股関節外転筋群をほぐし、股関節内転筋群を強化する!
正座の状態から、膝から下部分を左右に開きお尻を地面につける座り方。これを一般的に「ぺたんこ座り」、もしくは女性にこの座り方をする人が多いことから「女の子座り」などと呼ばれています。
「この座り方は、そもそも股関節や膝関節に大きな負担になり、体の歪みや腰の筋肉のねじれ、O脚などの脚の変形につながるので避けるべきです。
この姿勢をとると股関節が痛むのは、『変形性股関節症』や大腿骨の骨端がずれている『大腿骨頭すべり症』※の既往歴がある人に多い傾向です。股関節が健常な人でも、骨の形によってはそもそもぺたんこ座りができない場合があります。できなくても問題はありません。
※大腿骨頭すべり症:成長期の子どもにみられる股関節の病気で、大腿骨の先端(大腿骨頭)が、股関節の成長軟骨(骨が成長するための軟骨)部分から後方にずれてしまうもの。思春期のホルモンバランスの変化、スポーツや肥満などによる股関節への過剰な負荷が原因と考えられています。
ぺたんこ座りが苦手な人は股関節を内旋させるのが苦手です。内旋とは、大腿骨を長軸として、足を内側に回転させる動きです。つま先を内側に向ける、いわば『内股』の状態です。
このような人は、股関節を外側に開く動きを助ける、股関節外転筋群が拘縮しているケースが多いですね。普段、足を組むなど外旋させる動きが多く、股関節内転筋群の筋力が低下していることが、大きな特徴といえます。
股関節外転筋群は中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋などで、お尻部分にあります。股関節内転筋群は、脚を内側に引き寄せる働きをする筋肉の総称で、恥骨筋、短内転筋、長内転筋、大内転筋など、太ももの内側にあります。
まずは、股関節外転筋群を柔軟にするストレッチを行うといいでしょう。それには『あお向け膝倒し』が手軽で効果的です」(高平尚伸先生)
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「あお向け膝倒し」で股関節の外側の筋肉をほぐす
「股関節を内旋させるのが苦手な人は、股関節外転筋群が拘縮しています。また、4大筋膜(ファシア)ラインの中では、体にらせん状に巻きつくスパイラルラインが拘縮しているか弱っているので、ここを意識してストレッチを行います」
※4大筋膜(ファシア)ラインについては第3回参照。
【あお向け膝倒しストレッチのやり方】
【1】 あお向けで膝を立てる
床にあお向けになり、両膝を閉じたまま立てます。両手は自然に床に置きます。
【2】 膝を右に倒す
上体はそのままで、膝をそろえたままゆっくり両脚を右に倒します。この状態で20秒キープ。ゆっくり【1】の状態に戻します。
【3】 膝を左に倒す
次にゆっくり両膝を左に倒します。この状態で20秒キープ。ゆっくり【1】に戻します。この一連の流れを左右交互に10回繰り返します。上体をできるだけ動かさないようにして行うのがポイント。両脚は倒れる範囲でOKです。
「より楽に倒せる側と、あまり倒せない側があるなど、左右差があるのではないでしょうか? 特に不得意な側を重点的に行うといいでしょう」
【ストレッチの5つの注意点】
〇硬い関節を無理に伸ばさない
各関節には可動域があり、個人差もあります。無理やり伸ばすと思わぬ痛みを発症することがあります。
〇呼吸を止めない
呼吸を止めると筋肉が硬くなり、ストレッチ効果が薄れます。自然な呼吸をしながら行いましょう。
〇強く反動をつけない
小さな動きから始めていくことが大切です。反動をつけると関節に無理な負荷のかかることがあるので注意が必要です。
〇いきなり行わない
体が冷えた状態だと関節がうまく動きません。あらかじめ体を軽く動かして、筋肉を温めておくことが大切。お風呂上がりに行うのもよいでしょう。
〇やりすぎない
やりすぎると筋肉や関節を痛めることがあります。決められた回数やタイミングを守って、無理のない範囲で行うことがとても大切です。痛みを感じたときには中止してください。
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【教えていただいた方】

北里大学大学院 医療系研究科整形外科学教授。日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本リウマチ学会認定専門医および指導医、日本人工関節学会認定医。専門は股関節で、最小侵襲手術 (MIS)、運動器リハビリテーション、スポーツ医学に精通。著書に『股関節痛 こわばり・ だるさ・ 脚長差 自力で克服! 名医が教える最新1分体操大全』(文響社)など多数。

イラスト/green K 取材・文/山村浩子






