血管に優しい一日の過ごし方とは?
「寝たきり」になる要因の上位にある、「脳卒中」や「心筋梗塞」。こうした血管のトラブルを引き起こさないためには、血管に優しい生活を送ることが大切です。
「まず、高血圧や動脈硬化になりやすい要因として、喫煙、多量の飲酒、塩分と脂質過多な食事、運動不足、睡眠不足、ストレス過多などが挙げられます。ほかにも、ちょっとした生活習慣にも気をつけるといいでしょう」(鈩裕和先生)
一日を追ってみてみましょう。
〇目覚めたら布団の中で軽く手足を動かす
「朝6~10時と夜7~10時は心筋梗塞や脳卒中などが起こりやすいといわれています。特に、朝に血栓ができやすいので、急激に起きずに、まず布団の中で手や足を軽く動かして、血流を促してから起きる習慣をつけましょう。
熟睡中に目覚まし時計や電話など、突然大きな音が出るものに起こされるのも、できたら避けたいものですね」
〇朝日を浴びる
体内時計を調整するために、朝日を浴びることが大切。私たちの体は、朝起きて、日中は脳も体も活発に活動し、夜には休息をとり眠るという自然のリズムが備わっています。これをサーカディアンリズムといい、このリズムに沿って体温や血圧、脈拍、睡眠、ホルモンなどが調整されています。
このリズムは24時間ではなく、毎日数分~数十分の差があるため、その時間の差を調整する必要があります。その調整に最も有効なのが、朝日を浴びることです。
こうして朝起きて、夜眠る規則正しい生活を送ることが、体調を整え、血管の健康維持にも役立ちます。
〇水分補給をしっかりする!
水分補給は健康維持に欠かせません。特に、睡眠中は汗をかいているので、朝の寝起きの体は水分不足になっており、血栓は明け方や水分不足のときにできやすいので、夜寝る前と朝の寝起きにコップ1杯(約200㎖)の水を飲む習慣をつけるといいでしょう。
ほかに汗をかいたとき、入浴のあとなどにも水分補給を! 一度に大量に飲まずに、一日のうち何回にも分けてこまめにとるのがポイントです。
〇完璧主義をやめて、心にゆとりを持つ
職場でも自宅でも、過ごしやすい環境をつくり、できるだけ心にゆとりのある日常を送りましょう。完璧主義だと思い通りにならないことにイライラしがち。言い争いも血圧を上げてしまうので避けたいですね。ストレスをためずに上手に解消する方法を、自分なりに工夫するといいでしょう。
〇急激な温度差を避ける
暖かい場所から寒い場所へ移動するなど、温度差が激しいと血圧が上下し、脳や心臓の血管の疾患が起こりやすくなります。これをヒートショックといいます。
特に冬のお風呂は要注意です!

暖かいリビングでは血圧が安定
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寒い脱衣所で血管が収縮して血圧が上昇
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寒い浴室でさらに血圧上昇
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浴槽で熱い湯につかると血管が拡張して一気に血圧が降下
温かい布団から出て、寒いトイレで冷たい便座に座ったり、冷たい水で顔を洗うなども注意が必要です。
このような、温度の大きな変動は、血圧を急激に上げたり下げたりします。脱衣所に暖房器具を置くなどして、風呂場は脱衣所と浴室の温度をできるだけ同じように保ち、湯温も熱すぎない、40℃前後の温めが理想です。トイレにも暖房器具を設置するといいでしょう。
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〇寝る前の寝酒やスマホを控える
基本的に飲食は就寝の3~4時間前までにすませるのが理想。ダラダラとお酒を飲んだり、寝酒も快適な睡眠を妨げるのでNG!
特に最近、注目されているのが、寝る前のスマホ。ブルーライトの画面を見たり、得た情報によってはストレスになることもあり、睡眠の質を低下させるという報告があります。寝る2時間前からはスマホを見ない習慣をつけるのが理想です。
どうしても必要な場合は、ブルーライトカットメガネやフィルターを使うなどの工夫を! 夜寝る前の2~3時間前には、部屋の照明も暗めにして、寝る準備をするのがいいでしょう。
【教えていただいた方】

医療法人社団つくしんぼ会理事長。平成9年に、外来診療から訪問医療介護、在宅看取りまで連携したサービスを提供できる専門機関「つくしんぼ会」を設立。職種間の垣根を越えて自由に議論できる環境作りに努め、治療介護計画を立案し実践する体制を構築。患者に寄り添う医療を実践する。著・監修書『身近な人の突然死・寝たきりを防ぐ心臓と脳の正しいケア』(自由国民社)など。

イラスト/小迎裕美子 取材・文/山村浩子


