「何を使えばいいの?」迷ったら、ここで整理!
歯ブラシ、電動ブラシ、フロス、歯間ブラシ、マウスウォッシュ…。「これがいい」と聞けば試してみるけれど、気づけば洗面台が歯磨きグッズだらけ。増えすぎたケアアイテム、本当に使いこなせていますか? 「ケア迷子」さんの疑問に、塚原妹美先生がすっきり回答!
Q1. 歯医者さんで販売しているアイテムは、市販品とどう違う?
A. 自分に合うものを選んでもらえるのがメリット。価格も意外と安いものも!
歯科医院で扱うのは、歯科専売品と市販品の両方。そこで購入する意味は「自分に合ったものを選んでもらえる」こと。
歯ブラシひとつとっても、毛の硬さや形、ヘッドの大きさなど、最適なタイプは人それぞれ。歯科医師や歯科衛生士が「これを足しましょう」「これは市販の○○でOKですよ」などとアドバイスしてくれるはずです。
「歯医者さんで買うと高そう」と思いきや、実は逆のことも。例えば、歯科専売の定番洗口液(マウスウォッシュ)は、医院なら1,000円ほどなのに、通販では倍以上のことも! 同じメーカーでも流通ルートが違うだけで価格が変わります。
歯科医院で買う=安心+適正価格。
気になるアイテムがあれば、診察のときに相談してみるのもおすすめです。

塚原妹美先生が勤務する塚原デンタルクリニックの販売コーナー。自分に合ったものをその場でチョイスしてもらえるのがクリニック購入のメリット
Q2. ちゃんと磨いているのに歯石がつくのはなぜ?
A. 「体質」ではなく、ほとんどはきちんと磨けていないだけ。
「歯石がつきやすい体質なんです」と言う人もいますが、実際のところ、原因はほとんど「磨き残し」です。歯ブラシの毛先がきちんと当たっていないためにプラーク(歯垢)が残り、それがゆくゆく歯石に。
ただし、唾液が少ない人、口呼吸で唾液が少なくなっている人は、歯石がつきやすい傾向があります。
唾液は天然の洗浄液。量が少ないと汚れが流されず、虫歯や歯周病のリスクも上がってしまいます。
Q3. 歯間ブラシはいつ頃から使うべき?
A. 年齢より「隙間があるかどうか」が目安。健康な歯ぐきなら不要です。
歯間ブラシは、隙間があいた部分を清掃する専用アイテム。歯と歯ぐきがしっかりしていれば、若いうちは使う必要はありません。
歯ぐきが下がってきた人、かぶせ物がある人、ブリッジの下や奥歯の後ろ側など、歯ブラシでは届きにくい部分に効果的。

ただし、自己流で使って歯ぐきを傷つけている人も多いものです。
「隙間があいているかも」と思っても、実は正常なことも。まずは歯科衛生士さんに見てもらって、サイズや使い方を教わるのが安心。
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Q4. 歯間ブラシを使っていたら、隙間が広くなった気がしますが?
A. 気のせいではありません。歯間ブラシでトラブルが起きることも!
歯ぐきが下がる、隙間が広くなる。そのいちばん多い原因は歯周病。でも、歯間ブラシの間違った使い方でそうなっている人、実はとても多いのです。
サイズの合っていない歯間ブラシを無理に入れたり、必要のない部分まで使ったり、歯ぐきをこするような使い方を続けていて、歯肉が下がることがあります。
使い方次第で、歯間ブラシがトラブルの原因になってしまうことを覚えておきましょう。
もともと歯ブラシとフロスだけで十分な人も少なくありません。歯間ブラシが本当に必要かどうか、まずは歯科衛生士に見てもらうのが安心。
サイズ選びや使い方のアドバイスを受けることで、トラブルを防ぐことができます。

Q5. 舌ブラシは必要ですか?
A. もし使用するなら、こすりすぎは逆効果になります。
舌は想像以上にデリケート。ブラシで強くこすると表面が傷つき、かえって汚れや細菌が溜まりやすくなります。その刺激で表面の組織が厚くなり(角化)、炎症や口臭の悪化につながることも…。
そもそも歯磨きがきちんとできて、唾液がしっかり出ていれば、舌苔(舌の表面に付着する白い苔状の汚れ)が厚くついてしまうことはほぼありません。
口の中の乾燥や薬の副作用などによって舌苔が気になる場合は、舌磨き専用のブラシも使用していいと思います。奥から前へ優しい力で、数回磨きましょう。
口臭が気になる人は洗口液でケアするだけでも効果があります。
Q6. 電動歯ブラシは使ったほうがいい?
A. 正しく使えていればOK。ただし、歯磨き粉との相性には注意。
電動ブラシは便利ですが、当て方や動かし方を誤ると歯や歯ぐきを傷つけてしまう場合も。歯ブラシと同じように、定期的に歯科衛生士にチェックしてもらうと安心です。
おすすめは「音波ブラシ」。音波振動で口の中に細かな水流が生まれ、毛先が届かない汚れまで落とせるタイプです。
使うときは歯磨き粉にも注意して。発泡剤入りのものは泡立ちすぎて、磨けた気分になりやすい点が落とし穴。
研磨剤が多いタイプは歯の表面を傷つけ、知覚過敏を招くこともあります。電動歯ブラシには、ジェルタイプの“低発泡・低研磨”を選ぶのがコツです。

歯磨き粉やマウスウォッシュなども、クリニック専売品のほうが目的に合ったものを選びやすいもの。塚原デンタルクリニックにて
Q7. 歯磨き粉はやはり「歯周病予防」を選ぶべき?
A. 歯磨き粉の成分よりも、まずはブラッシングを重視して。
歯磨き粉はあくまでサポート役。歯ぐきを守り、育てるのは歯ブラシそのものです。
歯周病予防・改善をうたう歯磨き粉には、炎症を抑える成分や引き締め効果のある成分が含まれています。ただし、成分に頼りすぎず「歯ブラシで100%磨く」つもりで、丁寧にブラッシングを。
泡立ちの強いタイプは磨いた気分になって短時間で終わりがち。発泡剤が少なく、じっくり磨けるタイプがおすすめです。
Q8. フッ素入りの歯みがき粉は使ったほうがいい?
A. 虫歯予防のエビデンスあり。安心して使って大丈夫です。
歯磨き粉に含まれるフッ素は、虫歯の再石灰化を促す成分として効果が確認されています。
日本のフッ素配合の歯磨き粉は、海外ほど高濃度ではないため、過剰な心配は不要。「フッ素は体に悪い」と誤解して避ける人もいますが、歯磨き粉に含まれる量で健康に害を及ぼすことはありません。
とはいえ、歯周病対策の主役はあくまでブラッシングと心得て。
【教えていただいた方】

歯学博士(再生医療)。医療法人社団宏礼会 塚原デンタルクリニック勤務。医療法人社団宏礼会 行徳TM歯科院長。歯科衛生士学校で講師を務めたり、新聞でコラムを担当するなど、歯科医院へ行くことの重要性を訴える歯科医師。 塚原デンタルクリニック 行徳TM歯科
イラスト/内藤しなこ 取材・文/蓮見則子



