が入った歯磨き剤が主流です。気になる人は成分表示もチェックしましょう。
洗口液や液体歯磨き、「なんとなく」は必要なし
液体やジェルタイプの歯磨き剤、一時期は流行りましたが、最近はまたペースト派が増えている印象です。
「矯正治療中やご高齢の方など、泡立ちや刺激が苦手、うがいでしっかり落としたいという人には、液体歯磨きは今でも根強い支持があります。
そもそも液体歯磨きとマウスウォッシュ(洗口液)を混同している人も多いよう。
液体歯磨きは、文字通り歯磨き粉の液体(またはジェル)バージョンで、口に含んでから歯ブラシを使って磨くもの。
一方、マウスウォッシュ(洗口液)は、口をゆすいで爽快感や口臭ケアをプラスする補助アイテムで、歯磨き粉ではありません。でも、ブクブクすることでプラークを落とす手助けにはなるので、外出先や矯正・手術後など、歯磨きができないときのサポートとして上手に使うのが正解。
きちんと磨けている人なら、毎日のケアに絶対必要というわけじゃないんですよ」
頼りになるのは手になじむ歯ブラシ1本と、泡立ち控えめな歯磨き粉。
「100%磨きなんて無理」と思っていても、「いつもより丁寧に」から始めれば十分です。
【教えていただいた方】

歯学博士(再生医療)。医療法人社団宏礼会 塚原デンタルクリニック勤務。医療法人社団宏礼会 行徳TM歯科院長。歯科衛生士学校で講師を務めたり、新聞でコラムを担当するなど、歯科医院へ行くことの重要性を訴える歯科医師。 塚原デンタルクリニック 行徳TM歯科
イラスト/内藤しなこ 取材・文/蓮見則子


