知らずに歯ぐきにダメージ? 「隠れ糖質」に注意して
「私は甘いものはあまり食べないから、糖質はとっていない」――そう思い込んでいませんか? 実はご飯、パン、パスタ、うどんなど、普段の主食や市販のお惣菜にも意外なほど糖質が含まれています。
さらに、みりんやドレッシング、焼肉のたれなどの調味料にも糖質がたっぷり含まれていることが多く、気づかないうちに糖質まみれになっているのが現代人。
「そんな積み重ねが、歯周病リスクをじわじわ上げる落とし穴なんです。野菜やタンパク質も意識しているけれど、つい主食がメインになりがち、という方は糖質過多かもしれません。
歯ぐきのトラブルが治りにくい人や、なかなか改善しない人には、食事記録をつけてもらうことも多いんですよ」
と語るのは、栄養指導も行う歯科医師の塚原妹美先生。食生活を客観視すると、予想以上に糖質多めの食生活になっている人が多いものです。

「糖質も体に必要な栄養素。まったく食べないでと言っているわけではありません。とり方や量、質を考えて食べることが必要なんですよ」
毎日の歯磨きケアに、食生活のひと工夫を加えることが、これからの歯周病予防には欠かせません。
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歯ぐき泣かせの糖質――見逃しがちな5つのワナ
なぜ糖質のとりすぎが歯ぐきに悪いのか? それにはいくつか理由があります。
【1】糖化で歯の土台がスカスカに
余った糖が体の中で「糖化」を起こすと、歯ぐきや歯を支える骨がどんどんもろくなっていきます。家の基礎が崩れていくように、歯の土台が弱くなると歯周病は一気に進みやすくなります。糖質が多いと歯ぐきの再生力も落ちることに。
【2】免疫が下がり、菌に負けやすく
糖質過多で血糖値が高い状態が続くと、血管そのものが傷つき、体の免疫力が低下していきます。こうなると、せっかく磨いても細菌に負けやすくなり、炎症やトラブルが長引く原因に。
【3】歯周病菌の“エサ”を増やしてしまうばかり
糖質が多い食生活は、歯周病菌の絶好のエサを毎日せっせと与えている状態。菌が繁殖しやすくなると、プラークや炎症がますます悪化しがちです。
【4】食いしばりの「黒幕」も実は糖質
血糖値が急に上がったり下がったりすると、無意識のうちに食いしばりや強い噛みしめが起こりやすくなります。その負担が歯ぐきや骨にダメージを与え、治りにくさにもつながります。
【5】糖尿病と歯周病、負のスパイラル
糖質過多が続けば糖尿病のリスクもアップ。いったん糖尿病になると歯周病が悪化しやすく、なかなか治りにくい体質に。
「歯ぐきと全身の健康は、本当に密接につながっています。口の中だけをケアしても根本解決にならないことも多いことを知っておきましょう」と塚原先生。
今日からできる、糖質との賢い付き合い方
歯科の世界では「シュガーコントロール」という言葉がよく使われます。「糖質の摂取量を適切にコントロールする」という意味です。
これまでは“虫歯予防”のための常識と思われがちでしたが、実は歯周病の予防にも欠かせない考え方です。
とはいえ、「歯ぐきや体のために糖質を控えたほうがいい」とわかっていても、「全部やめるのは無理…」「どこから見直せば?」と思ってしまうのが本音かもしれません。
でも、ちょっとした習慣を変えるだけでも、体も歯ぐきも少しずつ変わっていきます。
糖質を全部我慢する必要はありません。まずは生活に欠かせない「飲み物」から見直すのが一番の近道です。
スポーツドリンクや炭酸飲料、ペットボトル飲料、缶コーヒーなどには、角砂糖何個分もの糖質が潜んでいることも。選ぶ目線をちょっと変えてみてください。

↑角砂糖の数はあくまで参考です。同じカテゴリーでも糖質量は商品によって異なるため、商品についている栄養成分表示で「炭水化物」や「糖質」をチェックしてみましょう。
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「市販品を購入する際には、栄養成分表示をチェック。炭水化物や糖質の欄を意識するだけでも変わるはずです。飲み物の次は市販の食べ物、次は食事の材料…というふうに、糖質チェックする習慣を身につけるのが、一生ものの歯ぐきケアになりますよ」
“おいしい”も“健康”もあきらめない。購入する際のちょっとした選び方が、未来の歯ぐきを守る力になります。
【教えていただいた方】

歯学博士(再生医療)。医療法人社団宏礼会 塚原デンタルクリニック勤務。医療法人社団宏礼会 行徳TM歯科院長。歯科衛生士学校で講師を務めたり、新聞でコラムを担当するなど、歯科医院へ行くことの重要性を訴える歯科医師。 塚原デンタルクリニック 行徳TM歯科
イラスト/内藤しなこ 取材・文/蓮見則子


